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グローバル・シティ 第10章―新しい都市のレジーム―及びエピローグ

第10章新しい都市のレジーム―

グローバル経済は都市にどのような影響を及ぼすのか。


■国際的なビジネスや金融の中心になっている都市-ニューヨーク・ロンドン・東京-が,経済活動のグローバル化に応じて変わっていった過程。
⇒グローバル化の進展に伴い,経済を支配する力が特定の都市にのみ集積されたため,グローバルなネットワークを管理し,支配する基本的な役割も大都市に任せられた。

■金融と企業者サービスが異常なまでの速さで成長したことと,こうした成長が起きた場所が大都市に限られた理由?
・生産拠点が地理的に分散し海外でも生産が行われるようになると,この空間経済を管理したり規制をかけるための結節点の役割を金融・企業者サービスが担うようになり,特定の場所に集中するようになった。
・1980年以降経済的な重要性を喪失し,分散した生産拠点を一カ所で管理し,支配するために成長したのが,金融や高度専門サービスの中心地であった。
・大都市において,トップレベルでの管理,調整の役割が増加し,金融取引の拡大とかなりの額に上る海外直接投資が特定の地域に再び集積し,大都市で国際的な不動産市場が形成されたことで,高度な管理機能とサービス機能を備えた経済の中心が作られていった。

【第一部及び第二部】
1グローバルな管理・支配が実際に担っているのはどのような仕事なのか。
2大都市で生み出されている仕事は正確に言うとどのようなものであるか。
3経済がグローバル化したことで都市階層は変化したか。
⇒「生産」に着目して考察

■金融・生産者サービスの急成長,製造業の衰退
・大都市では産業複合体が形成され,それらの複合体の中でも,中心的な存在として伸びているのが,国際取引を手掛ける企業へのサービス提供に関連したセクターである。
・サービス関連セクターは1980年代以後商品セクターの様相を呈するようになり,この商品セクターに似たサービス・セクターにとって重要な市場として現れてきたのが,ニューヨーク・ロンドン・東京であった。
・三都市への生産者サービスと金融の集積が生じたが,それを単なるサービス産業の成長とみなすのではなく,経済の構造と組織のされ方が全体的に変化してきていることを理解する必要がある。
・生産者サービスに携わる企業が増加したことで,サービスの需要が高まり,サービスは社内で調達されるよりも,市場で購入されるようになるというような傾向は他の大都市でも出てきているが,地域レベルでの話にとどまっている。
・過去20年に及んだ経済再編はさまざまな点で複雑化した組織の需要に応えるサービス・セクターが増えたことと根っこのところでつながっている。こうして生産者サービスが伸びたからこそ,経済がサービス中心になった。
・以前は国民経済を牽引し,層の厚い中産階級の形成・拡大に貢献していた製造業の衰退の上に,新しい成長は成り立っていた。
・新しい成長の多くが,国民国家の弱体化のうえに成り立っている。

■三都市のトランスナショナルな関係
・グローバルな情報通信の時代にあってもなお,離れた場所に位置することが多い多様な企業・ブローカー・個人をつなぐ役割を各都市が果たしており,三都市もトランスナショナルな一つの市場として機能している。
・三都市は競争関係にあるわけではなく,資本の輸出(東京),処理(ロンドン),投下(ニューヨーク)のように,三都市が別々の役割を担うことで一つの役割を果たしている。
※日本が資本の輸出という役割を果たしていたのは昔のことであり,現在ではその役割は失われている。

■二極化
・社会構造の変化は,社会経済の二極化をもたらした。
・商品やサービスを生み出し,提供する企業においては競り落とす力で差が開いてきており,このことによって生産する側の企業にとり,グローバル・シティはますます生きにくい場所となってきている。
・生産コストを減らすための努力-下請け,低賃金・劣悪な環境での非登録移民の雇用など-が行われ,中心的なセクターで低賃金労働者が増えており,彼らにとってもグローバル・シティは住みにくい場所となっている。

■都市の空間編成の変化
・情報通信技術の発達を背景に,経済活動が空間的に分散されてきた一方で,この分散を可能にするために,中心に集められた諸機能は強化されてきた。(地理的分散/集積)
・グローバル・シティに集積したのは,分散した経済活動を管理するための諸機能だけでなく,イノベーションが生み出される場所もグローバル・シティに集まるようになった。
・情報通信技術が発達したが,未だに都市中心にある軸とのつながりは意味を有していることから,情報通信技術の影響はごくごく限られており,経済を構成しているものの多くがデジタル化されず,現在でも物理的な側面をもっている。

【第三部】
新しい産業複合体による経済活動のグローバル化が,都市の経済構造や社会構造に与える影響について。
■フォーディズム期
・フォーディズムの経済を支えていたのは主に,大量の消費者をターゲットとした住宅・道路・自動車・家具・家電の大量供給,大量販売であった。
・大量消費・大量生産に基づく製造業の発展と共に層の厚い中産階級が形成された。
・公共サービスのカバーする範囲が格段に広がった-公衆衛生システムの発展,公営住宅の建設。
・インナーシティ問題-郊外化の結果,三都市の昔ながらの中心地域に貧困層や弱者が取り残されていくようになった。
・制度的枠組みは維持され,労働組織率は上がり,労働者のエンパワーメントが進んだ。
・正規雇用で働く労働者の割合が最高水準に達し,賃金も上昇した。

■ポスト・フォーディズム期
・主導経済セクターはサービス・セクターへと移り,産業複合体において成長が起きている。
・中産階級が増えることはなく,所得格差が開き,企業の競争力や世帯の購買力でも差がついてきている。
⇒経済の二極化
・個人より,企業や政府による国際市場への輸出や中間消費といった,組織による消費のほうが重要になってきている。
⇒グローバル・マーケットが社会・経済を形成
・家族賃金が衰退し,男性がフルタイムで雇用されることが当然ではなくなった。
・パート,有期雇用市場の拡大。
・日雇い労働者やマイノリティ集団に属する労働者,移民労働者の増加。
・年功序列・終身雇用制度の崩壊。
・低賃金労働,スウェットショップ,家庭内産業労働の増加。

■新しいタイプの高所得層の出現,消費構造の変化
・ただひとつ,新しい産業複合体の恩恵を受けている階級が,新しいタイプの専門職・経営者・ブローカーであり,この数は三都市において劇的に増加した。
・彼らには消費力があるだけでなく,何を消費するのか選択肢が用意されており,高所得層向けのジェントリフィケーションとそこから生じる派手な消費が,イデオロギーとして働いている。
・投資額が低すぎず,高すぎもしない中間投資(株・美術品・骨董品・奢侈品)が恰好の投資ターゲットとなっている。→美術品市場の成長,奢侈品への消費の増加。
・十分な収入とコスモポリタン的な企業風土が合わさることで,新しいライフスタイルや新しいタイプの経済活動が営まれる魅力的な空間が出来上がった。

■ジェントリフィケーション
・日々の生活における芸術の重要性が高まってきている。(exうらぶれた倉庫を価値あるものに)

・現在の経済活動において,芸術家という職業が,不動産開発から奢侈品の消費に至るまで,潜在的なビジネスチャンスを実現し,利益を生むための装置になってきている。
・一方でニューヨークやロンドンでは,一昔前まで,入り口が固く閉じられたままの店舗や打ち捨てられたビルばかりだった場所が,今では商業地区や住宅地として栄え,コミュニティ一帯の環境が改善された。
⇒移民流のジェントリフィケーション

世界経済で指令を発する場,金融と高度な企業者サービスのイノベーションが生まれる場,そして資本にとって重要な市場というように,都市はさまざまな役割を担うようになり,その役割を果たすために,特定の諸都市が協力し合っている。そしてこうした諸都市は,金融と製造のグローバル化によって新しい形の集積が進む中で,戦略的な役割を果たしている。
また金融が牽引する経済成長から集積が起きた結果,さまざまな側面で新しい秩序が生まれてきている。大量生産が主流の時代には,公共財の供給と福祉国家が重要な意味を持ったが,新しい規範においてはその重要性は失われている。消費の規範は,直接的には金融や生産者サービス,これらが必要とする多様な産業サービスにおける労働を通じて,間接的には社会的生産の領域において,社会構造を目に見える形で変えている。

➡経済成長を決める新しい産業複合体と,産業複合体を構成し,再生産している社会政治的な形が両方そろう場が大都市であり,両方そろっているというところに,グローバル・シティの基本的な特徴がある。

―エピローグ―
■6つの論点
1グローバル・シティ論の枠組み
2金融に関する問題
3生産者サービス
4諸都市の関係
5グローバル・シティにおける不平等
6グローバル・シティでは都市空間の秩序が一新されたかどうか

Ⅰ.グローバル・シティ論
(ⅰ)グローバル化と均質化
■グローバル・シティ
・グローバル化は国家の外で生じているといった単純な現象ではなく,資本の流れを調節・管理し,そこで必要とされるサービスを提供する働き,そして多国籍企業や国際的な市場の多角的な経済活動に必要なサービスを提供する働きである。
・グローバル・シティでグローバル化を進めているのは,国の組織や国内企業などナショナルなアクターであり,グローバル・シティとはグローバル経済の鍵となるダイナミクスや条件が植えつけられたローカルな場ということになる。
・グローバル・シティは単独では存在せず,それぞれがグローバル市場やグローバル企業のうち,きまった市場・企業へのサービス提供に特化する傾向にあり,国境を越えて戦略的な場を結びつける役割を担っている。
・グローバル・シティたりえるかどうかは,国による規制緩和や公的セクターの民営化,国内企業・外資系企業と市場が都市をどのくらい経済活動の基盤にしているかで決まる。

■グローバル・シティの均質化?
・グローバル・シティの諸機能が世界中の様々な都市で発展しているということは,都市間の差がある意味なくなってきているとも言い得るが,発展中のグローバル・シティの諸機能はかなり専門的であるし,これに関わる機関も多様であり,この場合の「差の消滅」は,消費者市場やグローバル娯楽産業にみられる均質化や収斂とは大きく異なっている。
・グローバルな視座からみれば,あるシステムやダイナミズムやその具体的な形が複数の国にまたがっていることがわかり,諸都市が画一化していると捉えることにはならない。
・グローバル・シティにおける差の消滅とは,都市の均一化のことではなく,専門特化した諸機能が都市で発展したり,部分的に取り込まれるなかで,諸機能が大都市にもたらすであろう影響が似てきているということである。

(ⅱ)先行研究とグローバル・シティ論の違い
◇フリードマンとゲッツの枠組みとの違い
グローバルな支配能力の生産に着目することで,情報化経済の中にあっても,物理的な条件や生産が行われる場,そして特定の経済活動が決まった場所でしか行われないという「拘束性」が存在し,場所の必要性を明らかにした。
◇カステルとの違い
グローバル・シティをネットワークとして捉えるだけでなく,場(プレイス)としても認識し,ネットワークが特定の場に深く根付いていることを明らかにした。つまり,ネットワークやフローだけでなく,グローバル化の概念に場所性(プレイスネス)を導入することを重要視した。
◇「グローバル都市―地域(リージョン)」という概念
グローバル化を考えるうえで都市と地域を分けて考えること。
◇グローバル・シティと都市全般を概念上区別すること
グローバル・シティで生じている経済的グローバル化のダイナミクスや条件が都市内部で生じることは,都市全域で進んでいるわけではない。
◇グローバル・シティの諸機能という概念
グローバル経済の管理やグローバル経済に必要なサービスの提供という点で,専門性がかなり高い機能をもつ都市を見分けるため。
◇国際都市とグローバル・シティの区別
精緻な分析をするためにフィレンツェやヴェニスなどの国際都市とグローバル・シティを区別する。

(ⅲ)グローバル・シティとグローバル都市―地域
◇グローバル・シティ
・格差や権力といった問題を扱うことに適している。
・境界線がはっきりした入れ物としての都市ではなく,中心で起きているダイナミクスに焦点を当てることができ,そのダイナミクスが制度的・空間的にどれくらい広がり浸透しているかについても重視できる。
・競争よりも,越境的なネットワークや分業を強化するグローバル・シティの主導産業を重視。
・経済以外の領域―政治・文化・社会・犯罪など―で生じている越境的なネットワークの利用を把握できる。
◇グローバル都市―地域
・グローバル化を好意的に解釈できる。
・経済的な利益をより均等に配分するにはどうしたらいいか考えることに適している。
・広い領域を見渡すことで,都市への一極集中ではない,より分散した形での成長の可能性が見いだせる。
・競争と競争力を重視。

(ⅳ)帝国主義の中心都市とグローバル・シティ
国民国家と国家間システムによって経済が統治されるようになった歴史的段階を経て,グローバルな経済システムが作られたことを,理論的かつ実証的に明らかにする必要がある。

(ⅴ)識別と測定
グローバル・シティにしかない変数を見分け,測定する際に,従来の概念やデータ,調査技術では,閉鎖性に基づいた規模の概念が使われていたため,問題があいまいになっている。調査対象を一定の範囲内に限定すると,グローバル・シティの特徴である越境的なネットワークなど特定の場所を越えて広がるものを測定できない。

Ⅱ.金融秩序
金融市場や個々の金融機関よりも,金融センターに力点を置き,都市間の関係を競争よりむしろ分業として理解することが重要である。

(ⅰ)金融センターvs.金融機関・金融市場
・金融センターという物理的な「場」の重要性を考慮することで,多様な状況や様々な資本の投入を明らかにできる。
・金融機関や金融市場が最近のデジタル技術から得られる利益を最大化するためには,複雑な組織が重要になってくるが,経済的なつながりの規模は,非・電子空間でのほうがさらに広く,金融機関や金融業が完全にデジタル化されることはない。
・多様な金融センターがネットワーク化されることで,最大限の利益が得られるようになっている。
・ある産業が空間的に集積し,そこで大きな成長が生まれるという規模の経済が,金融センターのダイナミズムにも当てはまる。

(ⅱ)競争vs.分業
・金融センター同士の競争ではなく,金融センターによる役割分担に着目することで,新たな産業の空間構成が見えてくる。
・金融センターを結ぶ国境を越えるネットワークに着目すれば,各センター同士は互いに統合されたシステムとして働いていることが明らかになってくる。
→金融センターは複雑なネットワークにおける欠かせない場として重要な戦略的役割を負っている。

(ⅲ)グローバル企業と国家
グローバル時代の国家の役割についてはまだ満足に考察しきれていない。

(ⅳ)金融業の本質
金融業ではグローバル化によりサービス提供以外の特色が強まってきており,1980,90年代のイノベーションの導入により「実物」経済にサービスを提供する役割から切り離されていった。

Ⅲ.生産者サービス
◇生産者サービスの細分化
・生産者サービスを指標として使う場合には,それを細分化したうえで分析しなければならない。
◇生産者サービスとグローバル・シティの関係
・グローバル・シティより小さい都市で生産者サービスが成長しているからと言って,グローバル・シティがより手ごろな地域へ移っていると説明するのは短絡的であり,小都市で生産者サービスの成長率が高いのは,これに対する需要があらゆるセクターの企業で増えたからに過ぎない。
→生産者サービスのなかでも,グローバル企業やグローバル市場の需要に応えるものは非常に複雑な仕組みを持っているため,これを小都市が担うことは難しい。
・フォーディズム的/ケインズ主義的な時代に生産の場という都市の役割は失われていったが,現在サービスを生み出す経済活動が都市で活発になってきていることから,都市が今一度「生産」の場として浮上してきている。
→金融業とサービスが盛んになるにつれ都市は新しいタイプの生産の役割を担うようになった。
◇国内向けの仕事とグローバル向けの仕事を対置させているという誤解
・国際的な職業が都市にあつまっていたとしても,その都市をグローバル・シティとみなすことはできず,グローバル・シティの基準を満たすためには,グローバル企業やグローバル市場の需要に応じられる専門サービスや専門職がかたまって存在する必要がある。
→グローバル・シティ論の重要なポイント:グローバル企業やグローバル市場が調整されているのか,専門サービスが提供されているのかどうか。
・グローバル・シティの諸機能は多種多様な職業によって支えられているにもかかわらず,国内向けの職業のように,そう認識されていないものもある。
◇生産者サービスの製造業における関わり
・生産者サービスの成長に製造業は欠かせないが,生産者サービスと製造業の立地は必ずしも同じ地域である必要はない。
・生産者サービスは企業の一部であるため,製造するところをどこにするかは,さほど重要ではない。

Ⅳ.社会と空間の二極化
◇二極化≠中産階級の消失
グローバル化にはフォーディズムのように中産階級を増やす効果がなかったどころか,トップレベルの専門職の価値を高める追い風になった。
中産階級は全く消えておらず,ただ成長のダイナミクスの基本的な方向性が中産階級を増やす方向には向かっていないということ。
◇グローバル・シティにおいて貧困が生じる原因
・高給職と低賃金労働が増加している背景には,近年成長しているグローバル・シティの諸機能を担う経済セクターがある。
◇グローバル化の影響力
・様々な市場とそれが都市の社会的・空間的特徴に及ぼす影響を丁寧に検証することで,すべてではないにせよ,グローバル化の影響力を分析できる。
・都市の全体的な職業や経済セクターの構造,犯罪や退廃・貧困・社会的排除などの問題,二極化などの傾向は決してグローバル・シティの指標ではない。

【論点】
p387「ナショナルなアクターがグローバル化を引き起こすダイナミクスを,筆者は国民国家の始まりとして認識している。…グローバル・シティでグローバル化を進めているのは,国の組織や国内企業などナショナルなアクターである」
p392「グローバル化に場所性がある,つまり特定の場所に縛られているということは,国民国家や国土など「ナショナル」な構造にグローバル化が埋め込まれているということである」

と本文にあるように,グローバリゼーションと国家の関係性が指摘されているが,グローバル化によって国家の役割はどのように変化したのだろうか。また,その変化によって社会・経済的にはどのような影響があっただろうか。
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2015-08-08 16:10 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第9章 経済再編―階級と空間の二極化―

第9章 経済再編―階級と空間の二極化―

【主題】
1.金融,生産者サービスの台頭やグローバル化による,様々な格差の拡大を受けて,社会形態は一新されてきたのか。
2.雇用関係はどのように変化したか。
3.三都市の経済における人種と国籍の問題。

Ⅰ.主導セクターへの全体的な影響
高度サービスが経済の中心になっている都市では,主導経済セクターとそれ以外の経済セクターは,どのような関係にあるのか。

①一般的な経済発展論
経済が発展するにつれ,市場と市場における諸関係が社会制度に影響するようになる。
・経済水準が高くなるのと平行して包括的な正規労働市場が開拓されていく。
・各種の規制が敷かれる,十分な失業手当・退職金,労働組合が機能
➡フォーディズム…労働者に気前よく給料を支払い,十分な余暇を与え,消費を促す。
②経済の基盤産業と基盤産業でないものを対置させるモデル
都市形成に携わる産業による「輸出」向けの経済活動は,基盤経済にサービスを提供する他のセクターの発展にも寄与しており,この点で輸出向けの経済活動は乗数効果を生み出す媒体でもある。
③脱工業化モデル
労働人口に占める高学歴者の割合が増え,知識産業が重要な位置を占めると,生活の質が全体的に良くなり,経済目標に限定されない社会目標へ関心が集まる。
・ダニエル・ベル「サービスの序列(ヒエラルキー)」
脱工業化社会のなかで専門職・技術職といった知識産業が急成長し,社会の中心課題が,資本や労働者の組織化から科学的知識をどうまとめていくかという関心へと移行する。これにより企業と労働の在り方はより人間的らしく,社会的なものになっていく。
➡実際に生産者サービスや金融業を知識産業とするなら,知識産業は成長したし,先進諸国で主要な経済セクターになっている。また専門職層の雇用は増加し,給与額も上がっている。

 こうしたモデルの出発点は,経済の中間セクターの順調な成長がストップした歴史的に重要な時期とどれくらい重なるのか。

■第二次世界大戦後の成長-中産階級と正規労働市場の拡大
資本の集約・標準化・郊外化(中産階級の形成)によって労働市場で正規雇用が広がった。保険・金融や製造に携わるタテ割りの大企業は,昇進・十分な雇用保障・各種福利厚生で彩られた国内労働市場をうりにしていた。

■1970,80年代以降
サービス経済への全体的な移行と製造業の衰退と新しい経済セクターの台頭。新旧セクターで労働が再編されたため,大都市では雇用がこれまでとは違う形で提供されるようになった。

Ⅱ.社会地理
都市空間と新しい主導セクターが支配する大都市の経済がどう影響しあい,空間の変化が生じたのか。

断絶-主導経済が成長し続けた結果,既存の空間編成が変わったこと,大きな衰退から新しい土地利用ないし社会空間の形態が生じたこと。
サービス産業への移行やその結果の階級構造の変容,消費とサービス提供の民営化への移行などといった変化が目に見える形で現れたもの
➡ジェントリフィケーション(富裕化)
貧困が集積し,建造物が老朽化したインナーシティにおいて,高所得者向けの住居・商業施設を目的とした再開発が行われる一方で,従来の住民が立ち退きを迫られる。

■ニューヨーク
・オフィス業務に特化したマンハッタンの役割は1950年から80年の30年間にわたり,増加の一途をたどった。1990年代に入ってもマンハッタンは地域の中心であり続け,極端な集中がやむことはなかった。マンハッタンで中心となっているビジネスは,企業者サービス,金融サービス,小売,観光業,コンサルティング,広告,コンピューターサービスで,すべて順調すぎるほど成長した。
・高度専門職でマンハッタン在住があてはまるのは,たいてい白人の若い層である。
・マンハッタンの居住者の内訳では,管理職・専門職・サービス労働者が極端に多い。なかでも急激に成長したのが専門職であり,サービス労働者の比重は過去30年間で減少してきている。
・高所得者層の収入が上昇する一方で,貧しい勤労者世帯の数が急激に増加した。
・女性が重要な要因となり,ジェントリフィケーションが進行している→貧困層の立ち退きを伴う。
・エスニシティごとのセグリゲーション(住み分け)の進行→世帯収入に応じた空間の階層化を反映。
・1980年代に低家賃住宅市場の縮小,景気低迷,低所得者世帯の収入減少が重なり,ホームレスが急増した。

■ロンドンと南東部
・ロンドン中心部は1980年代以降,オフィス業務に特化してきた場所であり,1990年代後半になると,金融・銀行・保険が極端に集中するようになった。また,高度専門職層がマンハッタンと同時期に拡大した。
・国際金融・生産者サービスの中心として成長する中で,高所得者層の賃金は上昇したが,低所得者層の賃金は上がらなかった。また,インナーロンドンに貧困層が集中するのと同時進行で,ロンドン中心部に済む高所得者層が増えた。
・規制緩和以降の学歴と能力重視の傾向により,女性にも就業機会が開かれるようになった。
・高額な消費をいとわない高収入層が生まれ,特有のライフスタイルが形作られた。
・低所得層,特にマイノリティが集住していたインナーシティを含め,高所得者層をターゲットとしたジェントリフィケーションが進行した。
・南東部には高所得世帯が多く集まり,低賃金労働が必要とされる基盤が出来上がっている。
・多くの公的サービス職業は,民営化と規制緩和によって民間セクターに移され,削減されていったことで,正規雇用市場は縮小し,臨時の不安定就業雇用が拡大した。これにより貧困の集積が進み,ホームレスも増大した。

■東京
ニューヨーク・ロンドンとの相違点
・グローバル化により1980年代は巨大な成長と資本蓄積を経験したが,90年代になるとこうした進展は見られなくなった。
・特定の種類の経済活動だけが東京に集積されてきた。
・グローバルシティとしての東京の軌跡において,政府が大きな役割を果たした。
・生活水準の向上より産業の成長を重視する資源分配により,ニューヨークやロンドンに比して格差が小さくなっている。

ニューヨーク・ロンドンとの類似点
・1980年代以降,企業者サービスと金融サービスが成長した結果,専門職の需要が増大した。
・ジェントリフィケーションの結果,瀟洒な住宅・商業地区が現れる中で貧困も悪化し,高所得者向けの住宅供給の拡大と低所得者世帯の立ち退きが生じた。

≪東京のインナーシティ≫
インナーシティとは,中心業務地区を取り囲む一帯をさし,郊外に比べ都市の中心部に位置していることから「インナーシティ」と呼ばれ,マイノリティや貧困層の集住地域が形成される。

〇地域社会の衰退
商業・住宅・古い製造業が混在する区に現れ,雇用の減少し,若年層の転出により相対的に高齢者人口が増加している。
〇地域経済の衰退
製造業が経済基盤として活況を呈していた土地において,製造業が衰退した。その一方で他地域では製造業以外の産業が影響して経済活動の水準が上がり,通勤人口も激増している。
〇住宅事情をはじめとする物理的条件の悪化
豊島区・北区-粗末な住宅と貧困層が密集している。
中央区・港区-商業中心地でありながら,粗悪な住宅や荒廃した家屋が存在する。ビジネスセンターが急速に拡大する一方で,住人は激減している。
〇社会的な不利益とマイノリティとされる住人の関係
・日本は完全な同質社会であるといわれてきたが,現在は東南アジアからの移民が増大している。
・台東区・荒川区においてエスニック・マイノリティが社会的にもっとも不利益をこうむっている。
・新宿と渋谷には大きな韓国人コミュニティがあり,外国籍のアジア系女性のほとんどは「エンターテイナー」として雇われている。

➡商業中心地区に隣接し,かつ一昔前には製造・商業の中心であった地域で,社会・経済・物理的な面での最大の衰退が生じている。

Ⅲ.消費
人々の消費の形が変化し,一通りの基本的な欲求が満たされたことで,人々は他の人々との違い=差異を追い求める時代となった。つまり,同じものを大量に生産するのではなく,必要な時に必要なだけ生産されるようになったのである。

・低賃金労働は消費(あるいは社会的再生産)の領域で生じており,ジェントリフィケーションが行えるかどうかは,膨大な数の低賃金労働者を利用できるか否かにかかっている。高所得層向けのジェントリフィケーションを受けて,大量生産・大量消費ではない類の商品やサービスへの需要が生じ,結果的に労働集約的な生産方法がとられている。そして,特注生産や限られた生産量,小さな小売店では雇用のインフォーマル化と労働の不安定化が進んでいる。
・直接的には労働の構造,間接的には成長セクターで働く人々の高収入に基づくライフスタイルの登場によって,低賃金労働が創出されている。
・戦後の代表的な成長産業であった生活必需品や耐久消費財の生産が減少したことで,製造業の価値は下がり,労働組合の衰退,労働契約上の各種保護の減少,臨時雇用や不安定雇用,または非正規雇用の増加が起こっている。

◇大都市において経済活動での労働のインフォーマル化と不安定化が広がった原因
1.大都市では所得分布の二極化が進んでいるうえに,主な成長セクターが地理的に集まっていること。
2.大都市に膨大な人口が集中したため,安くて規模の小さいサービスが急増したこと。
3.人件費やそのほかの必要性から,労働集約的な製造業のうち低賃金で規模が小さい企業は,平均サイズの都市よりもロンドン・ニューヨーク・東京に多く集まる傾向にあったこと。

Ⅳ.不安定就業労働市場とインフォーマル労働市場
ニューヨーク・ロンドン・東京において労働のインフォーマル化が続いているが,東京が他の二都市と異なる点が,東京で増えた不安定就業が「日雇い労働」やパートタイム労働であったことである。高度産業国における正社員から臨時雇用への切り替えの重要な要因として,サービス職へのシフトがあり,増えたサービス職の大半を担っているのが女性である。

◇インフォーマル経済拡大の原因
・政府の管理や規制から逃れ,人件費を削減するため。
・臨時雇用の増加,母子家庭の増加,製造業に基盤があった労働組合の衰退,そして男性労働者の大量解雇などにより,家族賃金が制度的に崩れてきているため。

■ニューヨークでのインフォーマル化
・インフォーマル労働は,移民コミュニティに集まってはいるものの,コミュニティからの需要だけでなく,より大きな経済圏で生じる需要にも応えている。
・インフォーマルな経済活動が,とくにジェントリフィケーションなど急速な社会経済的変化を遂げている地域に集中している。
・インフォーマル労働は規制や市場原理と関係ないはずだが,工業・産業サービス地域として浮上している区域に集積している。つまり,インフォーマル労働が行われる場所は移民コミュニティが多いが,より広い経済圏を相手とした商売も行っていることを示唆している。
・インフォーマル経済が行われる空間において,重要な立地条件は,移民コミュニティ・ジェントリフィケーションが行われている地域・市全体の市場をターゲットとするインフォーマルな製造業と産業サービスがある地域である。
・インフォーマル経済の労働には同じ作業の単純な繰り返しを仕事とする非熟練労働と,高い技術が求められたり,または技術の習得が必要とされる労働というふたつのタイプが存在する。

■ロンドンにおける労働の不定期化
・不安定就業の状態化は昔からある産業において習慣化しつつあるが,建設やエンジニアリングといった専門サービスや銀行業でも,時給ベースで働く労働者が増え,正社員と同じ権利をもつ非正規社員は減っている。雇用者側が規制を逃れようとするため,こうした非正規労働者は自営業として分類されており,これも高度サービス・セクターにみられる所得の二極化の原因となっている。
・アパレルにおいて人件費が最も抑えられる労働者であるエスニック・マイノリティと女性を利用するために,家庭内産業労働や低賃金労働が増加している。
・アメリカと同じくイギリスにおいてもパートタイマーの立場をさらに弱くする法律が議会を通過し,パートタイム雇用は奨励され,その利用が正当化されている。

■東京の日雇い労働者
・1980年代に日雇い労働者の数が膨れ上がった。日本には日雇い労働者の大きな職業紹介所(寄せ場)が横浜・東京・名古屋・大阪の四カ所にある。
・日本の日雇い労働者は雇用関係の不安定化でもっとも鮮烈な例であり,女性のパートタイム労働と並んで,労働人口の階層化が進んでいることを象徴している。

Ⅴ.労働市場における人種と国籍
ニューヨークやロンドンの社会的・経済的変化を考察するうえで,人種と国籍を無視することはできない。しかし東京ではやや事情が異なっており,ここ2,30年の非登録移民の流入を契機として,今後移民をどうするかという問題がようやく出てきたのが現状である。移民は大中心都市の低賃金労働や不安定就業労働市場に集まっている。

■ニューヨーク市のマイノリティと移民労働力
・1980年以降,高給職が増える一方で,黒人とヒスパニックが占める割合が全職種で高くなり,白人の占める割合が減っていった。
・黒人とヒスパニックが新たな低賃金労働に参入しているのと同時に,白人から既存の低賃金労働を奪っている。
・女性の割合がどの集団でも増えている。
・地位の高い仕事では,マイノリティの数は未だに少ない。
・「移民集約型産業」(労働者のうち少なくとも5分の1が移民)と呼ぶ集団に,アメリカ生まれのアングロサクソン系と外国生まれのヒスパニック系がやや似た形で集中していることから,低賃金労働を作り出しているのは,移民というよりは経済と言えるかもしれない。

■ロンドンの黒人とアジア系労働力
・1950年代,移民がイギリスに大量流入し,アフロ・カリブ系の移民の約半数はロンドンに定住し,残りは他の大都市に落ち着いた。2000年の時点で,エスニック・マイノリティの出自を持つ居住者は,インナーロンドンでは29%,アウターロンドンでは22%にのぼった。
・1962年までに最初の移民法となる一連の法律が施行されたことを受け,移民は制限されるようになった。さらに1979年には臨時労働許可証が廃止された。
・黒人労働者やアジア系労働者は衰退がもっとも濃い影を落とした製造業に集まっている。
・マイノリティ集団は,集団の人口比に対して失業率が高くなっているが,それが最も顕著なのが黒人労働者である。
・低賃金労働の発生率は非白人層でかなり高くなっている。

■日本への近年の非登録移民
・1950,60年代にアメリカや西欧諸国が労働力を外国人労働者に頼っていたのに対し,日本では地方から都市への出稼ぎ労働者が,外国人移民に代わる役割を果たしていた。
・1980年代にアジアから移民労働者が流入したことで,日本経済はまったく新たな局面を迎えた。都会で生まれた移民第二世代が完全に成長し,労働力となった。また,激務を伴う仕事(例えば遠洋漁業)や低賃金労働での労働力不足はますます明らかになっていった。
・国会では1990年になってようやく入管法の改正が認められ,日本が受け入れる外国人労働者の職業領域の数を28まで増やした。そのほとんどは専門職である。他方でこの改正をもって非熟練・半熟練労働者の入国が制限・管理されるようになった。
◇非登録移民が日本に移住をきめた理由
1.来日する前から,労働力移動のプロセスに何らかの形で巻き込まれていたため。
2.移民労働者の出身国における日本のプレゼンスが高まった結果,日本に関する情報が入ってくるのと相まって,連関が構築され,移住先の候補として日本が浮かぶようになったため。

→労働力の不安定化は,移民労働者にとって間口が広がるチャンスである一方,雇用者側にとっては制約が減ることであり,また,人件費削減につながる。また,製造業の衰退,サービス業の台頭によって独立した小企業が増え,こうした企業は日本企業の大多数が加入している大規模な経済団体に加入していない。これは不安定化のもう一つの形といえる。

■経済の再編成と社会的な地域構造における移民
大量の移民が衰退している後進セクターに低賃金労働を提供しているという従来の研究の見方では全面的な説明とならない。

・移民が安い労働力を提供しているとされるサービス関連職や製造関連職は,成長している高度専門サービスや,こうした分野で働く高所得層のライフスタイルから生じる需要に応じて創りだされている。移民労働者が担う衰退している経済セクターが,都市経済で最もダイナミックなセクターの需要を満たしている。
・1970年代のニューヨーク,1960年代のロンドンにおいて,移民がいなければ放置されたままであった家屋や閉店したままの店舗が連なる地域で,移民は職を見つけ働いた。移民コミュニティは都市の空間・経済セクターの再生に積極的に関わっている主体であり,コミュニティのための直接労働と,資金の個人投資を集積させることで利益を最大化する構造,あるいは媒体である。
・大量の移民は戦略的なセクターにサービスを提供する労働に組み込まれており,その組み込まれるプロセスで,グローバル・シティが重要な役割を果たしている。そして実際に組み込まれていくなかで,移民労働者は見えない存在になっていく。
・移民は移民であるがゆえにインフォーマル経済におあつらえ向きの労働力や企業家になり得るし,大都市を中心に低賃金労働者が増えたことは,移民にとってみれば,雇用機会の創出として理解できる。

Ⅵ.まとめ
1.近年のジェントリフィケーションの特徴は,その規模の大きさと新しい消費イデオロギーを生んでいることである。つまり,中産階級の消費パターン(機能性・低価格・郊外)から大都市のエリート層の消費パターン(スタイル・高価格・超都会的)へと変化が生じている。このような新しい商業文化が台頭する一方,貧困の厳しさが増している。
2.三都市において不安定就業労働市場が組織化され,こうした雇用関係がサービス・セクター中心の経済で拡大し,中心的になった。不安定のダイナミクスは都市ごとに違った様相を呈しているが,各種パート労働の増加は一般的かつ広くみられる傾向である。
■ニューヨーク
不安定就業労働市場が成長した結果,予期していなかったインフォーマル経済の登場というダイナミクスが生じた。
■ロンドン
かつて国家が提供したサービスの多くを民営化した結果,雇用の不安定化が,もっとも劇的に生じ,そのために雇用条件が制度的に悪化した。
■東京
「日雇い労働者」が急激に増加し,労働者の層も多様化している。このような中で,制度による保護や賃金水準が急激に悪化している。

3.人種・国籍によって,雇用分布・賃金分布は異なっており,ニューヨークの黒人や第三世界からの移民は極端に賃金の低い,より古いサービス職に集まっている。ロンドンでは,移民への門戸が閉ざされたにもかかわらず非登録あるいは半合法移民が流入し続け,彼らは低賃金労働に従事している。労働者と世帯の間で孤立化が進み,経済的重要性をもたない者の割合が増加している一方で,柔軟性の高い期限付きの低賃金労働力に完全に組み込まれつつある移民労働者もいる。東京への非登録移民の流入の主要な要因は,経済の急速な国際化,なかでも近年の非登録移民の主要出身国への海外直接投資・海外援助・海外移転の増加と,不安定就業労働市場の存在感の高まりである。最近の移民の多くは雇用関係の不安定化の広がりのプロセスに組み込まれている。つまり,大都市を中心に起きている経済の国際化と雇用関係の不安定化により,新たな移民が生まれ,かつ吸収されているのである。

論点
製造業の衰退と金融・生産者サービスの台頭やグローバリゼーションにより,日本でも不安定就業労働市場が拡大し,移民労働者が増加するなど雇用形態の変化が生じている。では,1960,70年代の高度経済成長期と現在では,雇用や労働の在り方は具体的にどのように変化したのだろうか。またその変化により,社会や私たちの日常生活にも何か影響があっただろうか。

<議論>
高度経済成長期と現在の雇用・労働のあり方に関する変化を捉えるため、まずそれぞれの時期における雇用・労働の特徴となる事項をリストアップした。その結果、高度経済成長期には「終身雇用・年功序列・会社からの手厚い補助」「非熟練労働」「正規雇用・集団就職・正規雇用の多さ」「労働組合の強さ」などが挙げられた。現代では「転職、リストラが一般化」「ブラック企業・ワーキングプアの登場」「専門職のニーズの高まり」「正規雇用の少なさ・過剰な就職活動」「規制緩和によるフリーター、派遣労働者の増加・労働組合の崩壊」が挙げられた。これら高度経済成長期と現代の特徴は対応しているカテゴリに分けた。(各時代の特徴は対応するカテゴリ順に紹介している)また、高度経済成長期には見られなかった新しい特徴として、「外国人労働者の増加・女性の積極的な登用・定年後も働く労働者の増加」が挙がった。
こうした特徴の変化から、いま私たちの日常生活に現われている影響として「収入の二極化・雇用のグローバル化・個人社会・資格重視・生涯勉強」が挙げられた。特にポジティブな影響として「束縛がない・選択肢の増加」が、ネガティブな影響として「一生涯競争が続く・不安の強い社会」が挙げられた。
今回の論点では、現代社会のネガティブな側面が多く論議された。たしかに社会的な格差の拡大や就職したからといって安心できることはない点など社会的な不安はますます大きくなっている。一方で、努力次第で年齢に関係なく昇進できる点や職種・働き方の選択肢が増えてきている点は、良い点だと評価できるのではないだろうか。単純に「高度経済成長期は良かった」「現代社会は悪い点ばかりだ」と評価するのではなく、現代の格差社会の下位層に対する補償が弱い点のみを問題視することが重要だと考える。
こうした問題点の原因に、日本の企業依存的な福祉制度がある。所属する企業、また就労状況により、享受できる福祉に差が生まれてしまうからだ。弱まってしまった福祉国家体制を強化することが求められると考える。
2015-08-03 13:10 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第8章 雇用と所得

第8章 雇用と所得

三都市は一つの物語を共有しているのか?

70年代 ニューヨークとロンドン: 雇用者が大幅減り、生産者サービスと金融が成長
    東京:雇用が安定していたが、製造業の雇用の減少が著しい
    三都市共通:製造業が後退(ある産業が成長)、
          政府の財政危機(政府の雇用減少)
ニューヨーク
1960年以来
 1雇用の喪失を伴う、製造業の大きくな衰退が挙げられる。
 2多くの本社がなくなり、結果的にオフィス業務が大幅に減った。
 3財政状況の急速な悪化。
 4マンハッタンに集積している金融サービスと生産者サービスの急激な成長。

二つの大きな傾向がはっきりと現れてきた。
 1製造業の撤退。
 2生産者サービスの急速な拡大。

  製造業が衰退した原因(ロンドンと共通)
  1成長期における土地不足や製造業に適した土地がみつからなっかた。
2道路ができたことで、都市の中心としての比較優位性が下がってしまった。
3職業の中の特定の部門が弱点を抱えていたため、土地や資源をめぐる他の経済部門との競争力が弱まった。
  4国際的、政治的、経済的そして技術的状況が変わったことで、都市への大規模な集積を起こした諸要素は、1960年代後半にその妥当性と重要性を失っていった。

  対照的に、ニューヨーク全体はサービス関連職の数は増えていた。中にはすべての経済活動(特にFIRE)がマンハッタンに極端に集積している。

ロンドン
1960年以来
 1、かつて軽工業の重要な拠点であるが、1985年までに製造業での雇用が80万も失っていった。
 2、20年の経済停滞の中、雇用と人口が減っている。
 3、1984年から、金融と生産者サービスを急成長した。

製造業の衰退の原因(複雑)
 1国際競争の激化、また工業の近代化への投資不足による生産性の低下。
 2工業生産で広大なスベースへの要求が高まった時期に、場所と土地が不足していたため、拡大に歯止めがかかった。(ニューヨークと共通)

製造業の衰退の中、高賃金で付加価値の高い職業が好調である。(印刷、ハイテク、通信産業)

イギリスとロントンの雇用変化について、1970年代後半以後の衰退深刻だった。サービス業ロントンの方が安定している。イギリス全体の方が増えっている。80年代を入ると企業者と個人向けサービス業の雇用を増加した。銀行と金融の雇用も増え、ロンドン市内に集積している。その結果、ロンドン市内で他の部門(卸売、小売と他サービス)で働く者の割合は少なくなっている。

地理的な分散も、サービス職に影響を及ぼしてきた。変化の原因は都市全般に当てはまるものがあり、ロンドン特有のものもある(南東部)。

東京
特徴:政府の役割が大きい
1950年代、政府は重工業と化学工業の規制を始め、製造業は全体的に後退していた。
1970年以後、雇用の安定期に入った。ニューヨークとロンドンに比べれば、製造業における雇用喪失それほど目立たず、FIREの急成長も見られなっかた。
1980年代、政府は都市の再編を大きな役割を果たした(三全総から四全総へ)。東京は大きな変化したが、全体的な雇用状況から把握することはできない。都市構造再編に伴い、コストが製造業の成長を急激に圧迫するようになるにつれ、高度サービス職による土地利用が増加した。問題としては都市機能が集積し過ぎ、土地利用の違いから関係者の間に摩擦が生まれている。
1977〜1985年、生産者サービスは71%を拡大した。
1986〜1996年、FIREは25%以上成長した。
1990年代後半には、全産業に対してサービス産業が占める割合が、東京の商業中心地区では77%にまでなった。東京は製造業からサービス産業中心へ変容した。

賃金
背景(二つの傾向)
1賃金格差の拡大
考えられる要因:教育への報償、スキルに応じて格差、テクノロジー、人口学の変化(働く女性の増加、ベビーブーム世代の成人化による若年労働者の増加)、経済部門の転換、賃金分布における格差拡大

2最も急速に拡大するサービス産業のなかに、低収入と高収入の仕事が極端に集中している
生産者サービスの拡大によって、従来の労使合意などの、制度的枠組みを壊れつつである 。国の制度の是非も取られる
低賃金労働が増えている背景には、成長部門での臨時労働の職種の増加がある
仕事のスキルの高さと関係なく、高いと低い両方増加している
ニューヨーク

アメリカ全体の統計をみると、賃金格差が広がっている。さらにニューヨークが著しい
明白である。賃金分布のトップ層の賃金上昇し、ボトム層の賃金減少し、さらに二極化している。結果、製造と非製造、マンハッタンとニューヨークの他の行政区、企業者サービスと他のサービスの間にギャップができている。

ロンドン

イギリス全体は製造業よりも、金融と専門サービスなど活発な経済部門で賃金格差が開いている。ロンドンにおいて、職業を問わず、賃金についてイギリス全体より圧倒的高い。また、単純労働と専門職の賃金の差も、同じくらい目立っている。イギリス全体もこうしたギャップを見られる。
ニューヨークと違い、社会的な二極化が進んでいるとはいえない。イギリスとロンドンの場合、賃金格差が広がったとはいえ、全集団が実質的な増収を経験した。

東京

賃金格差が拡大しているが、ロントンとニューヨークと比べるとその差が小さい。東京の場合、景気のブレを関わらず、最も高い月収を得ていたのが金融・保険で働く男性であった。賃金格差は各行政区と時代背景の違いにより、変化している。景気のブレと関係なく、専門職の拡大は長期にわたって見られる傾向である。

賃金と格差

問題の検証
1格差と二極化というグローバル・シティに内在する問題
サッセン強調したいのは、二極化の問題は格差拡大に止まらないという点である。つまり、所得の多い少ないによって仕事と家族のあり方に新しい高度専門職層と最下層との間の差が開き、その結果、社会の形が変わっていくということです。

2 グローバル・シティとグローバル・シティ以外の英米諸都市の間にある格差
活発な経済、なかでも生産者サービスが伸びたことで高度成長を遂げている都市では、低所得者層の平均所得が増えている。一方、生産者サービスではなく、製造業中心の都市では逆に、所得の中央値は低下し、経済も停滞した。
生産者サービスへの移行が格差を生み出す原因の一つだと考えている。さらに、その生産者サービスは、都市の専門特化から生じたものである。
広いで見れば、生産者サービスへの地域的な特化が家計収入を平均以上に引き上げ、他地域との差が開いた。
階層化された都市システムのランクを付く場合、低所得労働を見るときに、どのように構成されているか重要な論点である。高度成長期を遂げている部門も低所得労働をもっと多く生み出している場合もあるからだ。
他の都市と比べた場合、グローバル・シティであるという状況ゆえに、最底辺層にとってマイナスな状況が表面化しにくい

まとめ
ニューヨーク、ロンドン、東京は、雇用・賃金で似た傾向が見られた。
1製造業が縮小、生産者サービスが伸びた。
2平均給与が最も高いのは金融だが、性別による格差がかなりある。
3専門職とサービス職が激増している。
4パートタイム労働が成長産業を中心に増えている。

ニューヨークとロンドンでは、都市の内部で賃金格差が拡大していたが、東京にはそれほどではない。

三都市における格差はさらに広がって、低所得労働が増えて、所得の二極化が進んでいる。

<論点>
「正社員登録 助成を恒久化 政府方針「1人50万円」増額も」讀賣新聞 2015.07.19朝刊より

皆さんこの新聞を見って、この行政の動きはどう思いますか。良かったのか、物足りないなのか、それとも無駄なのか。なぜ?この方針は今後の日本に対してどのような影響を予想ができますか。(正社員vs非正規雇用)

<班の議論>
【第2グループ】
私たちのグループではまず、「キャリアアップ助成金」という政策が打ち出されたその背景について、国・産業(企業)・個人の観点から考察した。国家レベルでは福祉国家の衰退、新自由主義の台頭にみられるような、国家による社会・経済への最小限の介入、そして社会保障制度の縮小が挙げられた。また、リーマンショック以後の不況も大きな影響を及ぼしているという意見が上がった。次に産業(企業)レベルでは、年功序列・終身雇用制度の崩壊による非正規雇用の拡大(フリーターやパートの増加)、それに伴う労働組合の弱体化に関する意見が最も多かった。そして、規制緩和に伴う民営化(privatization)によって企業が幅をきかせ、雇い止めや不当解雇が横行していること、また、本文にあったように製造業の衰退に代わるサービス業の増大とサービス業従事者の低賃金化が挙げられた。個人レベルでは、正規雇用と非正規雇用の収入の格差、不況による生活の負担感、そして人々が組合やコミュニティから切り離され個人が断片化し、これらによって人々の中で不安感が高まっているという意見で一致した。
次に、このような背景を踏まえて「キャリアアップ助成金」という政策がどのような影響をもたらすかについて議論をした。しかし、上がるのはこの政策に対する疑問ばかりであった。多くは1986年の施行以来規制緩和され続け、非正規雇用を押し広げてきた「労働者派遣法」に対して有効性を持つのか、従来の国の政策と矛盾があるのではないかというものである。また、非正規雇用労働者が正規雇用労働者になる条件は何なのか、だれが正社員になれるのか、企業に渡った助成金は本当に労働者に還元されるのか、といった疑問が挙げられた。「キャリアアップ助成金」の利点としては、国が現在の不安定な労働市場に対して動きを見せたことで、今後非正規雇用の形態が改善される契機になるのではないか、という希望が見いだせる可能性もあるという意見のみであった。
議論の結果、「キャリアアップ助成金」は格差や分断が広がる労働市場に対して、何の影響力もなく、依然二極化は進行するだろうという結論に至った。非正規雇用を減らすためには、より抜本的な改革を行わなければ何も変わらないという意見でまとまった。

≪総合司会コメント≫
第8章ではニューヨーク、ロンドン、東京の三都市における経済基盤の変化が、それぞれの職業分布と賃金分布に着目して説明される。
1950,60年代までは、製造業に牽引されたフォーディズム都市が大量生産・大量消費そして規模の経済の増大を可能にした。また、この時代は労使合意に代表されるような、よく行き届いた手厚い制度的枠組みが機能していた。しかし1970,80年代になると、このような社会,経済のかたちは大きな転換期を迎える。すなわち、製造業からサービス産業への大転換が行われたのである。製造業は撤退し、金融・生産者サービスに支えられた急激な成長という新しい段階に入った。三都市では雇用者数が全体的に大幅に減少し、深刻な金融危機を経験した。そしてその対策として、公的サービスと行政サービスが削減された。また、経済基盤の変化によって賃金格差の拡大が生じた。都市の専門特化から専門職の給与は引き上げられる一方、サービス職の給与は低くなるばかりである。製造業従事者の所得は減り、レイオフは頻発、労働組合があって所得もそれなりに得られた工場の閉鎖が続いている。サービス経済に全体的に移行したことで、製造業を基盤とする経済よりもっと低賃金労働が増えている。このようなプロセスが重なり、所得の二極化が進んでいるのである。
現在、日本においては福祉国家が衰退し、ポスト・フォーディズムの時代を迎えた。労働派遣に対しても規制緩和が行われ、正規雇用市場は縮小している。このような中で政府は「キャリアアップ助成金」という、非正規雇用の労働者を正規雇用へと転換した企業への助成制度を拡充する方針を打ち出した。今日の授業では、この「キャリアアップ助成金」という政策が何故今、この時期に提言されたのか、そしてこの政策によって今後何か変化はあるのか、について二つのグループに分かれ、議論を行った。
その結果、両グループ共に、この政策が実際に非正規雇用労働者のなかでも、本当に正社員になることを望んでいる人に適応されるのか(誰に適応されるのか)、また「労働者派遣法」が施行されている中で果たして成果が生まれるのだろうか、などの疑問が上がり、「キャリアアップ助成金」という政策は現在進行し続けている社会、経済の二極化を抑制するものとはならない、という結論に至った。
賃金をいかに下げていくかを競うグローバリゼーションの流れの中にあって、正社員のみで会社を運営していくことは、コストがかかり過ぎて生産現場を日本に置いておけなくなるため、さらに失業者を生み出すこととなる。やはり一定数は非正規雇用労働者を登用せねばならないのである。問題はその割合であり、それを決めるのは非常に困難であるが、我々が向き合っていかねばならない課題である。また、福祉国家の衰退により手薄くなった各種の社会保障制度を代替する組織や制度をいかに生み出していくかということも、同時に極めて重要な課題であると考える。

2015-07-27 17:55 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバルシティ 第7章 グローバル都市システムをつくるもの ― ネットワークと階層

第7章 グローバル都市システムをつくるもの ― ネットワークと階層

・ニューヨーク、ロンドン、東京がビジネスと金融の中心地として近年の変化:
①1970年代後半から、ビジネス・セクターと金融セクターの構造と規模、ネットワークの性質が変わっている。
②1980年代に入ると金融業が再編され、規制は緩和されると同時に多様化し、競争は激しくなり、大手商業銀行の市場占有率は下がり、取引量が飛躍的に伸びた。

・本章で考える主な問題:
①ニューヨーク・ロンドン・東京の三都市は互いにどう関係しており、グローバル市場とどうつながっているのか。
②ニューヨーク・ロンドン・東京とほかの大都市の関係について考えてみたい。

●ネットワーク化されたシステムへ
・第5章ではグローバルに展開する複雑な事業にとって社会的なつながりが重要であり、ネットワークが越境的に成長した。
第一、規制緩和された金融センターは、ネットワークを通じてグローバル市場に統合 され、金融業務が国境を越えて行われ、分業体制が現れつつある。
第二、世界の多くの国際金融センターは、 国内外の資本の出入口(ゲートウェー) として機能している。
第三、出入口としての機能はグローバル市場への統合だけではなく、金融危機が発生した場合の出入口でもある。
第四、金融システムでは、各国が競争だけをしているわけではい。金融センターがいくつか集まり、専門特化した分野で協力しあうことが増えている。
第五、東京は依然として、資本の重要な出所になっている。グローバル金融市場が東京において拡大する可能性がある。
第六、香港はさまざまな世界が交錯する場であり、中国と諸外国の内外の企業を結ぶ戦略的な結節点としての役割を負ってきた。
第七、電子的なネットワークの規模の拡大している。しかしだからといって、金融取引のための物理的な中心地が必要なくなってしまうわけでなく、むしろ、戦略的な連携ないし機能上の連携のために、都市間の取引が急増することになる。

●拡大と集積
・金融センターが次々グローバル市場に統合されている同時に、資産が集まる地域にばらつきがあり、センターの中でもさらに主導的な位置にある場に過剰に集積している。
・東京の株式市場の劇的な変化:1980年代の初めは、東京市場はニューヨークに比べて、規模がまだ小さいく、1980年代後半には世界最大の株式市場にまで成長した。
・運用資産の集積は、株式市場の資本化ほど目立っていないが、大きな意味を持っている。
・ニューヨークとロンドンは会計、広告、経営コンサルティング、国際的な法律サービス、エンジニアリング・サービス、情報関連サービスやその他企業者サービスを生み出し、かつ輸出する場として主導的な拠点になっている。
・高度な生産者サービスを主導としている企業は国境を越えて広がるネットワークを数多く築いてきており、その中で特殊な地域的連携や組織的連携がとられている。こういった多国間ネットワークがあることで、企業は自社が提供できるサービスを増やせる。
・1988年には、ニューヨーク・ロンドン・東京の三都市だけで、世界の100大銀行のおよそ半分、そして世界の証券会社上位25社のほとんどを占めていた。
 1997年になってみると、トップ100に入る銀行はわずか28行、トップ25社に入る証券会社は19社まで落ちていた。それにも関わらず、三都市の全資産・資本の90%以上を占めるようになったこと。
・1980年代に東京は、国際金融センターで主要な位置を占めるべく成長していることを世界に知らしめていた。しかし、ニューヨークやロンドンのように規制が緩和されることはなく、このため外資系企業は望んだような収益性を実現できなかった。

●国際取引における主要通貨
・自国の通貨が国際的な基軸通貨のメリット:
第一、輸入代金の支払いをするのに外貨の獲得する必要がない。貿易収支で赤字が生じても国内の経済政策で比較的容易に対応できる。
第二、貿易や資本の取引の大半が自国の通貨で行われるため、為替相場の変動にあまり敏感にならずに済む。
第三、金融の国際的なセクターの中でも主導的な役割を負うようになる。

・基軸通貨であることには代償もある。
第一、世界中の国に流動性を供与しているために、経常収支ないし長期資本収支で赤字に転落しやすくなってしまう。ただ、この赤字が一定の限界を超えてしまうことはない。なぜなら、もしそんなことがおきれば基軸通貨としての役割は損なわれてしまうからだ。
第二、これは基軸通貨国だけではなく、グローバルな経済すステムを危機に晒すことになる。
第三、金融市場の国際化がかなり進んでいる時期に基軸通貨であるということは、海外の企業・政府などによって自国の通貨が大量に保有される可能性があり、国内で金融調節を行ってもその実効力が低くなってしまう。
     ↓
・基軸通貨であるために、当該国は強い経済を維持するだけではなく、資本市場の国際化が進む中で、国際貿易と世界金融で確固たる地位を築かねばならない。
・米ドル:国際金融システムにおいて、米ドルは今でも通貨として重要な役割を担っている。とはいえ、その役割は確実に減ってきている。
・ユーロ:今では、ユーロはマルクよりはるかに重要な役割を担う。
・日本円:1980年代、国際における日本の地位が向上し、国際金融市場へ参加が増えると、円はドルに次ぐ重要な国際通貨となった。ただし、経常取引での円の役割は米ドルやドイツ・マルクに比べると小さかった。

●国際的な不動産市場
・1980年代、ニューヨークやロンドン、東京などでは都市中心部の地価が急騰した。
・なぜ不動産市場が高騰したかというと、金融業やサービス企業だけではなく、高給專門職層が主要都市で急増したからである。
・注目点:ニューヨークやロンドンの中心部の地価が、1980年代になって国民経済全体の状況と無関係となっていた。高額入札者の側にしても、都市中心部の土地に対しては、いくら上乗せしてでも獲得したいが、すごしでも中心部から外れた場所には、全く関心を示さなかった。
・都市中心部の不動産開発のうち、所有者も出資者も金融業であるものがどの程度あるかによって、不動産市場が循環される傾向が強まる。
・不動産からもっとも高い収益を得られているのは、国際的な不動産市場の拠点のなかでも主導的な位置を占めているところである。国民経済の様々な状況に左右されない国際不動産市場において、建造物は商品化される。
・1980年代に三都市で実施された大規模な建設ポロジェクトは巨額の投資が行われていて、金融、エンジニアリング、建築などをはじめとする專門技術・知識を提供する企業のなかでもトップクラスの企業が多く参加していた。

●まとめ
・ニューヨークとロンドン、それから波があるものの東京には、外資系のサービス企業と金融企業がますあす集まってきている。
・政府が最低限しか関わらない経済活動の新しい領域が生まれた。国内企業・外資企業が事業を展開している空間は、越境的な経済空間であり、三都市にはこうした空間がある。
・1980年代に入り、様々な国境を越える経済活動にとって、ニューヨーク・ロンドン・東京は重要な拠点となった。
 1990年代になって三都市に現れた特徴から、それぞれの都市でこれまでにない形で経済活動が国際化していたことがわかる。つまり、従来の「国際化」で見られた対外直接投資や買収とではない、それを超えた形で、という意味である。
・国際的な金融取引の大幅な拡大、グローバルに広がるネットワークへの株式市場の一体化、生産者サービスの国際的な市場の成長。これらは多くの主要都市で経済基盤に取り込まれてきている。
 しかしそれでも、こうした取引や市場は、ニューヨーク・ロンドン・東京・パリ・フランクフルトあるいは香港とごく限られた都市に過剰に集積している。
・このように、特定の都市への過剰な集積が進む中で、越境的なネットワークに加わるグローバル・シティの数は増えてきている。そしてこのネットワークこそ、グローバル経済の組織的な構造を支える重要な要素である。

論点:
 P194で筆者は、「資産が集まる地域にばらつきがあり、センターの中でもさらに主導的な位置にある場に過剰に集積している」のようにと述べている。私たち普段はこのような集積していることを感じられているのか?そして、このような集積は私たちの日常生活にどんな影響を与えているのか?

班では、自分の住んでいるところが集積しているかしていないかに立場を分け、それぞれ人の動き・交通・経済・コミュニティにどのような影響が及んでいるかについて議論した。
その結果、集積しているところに住んでいる人たちは、地元は人が多いが落ち着きはなく、交通アクセスが便利であると述べた。また、地価が向上しお金の循環もいいが、過剰な開発と地価の高騰のために同じような大型店が集まり、コミュニティは薄い。だが、その分コミュニティにしばられない多様な生活スタイルも保障されていることがわかった。
一方、集積していないところに住んでいる人たちによると、地元は夜になると人はおらず、電車は普通しか止まらない。また、大都市には行かず郊外のショッピングセンターに行ってしまう。空き地が駐車場と化し、高層マンションもなく、手ごろな値段のスーパーもないが地元の商店街もそこそこに賑わっている。街の雰囲気にほとんど変化がなく、いい意味で静かな住宅街であり、町内会などコミュニティが強く、子どもの見守り隊など治安を守る組織がある。
これは、主に集積しているところに住んでいる人の移動手段が電車であり、集積していないところに住んでいない人の移動手段が車という、普段足として使っているものの違いから生じるのではないかと考察した。

<議論>
最初に、お金や不動産などの資本の集積を日常生活で感じるかを確認した。神戸で生活をしているため、関西というエリアに限定して議論を進めた。今回、こちらの班は2人が中国人、1人が日本人という構成だったが、中国人学生は集積を感じると答えた。しかも、その集積地は大阪の中でも梅田や心斎橋であった。その理由は、知名度が高いことから中心地という認識が形成され、また、アルバイトの自給が高いことからもお金が集積しているという認識がなされているからというものであった。具体例としては、外国人観光客の集中による外貨の吸収、駅構内など公共交通機関の整備、人やモノの集積と関連して多様なニーズを満たすサービスや店舗の存在があげられる。もし、その資本の集積地で生活を営むとすれば、地価の上昇や人の集中による混雑が問題点としてあげられるが、多様なサービスや店舗があることにより、非常に便利で遊ぶことには事欠かない環境を保障されることになるだろう。また、雇用も創出される。
 反対に、資本の集積を感じられないと答えたのは、神戸市在住の日本人学生であった。神戸は所謂地方都市である。「京阪神」とまとめられるように、関西では大阪や京都と共に栄えているとされる神戸では、大阪に頼ることなしに生活を営むことができる機能が備わっていると言っても良い。したがって、普段の生活の中では、特定の場所への資本の集積を意識することはない。たとえ集積していたとしても日常生活に支障がないからである。しかし、「大阪都構想」のような神戸の経済までもを揺るがすような大変革が起ころうとすると、嫌でも資本の集積を意識することとなる。それは自分の身近な生活が変わる可能性があるからである。
 しかし、神戸の人間も関西の資本の集積地であると考えられる梅田や心斎橋から恩恵を受けている。主として雇用などである。一方で、いつか自分の生活空間が資本を蓄えた集積地に喰われてしまうかもしれないという恐れがある。この恐れと前述した恩恵とは表裏一体のであると考えられる。

<総合司会コメント>
社会の大きな動きが日常生活にどういった影響を与えるのかを探る議論は非常に興味深いが、難しい。私たちは、普段テレビのニュースや新聞でたくさんの情報を得るが、それが実際の日常生活にどのように影響するかまで深く考えることはあまりないように思う。したがって、いざ「大きな動きは身近な場所でどのように現れているか」を考えようとしてもなかなか出てこない。大きな動きをどこか遠くで起こっていることと理解するのではなく、たしかにどこか遠くで起こっていることだが波のようにいつか自分のもとにも届くものに違いないと認識し、起こり得る影響について考えることはグローバリゼーションが進む現代を生きる人間が求められているもののような気がしてならない。本日の議論で言えば資本の蓄積になるのだが、学生は不動産にもお金にもどちらかというと縁遠い存在かもしれない。だからこそ、アンテナをはり、お金やモノの動きについて敏感にならねばならないのではないか。恐らくその動きは、他のあらゆる領域にも波のようにいつか届くはずである。
2015-07-13 22:34 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第6章 グローバル・シティ―脱工業化時代の生産の場

第6章 グローバル・シティ―脱工業化時代の生産の場

●空間的技術的な変化によって、グローバル・シティが世界経済で負わされるようになった役割を明らかにする
・そのためにサービス産業と金融(2つの成長セクター)の空間経済を分析する
・ニューヨーク、ロンドン、東京が2つのセクターの場として担う役割とその限界を検証
⇒2つの成長セクターが大都市圏や国全体の経済にどう統合されているのか
・生産者サービスに限定して分析し、3都市がそれぞれの国の都市システムでどのような位置付けにあるかを考える

生産者サービスの場所―国家、地域、そして都市
<3か国に共通するもの>
① 国全体で、全産業における雇用の伸び率より生産者サービスの雇用の伸び率が高い
⇒そしてニューヨーク、ロンドン、東京の伸び率より全国の伸び率の方が高い
(1977~1996年のデータより)

② 3都市における生産者サービスの全雇用に占める割合は、全国レベルより33%から100%高い
⇒ロンドン・ニューヨークでは保険業の職が失われるも、金融業全体では伸びる

③ 生産者サービス全体では3都市の雇用分布に大きな影響を及ぼす
⇒ 国全体の生産者サービス雇用における3都市の重要性が高まっている
⇒立地係数が特に不動産業で高い、1970年代から90年代にかけておおむね立地係数は低くなっているが、生産者サービスの絶対数が増えているため偏った集積は変わらず

④ 大都市圏中心に位置し成長する生産者サービスと、地域全体で成長する生産者サービスではタイプが異なる
⇒特定地域に集中しつつ、地域内では分散している(例:ロンドン)
⇒ある特定のセクターの成長が、他の複数のセクターの成長を促す?

⑤ 生産者サービスが3都市の商業中心地や金融街へ過剰に集積
⇒マンハッタンでは金融・保険・不動産セクターと企業者サービスが集中
⇒シティでは一度集積が弱まるも1986年の規制緩和以降再拡大
⇒千代田・中央・港・新宿も都内金融・保険・不動産セクターの4割が集中
都市階層の新たな要素
①生産者サービスの空間経済における3都市以外の都市の位置付け
②都市のタイプによって異なる生産者サービスの構成
→2番手以降の都市との格差が激しいロンドン(1991)、東京も全国の雇用に占める割合は名古屋・大阪の2倍(1995)、他の大都市と同程度のニューヨーク(1997)

●イギリス
・グローバル市場志向のロンドンに生産者サービスが過度の集積
⇒生産者サービスの雇用はロンドン地域が全国の3分の1以上を占める(121万9000人)
⇒しかし国全体の生産者サービス雇用の成長で、ロンドンへの偏りは修正される(1970年代は4割がロンドン)

・専門特化の企業者サービスにより南東部が国民経済から切り離される
⇒南東部とその他の地区の差異の原因は生産者サービス
⇒製造業都市では、製造業で働きながらも製造に携わらない者の割合が高い(研究開発中心の小規模企業)
⇒しかしロンドンでは、生産者サービス全体に占める上記の職の割合は国内で最低
⇒中心機能のロンドンへの移転は、雇用が少ない原因と関係しているのか?

・ロンドンと他の都市の階層
⇒ロンドンに近い二番手の都市では、金融サービスがロンドンに移っていく(南東部、バーミンガム)、バックオフィスなどは低コストの都市に分散する
⇒ロンドンの中小企業が利用する社外アドバイザーは93%が南東部に立地

・ロンドンとシティ
ソフトウェア関連のセクターが発展、ロンドンと南東部のセクターを多様化させる
⇒ロンドンに優秀な人材が集まりITセクターの柔軟な労働条件のもとで働く結果、知識主導型のITセクターで様々な部門が発展(…その中心がシティ)
ITセクターでも内部の構成要素ごとに立地に違いあり
⇒金融ソフトウェア・出版・企業者サービスはシティの東側に、マルチメディアはロンドンの西側に
⇒ロンドンの中でも特定の地域に集積していることは、集積効果の重要性と経済の最先端セクターにおける「場」の概念の複雑さを示す

・1970年代はロンドンが中心となる巨大な経済複合体により、南東部でも生産者サービスが成長した
⇒しかし経済のサブシステムが地域で異なるため、ハイテク・サービスや現地向けのサービスは南東部、国際市場向けの生産者サービスはロンドンと分化
⇒そのためロンドン以外の南東部では製造業の弱体化と共に生産者サービスが衰退
⇒ロンドンと残りの地域は断絶された

●アメリカ
・ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴに生産者サービスが集中
⇒ニューヨークの金融サービス業が再編され、一部企業に収益が集中
⇒しかしシカゴはグローバル・シティとはいえない?

・農工業複合体を相手に発展したシカゴの金融業は、複合体と共に衰退。
⇒しかし生産者サービスの一部は成長し、世界市場向けになっている。
⇒先物取引市場の取引量や額は上昇傾向、地元の巨大企業の多くが移転しながらも法人向けの高度サービスはシカゴに残る
⇒グローバル市場に参入する周辺都市の企業との取引によって生き残っている?

●日本
・グローバル市場を志向する主要セクターがすべて東京に集積
⇒しかし製造業の重要性は失われていない、東京は国内経済の命令・統御機能を担っており国際的サービス機能の場としては発展途上、政府が経済活動の役割を担う
⇒金融と保険の3大都市への集積、しかし製造業中心だった大阪と東京の差は広がる

まとめ
・3か国の生産者サービスの空間経済は国全体への分散と特定の地域への過剰集積
⇒それぞれの国の従来の都市階層に沿って分布するはずが、イギリスはロンドンへの過剰集積が南東部全体の成長の原動力に、日本は東京に最先端部門が集まり大阪との格差が拡大、アメリカはニューヨークとロサンゼルスがシカゴと差をつける

・グローバル市場を志向することによる成長…都市の階層間に断絶もたらす
⇒バランスのとれた都市システムや国の統合の背景に、製造業主体のフォーディズムが不可欠な要因となっていたのではないか
⇒日常業務が地理的に分散しても、労働の組織化のための情報通信の比重が増加。戦略的機能は中心地に集積

・金融の中心地と産業の中心地では生産者サービスの複合体が異なる
⇒金融の中心地の成長にはグローバル市場への輸出と関わりがある
…主要都市が生産とサービスの取引に適した市場であることに、過剰な集積がどの程度関係するか

・産業や地域の違いを超えて、サービスの財化が進む
⇒経済や規制の枠組みが複雑であったことから民間・公共を問わず中間サービスが必要に、労働も情報技術の発展により組織化の形が変わる
⇒労働の組織化の変化はあらゆる産業・地域で起きている

論点
①日本がアメリカ、イギリスと比べて製造業が衰退していない要因はなぜか
②国の製造業が衰退することや、中枢機能が特定の都市に集積することで、私たちの生活に及ぼされる影響はどのようなものがあるか。本章での現象をヒントに考える

<中国グループ> 
中国グループは今の中国の都市が成長している背景を踏まえて、都市において製造業が発展することと中枢機能が特定の都市に集積することが生活に与える影響について議論をした。
 議論のまとめは空間的に都市と地方二つの部分を分けっている。それぞれの空間に人口、経済、環境三つのカテゴリーに意見を集約した。
 中国の場合、近年の都市の外来人口を増え続いている。人を集めいている同時に外来人口による戸籍問題と城内村問題など都市問題をだんだん現れている。一方、地方には都会へ出稼に行く人を増え、家庭の分裂と農村部の子育て問題などを深刻になっている。
 経済面を考えると、中枢機能を都市に集積することによって、都市部には就職のチャンスを増えている。ゴローバルの影響で外国の資本の輸入し、都市の形を変え、都市中の店も商品も多様化になっている。しかし同時に、都市の過剰開発と知的財産に対する侵害行為など問題を指摘されている。
 都市の間と都市内部の諸関係を見ると、都市間の高速道路と鉄道などインフラ整備を整備さらたことで、大都市の間の連係が昔より密着になっている。大都市内部のインフラ整備も整えている、市内交通が便利になっている。一方、都市発展と拡大の同時に環境問題も深刻になっている。
 疑問と課題として、中国の行政実行の特徴によると、大きな都市開発プランを立って実行することがまだ可能である。しかし、ここまで実行したプランが市場の試練を通れるかどうかという疑問を持っている。それに、資本は流れやすい方向に流れていくから、都市は資本の性質により同型都市に変えていく傾向が見られる、同じような開発は元々都市の個性が無くしていく可能性も考えられる。


<総合司会コメント>
国の製造業が衰退することや、中枢機能が特定の都市に集積することで、私たちの生活に及ばされる影響はどのようなものがあるか、今回も前回と同じように日本人チームと中国人チームに分かれて議論した。
 日本人チームは、製造業の衰退により、公害がなくなるといった環境面と若者の職業選択の悪化といった社会面への影響が挙げられた。また、東京での事例を考え、製造業の衰退につれて、若者の流出により地方の衰退が発生した。グローバル化により、若者とエリート外国人の奪い合いなどが考えられる。 
 中国人チームは国の製造業が発展することを前提として、我々の生活に受ける影響を大都市と地方それぞれの視点から人の面・経済面・環境面に細分化して議論した。結論として製造業の発展により、生活が便利になる一方で、社会排除、過剰生産リスク、偽物問題も発生している。グローバル化によって中国は多核化しており、都市の個性化もなくなる恐れがある。
 今回、両チームが自国の事情に踏まえ、製造業の変化と都市に機能集積により、我々の生活が受ける影響を挙げていた。共通点もあれば、国によって相違点もある。
2015-06-19 18:52 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第5章 生産者サービス

第5章 生産者サービス

◆生産者サービスについて
・生産者サービスと金融の在り方の変容、先進工業国の経済と国際化で担っている役割の変化
→➀産業の生産、➁経済における役割、➂市場よりその性質をみる必要性
・生産者サービスの中でも中心になっているのは、企業向けの市場と消費者向けの市場が混在する産業。
・生産者サービスの利用者は、最終消費者ではなく、民間・公共問わず組織である。

本章で分析したいこと・・・生産者サービス産業の成長力、立地パターン、集積・専門特化・規制緩和の関係

特に筆者が気になること
➀生産者サービス産業が集まる地域には、企業同士が密なつながりをもつ地域的複合体ができるのだろうか
➁金融センターには産業の中心地とは異なる生産者サービスの複合体ができるのだろうか
➂サービスの専門特化が進むことは、生産の標準化やグローバル規模への市場拡大を支える情報通信技術の発達とどう関係しているのか
➃規模の経済性や多角化の経済性が可能性として存在していることは、生産者サービスの配置のされ方にどう影響しているのだろうか
➄生産者サービスには先端的な通信技術が必要だが、この必要性はこういったサービス立地パターンにどのように影響しているのだろうか
➅特定の地域への集積が進む中で、中心的な諸機能が置かれる場とはいったい何なのだろうか

◆サービスというカテゴリー
・新古典派経済学やケインズ経済学・・・モノ(財)の生産とサービスの生産の差異は看過されてきた
・最近のサービスに関する研究・・・新産業経済という概念を用いた分析が多い。
・ガルブレイスとフックス・・・生産者サービスの概念、経営管理の技術的な基盤研究の先駆け
・ドゥロネとギャドレ・・・サービス産業の成長が生産の過程で使われる中間投入財あるいは補完的な投入財としてのサービスへの需要拡大と関係しているという見方、消費サービスの需要拡大がサービス・セクターの初期の成長をもたらしたと説明。
・生産様式の変化への着目・・・専門サービスの需要増加
・現代社会を支える基盤での研究・・・多くのサービスを必要とする生産様式とサービス技術の近代化と産業化を重視する姿勢。情報の発展様式が制度や経済の基盤に。

†成長と専門特化
・注目すべきサービスの区別・・・需要に応じてサービスが生産される受動的な視点と供給にとって決定的に重要なサービスとしてみる能動的な視点。
→マーシャルらの研究
・企業の規模拡大・複雑化・多角化・・・機能の細分化による地理的な分散→本社の機能の複雑化
・生産サービス産業の発展・・・例:アメリカ企業における多国籍企業の躍進
・サービスの専門特化・・・市場の規模が拡大すると、生産者サービスで専門特化が進む
→生産者サービスに投入される財が専門特化する一方で、生産者サービスが生み出す財は標準化する
→1980年代~グローバル経済の地理的な特徴と構成要素の変化・・・専門サービスの投入財としての需要拡大、技術革新の必要性の増大。市場への極度の集中。


†立地と集塊
・1980年代・・・消費者サービスは生産者サービス以上に均等に分布しており、全社は中心地域と周辺地域での立地に大差はないという研究結果
→最近では、中心地域と生産者サービスの専門特化には高い相関性がある
→生産者サービスの置かれる場所が集積するのは、他の生産者サービスとの近接性が重要
・技術の発展・・・消費と生産は時間的にも空間的にも切り離され、モノの生産のように、サービスが生み出される場も一か所に集中するようになった
⇔集中が進む一方で、地理的な分散も進んでいるという二重の傾向
・グローバルシティの諸機能・・・技術・規模・経済の組織構造から考える必要性
・どこに本社を置くか…情報の多様化による質の問題

◆金融は空間的にどう構成されるのか
・金融市場・・・サービス市場での価値の特徴と異なる、政府の規制に大きな影響を受けている
→規制、制約の多様化が金融の技術革新が生み出されるようになった
・金融の特徴・・・➀国家の規制の制約、➁産物がモノではないため可動性が高い

†金融サービスの国内立地パターン
・規模と多角化の変更
・トップ企業の依存・・・空間的な集約
・地域特化の経済・都市化の経済・・・例:ロンドン

†デジタル化時代―分散より集積?
・金融業が急成長した結果による、特定のセンターに企業や市場の集積
・金融の集積が起きている都市の減少⇔グローバルなネットワークに組み込まれる金融センターの増加
 
・地理的に分散化が可能であるはずなのに、主だった金融センターの市場占有率の増加
 なぜなのか?
➀社会的に連続性と中心機能の重要性
 筆者の研究によると、
  (1)情報技術の恩恵を最大限に活かすためにはインフラ以外の資源も必要である
  (2)一般化されていない入手困難な情報の入手には、社会的インフラが必要である
→専門知識・技術と社会的な結びつきが金融センターにあるため、技術によって可能になるつながりを企業ないし市場は最大限活用できる

➁国境を超えるネットワーク
 ・グローバルな市場統合による重複システムの廃止・・・協力体制の複雑化、金融センターの重要化
→こうした中、金融センターを越境的に結ぶ新しいタイプの「合併」が生まれる
  (1)一握りの市場のみを結びつける複数の電子ネットワークが統合されるもの
  (2)金融市場の間で築かれている戦略的な提携
⇒金融センターは単に競合しているわけではなく、互いに協調しあい、分業が成立している

◆中心性が作られる新しい形態
・地理的な分散を可能にする組織形態や技術⇔先進国の経済システムには中心が存在
 ↓その背景とは…
・企業の3つの立地パターン
 ➀複雑な契約や下請け、ネットワーク化された供給者を必要としない、専門特化した製品やサービスを売る企業・・・システムの統合を維持できる範囲での立地
 ➁グローバル経済に深く関わっており、かつ複雑な本社機能をもつ企業・・・生産拠点への集積が有利に働き、ネットワーク化が進んだサービスセクターがあれば立地はどこでもいい
 ➂サービス企業の非常に専門特化したネットワーク・・・同業他社との密接な関係から抜け出すことができず、場所に縛られている

・再編された中心地の地理的な4つの形態
 ➀商業中心地区
 ➁中心の広域化、脱領域化
 ➂領域に縛られない「中心」、一部はデジタル空間
 ➃電子空間

◆まとめ
・現段階での金融業の特徴・・・専門サービスが生産に必要な中間投入財として成長してきたこと
              国内外の企業・政府が専門サービスを買える市場が発展したこと

問題関心・・・➀生産者サービスの空間がどう構成されているのか
      ➁生産者サービスが都市とどう関係付けられているのか

要点
➀都市では専門特化が進み、集積の利益が成り立っているため、都市への立地が好まれるようになった
➁生産者サービスの生産・供給に関わる新しい情報技術は重要性を増してきているが、その結果、地理的分散だけでなく再び集積が起きている
→活発な社会的つながりから構成される緊密なネットワークの重要性
➂主要な生産者サービス企業はグローバル企業にサービスを提供しているため、都市のネットワークの中で事業を展開することが増えている

◆論点
 本章では生産者サービスの発展や立地の変化、専門特化について見てきたが、そのような変化と人々の移動や生活、労働環境にはどのような影響があったと考えられるだろうか。また、人々がそのような変化を感じる機会はあるだろうか。
(前回の製造業の場合と比較したり、これまでの議論を思い出しながら考えてみたりしてもいいかもしれません。)
2015-06-18 16:09 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第4章 金融業の国際化と拡大

第4章 金融業の国際化と拡大

金融業では、1980年代初頭を境にして規模や組織が大きく変わり、金融商品と金融サービスの需要と供給にも急激な変化がみられた。

▼ 条件/背景?
①規制緩和による国内市場の解放。
②主要金融機関の市場への参加が増えるにつれ、莫大な資金が市場へ流入。  
ex) 保険会社、年金ファンド、信託銀行など
③イノベーションが開発され、莫大な金融資産が市場性の高い商品へ転換。

▼結果
⑴ 金融業の規模は拡大し、取引のペースが早くなった。
⑵ 金融業界全体に占める銀行融資の割合が劇的に減った。
⑶ 債券や株式に加え、非流動性の商品を市場に売り出す。

▼本章の目的
以下の四点を中心に金融業の変化(規模・構成)を具体的にみていく。
⒈ 証券投資家と機関投資家の重要性の高まり
⒉ 国際的な株式市場の形成
⒊ 1980年代に日本の投資家が担うようになった新しい役割
⒋ 1990年代の大規模な金融再編

成長の条件と要素

1972年以降、国際的な金融活動は全体的に高い成長率を維持してきた。
> 1972—1985年
資金源:原油価格の高騰に伴って増えた石油収益である。
資金: アメリカの巨大多国籍銀行によって扱われている。
> 1980年代〜
資金源:国際的な証券取引が飛躍的に増えた。
資本: 先進国の間でのみ、行き交うようになった。
国際金融市場
> 1960年代
 ユーロカレンシー市場が国際金融市場としてはじめて登場した。
> 1970年代初頭まで
 国外に支店・子会社・営業所を作り、海外で事業を展開するノンバンクにサービスを提供する。
 ただし、多国籍企業が台頭し,情報通信技術が発達したことで、国内銀行の海外支店は存在意義を失った。
> 1976年—1980年
 国際金融の重要な要素として現れたのが、オフショア金融の拠点とユーロダラー市場である。
→国内市場に特有の規制や制約が回避されるようになり、銀行資本の流動性が高まった。
> 1980年〜
 1982年の第三世界累積債務危機により、アメリカの多国籍銀行の地位は揺らぎ、国際金融活動における銀行のシェアーは激減し、貸付の多くは証券市場を経って先進国間で行われる。
 証券会社と金融サービス会社は、国際金融市場を支配する最も重要なノンバンク金融機関として国際金融に関わる幅広い経済活動をカバーしていた。

→ノンバンクが背負い込んだリスクは未曾有。成長を支えていた投機の水準は極めて高くなった。世界的な規模で統合が進んだという事はブラックマンデーやメキシコ危機(94-95年)、アジア通貨危機(97年)、ロシア財政危機(98年)が世界的な連鎖の中で起きたことを意味する。

国際的な株式市場の形成

▼ 形成
>1980年代以前
・株取引のための国際市場は存在しなかった。
・国際資本投資の規模が小さく、極限られた証券取引所でのみ行われていた。
・海外株式に上場している株式へアクセスは制限された。
>1980年初頭から
・株式と債券の国際取引は飛躍的に伸びてきている。
・国境を超えた株取引が増え、規制緩和と大口の機関投資家が投じた巨額の資本を背景にし、国際株式市場まで形成された。
▼ 目的
→買う側:よりよい株価収益率が見込める他国の株式市場に転がっているチャンスを利用する
→発行する側:潤沢な資金と新しい投資機会の獲得
▼ 拡大
 世界ほとんどの株式市場の規模が大きくなり、価値の急騰によって投資家が自国以外の株式市場に惹き付けられた。
▼ 株式市場起伏
 1980年代に一気に進んだが、1990年代に差しかかる頃に減速した。1900年代中盤・終盤には、幾多の危機を迎えながらも資本化は再び加速した。
▼ 株式市場の成長における傾向(1999年まで)
 ① 多くの国で株式市場は拡大した。
 ② 世界の株式市場の時価総額に占めるアメリカの割合が減った。
 ③ 時価総額が増えたものの、一部の決まった市場に集積した。(米、英、日)

金融の証券化

▼ 証券化
 多様な金融資産や債務が売買可能な証券へと転換され、仲介のない直接取引ができること。
▼ 求められる条件: 新しい金融イノベーション
▼ 証券化した結果: 多くの金融商品の誕生
  →以前より広い市場が必要(国内規制緩和・国際化)

→投資信託などの金融機関が市場でのシェアーを増やす一方、国際的な銀行融資は金額もシェアーも大幅に減っていた。
→国際的な資本市場で主な金融商品は、普通社債やシンジケートローン、多彩なユーロ商品である。

グローバル資本市場のいま

・国内金融市場の規制緩和
・国際資本のフローの自由化 →金融市場の驚異的な成長
・コンピュータと情報通信技術の普及

▼ 本節の討論
 金融市場の成長:金融の歴史が新たな段階に達したか/今のグローバル資本市場の国民経済に占める構造的な比重が、以前にも増して大きくなったのか

▼ 1980年—<金融時代の開幕>
特徴:イノベーションを生み出す推進力
今日の金融:
⑴市場取引が行われる場は、一定の地域に集中。
⑵金融商品とその実際のもととなる資産との間に距離のある商品の増加。

▼ 筆者の観点
 現在グローバル資本市場とWWⅠ前の金本位制の時代と重要な違いが三つある。
⒈年金ファンドや保険会社などの機関に、市場を支配する力が集まってきた。
⒉新しい情報技術がもたらす金融市場の属性-速さや瞬時に通信ができる。
⒊金融イノベーションが爆発的に増えた。

金融危機

▼ 資本市場のグローバルな統合 ―<諸刃の剣>
1990年代に経済成長を促すもの ⇔ 東アジア諸国で経済危機の発生

▼ 東アジア通貨危機
 背景
・資本市場のグローバル化な統合によって債務過剰を引き起こし、投資家たちは東アジア諸国の市場に1990年代初頭になだれ込み、経済危機が起きると一気に退散したため、好景気が崩壊した。
・商業銀行の衰退にかわる証券業界の台頭。この業界がもつ技術的な機能も向上した。
・資産の管理・運用によるヘッジ活動が積極的に行われるようになった。
・銀行は証券界に対抗するのではなく、長期的な成長予測を受入、資本の流入を増やす事
で金融情勢の変化を促した。投資のリスクや質を全般的に軽視する傾向を広め、資本の流出に一役をかっていた。

→市場における金融機関の自己規律の欠如が「モラル・ハザード」問題として浮き彫りになった。

▼ 金融危機からわかること
・資本が移動しやすくなるなかで、国内政策の自律性が弱まっている。特に、発展途上国。
・国内機関投資家の強固な基盤(年金ファンド、保険会社、投資ファンドなど)を発展させることが重要。
・金融システムを自由化させ、資本の可動性が高まる国が増えるなか、資本の流出入の管理は以前にも増して複雑になってきている。
・これまでの経済危機は、先進工業国より発展途上国にたいして甚大な影響を及ぼしてきた。


まとめ

70年代                  
主導 銀行業務を行う多国籍銀行        
分布 発展途上国(資本提供・公債の提供)
オフショアバンキングセンターの設立の発展
80年代
主導    投資銀行や証券会社
分布    先進国(資本の輸出・輸入)
       主要都市が金融センターとして成長したため、資本がオフショア銀行から本国に戻された。

本章の分析にとって重要なポイント
→市場と金融センターの重要性が、金融再編と同時に高まっていったこと。

金融市場:需要・供給の役割を果たす。
主な金融市場:従来と異なる第二タイプの経済活動が活発になった。
 (極めて投機的な金融商品の売買、新しい商品の実験)

→銀行の提供するサービスの範囲を超えた。「有用性」の捉え方も変化した;
 有用性の高い商品の市場は規模・範囲が広くなると共に、複雑になった;
 多様な専門企業や膨大な取引に対応するだけではなく、金融商品をより生み出すための
進んだ機能を支えるようになった;
 技術・資本集約的な経済活動を行うことで、金融業の価値はいっそう高まっている。

→仲介機能を持っていた銀行のメカニズムが単純なのに対し、金融市場は複雑で、競争が激しく、革新的でリスクが高い。仲介機能が銀行から金融センターへ移った。

【論点】
金融業の国際化と拡大によって資本のフローは、世界的に自由化が進み、主要都市(ニューヨーク、ロンドン、東京、香港et)が金融センターとして成長してきた。
 こうした都市は富裕層にとってショッピングや投資、投機など魅力的である。しかし、現地の一般市民は、金融の国際化と拡大に伴い、日常生活にどのような影響を受けているのか。

<中国人グループ>
 論点については、金融業の国際化と拡大によって主要都市が金融センターとして成長してきたことは富裕層にとって魅力的であるのに対し、一般市民の日常生活にどのような影響を与えているかについて①「プラスの影響」と②「マイナスの影響」の2つに分けて討論した。
 また、①と②を「生活」「人口」「金銭」という3分類にグループ化し、分析ができた。「生活」グループはプラスの影響が多くみられた。「都市開発による都市全体の便利性の上昇」、「ライフスタイルの多様化」などが挙げられた。マイナスの影響として考えられるものは「都市原住民のコミュニティの崩壊」、「競争の増加」である。「人口」グループは、人口の増加による「エリートの集中」がプラスの影響として挙げられる一方、「差別」「人ごみ」というマイナス影響も考えられた。また、「金銭」グループはマイナスの影響が目立った。その中で「所得格差」、「貧困問題」などが特徴的であった。また「就職チャンスの増加」といったプラスの影響が挙げられた。
 金融市場のグローバル化に対抗するNPO、NGOといった組織が必要であると結論付けた。

≪総合司会のコメント≫
金融の国際化と拡大に伴い、現地の一般市民の日常生活にどのような影響を与えているか、今回もまた日本人チームと中国人チームに分かれて議論した。
日本人チームは、東京での事例を考え、一般市民の受ける影響と実際に日本に外資を流し入れた人々が受ける影響に分けた。そこで、外資系企業やグローバル化の流入により、長期的なスパンで物事を見る視点が欠け、短期間で利益を上げる視点が重視されるようになったことが結論づけられた。
中国人チームは、特にモデルを設定せず、一般市民が受けるプラスの影響とマイナスの影響について議論した。一般市民が受ける影響を生活面・人の面・お金の面に更に細分化していた。結論は、結果的には便利になるけど、格差がより広がることになるので、NGO,NPOの民間組織がより重要になってくるというものであった。
今回は、日本人チームも中国人チームも、一般市民が受ける影響について挙げていたが、文化の違いで差が出るかと思われたが、実際は挙げた項目には共通性が高かった。グローバル化による影響は、日本でも中国でも同じように現れているのではないかと考えた。
2015-05-29 20:17 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第3章 対外直接投資の新しいパターン

第3章 対外直接投資の新しいパターン

資本の再配置を示す指標のひとつ:「対外直接投資指標(FDI)」

○本章の目的
対外直接投資はどのようなパターンで、どのくらいの規模で行われているのか?どういった国が関わっているのか?を明らかにする

対外直接投資のおもなパターン
対外直接投資の基本的なパターンは変化している
<パターン1>
1960s,そして特に1970s
先進国による対外直接投資が飛躍的に増える
1980s, 1990s
これを上回る規模で国際的な金融への投資が行われるようになる
<パターン2>
一握りの国が投資の多くを独占する傾向が強まってきている
<パターン3>
1980年代にはサービスへの対外直接投資が、製造業や資源抽出産業への対外直接投資を上回る勢いで伸びた

対外直接投資の内訳の変化
1950s(対外直接投資が、資本がどこにありどこに流れていくのかという点で評価されていた時期)
大部分は原料などの一次産品や資源をもとにした製造業に集中
1980s
技術集約的な製造業やサービス産業がターゲット
1990s
サービス産業が全体の半分を占める。
そのうち3分の2が金融と貿易活動の経済活動に注がれていた
1999 4兆1000億ドルにもなる対外直接投資ストックの60%をサービス産業が占める

対外直接投資の定義
「企業の経営管理における発言権の獲得を目的として、投資家が自国以外の国で事業を展開している企業にたいし、永続的な権益を得るために行う投資」
―『国際収支マニュアル』(IMF 1977)より
→「外国人の所有」とする外国人・外国企業による出資金の基準がない
OECDによる指標を用いると、各国のデータが比較できる。
単一の投資家による出資率が10%以下であっても、その投資家が事業にたいして一定の発言力をもっている海外関連企業や、政策決定への参加、経営者の交換など、さまざまな指標を対外直接投資に入れるよう推奨
→対外直接投資であるのか判断しにくい事例でも、どういった場合が「外国人ないし外国企業による所有」なのか明確になる。

議決権をもてるほど株式を所有しなくとも、対外直接投資は成立しうる。
大企業:株式をたくさん保有する必要は必ずしもない。
→株と無関係な契約上の取り決めを通す
株式保有と結びつかない形での支配は、サービス産業にとって海外投資とはなにか理解する上でとくに重要になる。
(海外へのサービス提供は株式保有という形をとらない場合が多い)

株式保有がゼロの場合も対外直接投資としてみなすと、分類上の問題が生じる。
対外直接投資ストック:株式と負債を計る指標
対外直接投資から生じた収益は、株式投資や債権投資の利益として定義
→株式保有がゼロの非金融無形資産から得られる収益とは区別

世界の対外直接投資ストック:年々額は上がってきている
対外直接投資のここ20年間の動きから見えるパターン
1.先進国が発展途上国へ投資する
1970s   対外直接投資は軒並み増加(特に輸出用生産への投資)
それ以降  投資の増加率は減少
1990s以降 先進国への対外直接投資の増加
2.アメリカの地位が急転
~1979 対外直接投資を積極的に行う主要国
1981  対外直接投資を受け取る代表的な国に
(1984,1986 世界中の対外直接投資のうち50%がアメリカに流れる)
3.日本が世界の対外直接投資で果たす役割が増した。
1985には対外直接投資を行う代表的な国に成長していた
資本の輸出国として旧西独、蘭、仏といった欧州資本輸出国を圧倒
1990sはバブル崩壊により大きく落ち込む
⇔1980s,1990sを通して対外直接投資の主要受入国になることはなかった
4.対外直接投資の対象が変わった
1988~1997 第一次産業への投資は半減
サービス産業への投資は先進国・発展途上国ともに増加
製造業への投資に大きな変動はなし
対外直接投資の割合が高いものは金融業、つぎに貿易業
先進国:対外直接投資を最も多く受け入れる経済セクターが金融業と貿易
発展途上国:不動産業と化学産業へ投資される額が最多
5.世界的に見て対外直接投資がかなり集積する傾向にある
1984 全世界の対外直接投資ストック合計の65%が米英日で占められる
1997 発展途上国への対外直接投資は-4%
   先進国   +68%
先進国への投資のほとんどは先進国が行っている。
6.対外直接投資の大半を握っているのが先進国の多国籍企業
1980s初頭 対外直接投資の97%は多国籍企業によるもの
自社の海外関連企業に投資する多国籍企業の数は6万社にまで膨らんでいる。
こうした企業の多くは中小企業
7.国境を越えた企業の吸収合併(M&A)が増えた
現在の対外直接投資のほとんどはM&Aから生じている
大抵の場合は先進国間で行われている
近年、発展途上国でも民営化や規制緩和が進んでいるためアジア・ラテンアメリカの特定の国には対外直接投資が新たに始まっている。

国際的なサービス取引
国際化の進み具合は、企業の売上総額に占める海外売上高を一つの指標として考えられる。
例:米国でのサービス産業は急成長し、国内経済におけるシェアも増加
  しかし、国際的なサービス取引の割合は低い
輸出入ができないサービス(non-tradable)は、生産された場所で販売されなければならないものであることが多い
→国境を越えたサービス提供が対外直接投資という形をとる

サービスの国際取引の計測方法問題
サービスの国際取引と投資額はじっさいよりも少なく算出されている
→投資額の場合、対外直接投資額を出すときに、株式が関係しない取引は計算されない
「国連多国籍企業センター」(現在は廃止):的確なデータ収集
→関連企業の販売と付加価値を計算することと、対外直接投資の算出が一致していることが明らかになった

「関税と貿易に関する一般協定(GATT)のサービスに関する交渉グループ(Group of Negotiations on Services)」
:サービス貿易における原則やルールの基本となる定義上・統計上の問題を重視
「サービス貿易に関する一般協定(GATS)」(1994)
:サービス貿易を4つに分類・定義
1.越境取引(ある加盟国から他の加盟国の需要者へ提供されるサービス)
2.国外での消費(ある加盟国の領土内において、他の加盟国の需要者へ提供されるサービス)
3.商業拠点(ある加盟国のサービス企業によって、他の加盟国にあるビジネス拠点を通して提供されるサービス)
4.人の移動(ある加盟国の個人が他の加盟国へ移動して提供されるサービス)

サービスの国際取引も実際には様々な形がある。
→対外直接投資と越境取引がおもな形
越境取引:唯一「商品貿易」という形をとる取引
サービスの売る側・買う側どちらにしても、人の移動がサービスの国際取引に不可欠であることが多い。
例:旅行
海外の関連企業を介して提供されるのが一般的なものもある
例:ホテル、個人向け銀行サービス、レンタカーなど
ライセンス提供やフランチャイズ契約などの株取引でない形をとるものもある
例:法律や会計などの専門サービスのやり取り
製造業や第一次産業に分類される多国籍企業でも、関連会社がサービス関係というパターンは多い

「海外へ提供されているサービス」の判断基準
1.サービスを提供する外国に生産者側が滞在する場合でも、一定の期間内であるか
2.多国籍企業が海外支社をつくる時、支社に必要な「資源」を送るが、そのなかに管理者や従業員の派遣が含まれていないかどうか
3.提供されるサービスの性質がどうなっているか
4.ルートがどうなっているのか

まとめ
国際的な取引に関わる地域の地理学と取引の内容は根本的に変化している。
米国が対外直接投資の主要受入国になった
日本は対外直接投資の純輸出国として台頭してきた
対外直接投資の内訳における変化
サービス・セクターへの投資が急激に重要性を帯びてきた。
サービスをめぐる国際的な経済活動のうち、70%もの活動がほんの一握りの国によって行われていた。
とくに、日本・アメリカ・イギリスへの集積が目立つ

本書の問題関心において興味深い点
1.サービスの国際化の中心にいるのは多国籍企業
2.専門職サービスを提供するおもな企業では、海外売上による収益が総収益の相当な部分を占める

こうした対外直接投資のパターンを通して、国際投資の再編が見えてくる。
1970s さまざまな地域への対外直接投資増加は、生産の国際化にとって重要
1980s,1990s 金融のフローが一気に増加
集積の度合いも1970sを上回る
→「集積構造」の再編も読み取れる。(次章)

【論点】
近年では、発展途上国への対外直接投資も伸びてきている。
発展途上国の中でも、対外直接投資の伸びている国/まだ伸びていない国があると考えられる。
今後発展途上国が対外直接投資を伸ばすためには、どういった要因の関わりあいが必要だと考えられるだろうか。


〈日本人グループ〉
発展途上国が対外直接投資(FDI)を伸ばすための要因について考察するために日本人グループでは、発展途上国が先進国からの援助などを契機として自国の経済力を底上げし、それによって対外直接投資を実際に行えるようになる、という時間軸を想定しそれに沿って議論を行った。
まず、第一段階の前提となる部分で、先進国から援助を受け、資本投下を引き出すための準備段階では、発展途上国がなぜ対外直接投資を志向するようになるかについて議論した。そこでは、やはり発展途上国には先進国に対する憧憬が存在し、先進国を追いかけて最終的には対外直接投資を他国から受け取り、かつ他国に対し行うというような、対等な関係になりたいという思いがあるのではないかという意見でまとまった。
次に、第一段階は発展途上国が対外直接投資を行えるようになるまで、先進国からの援助に牽引される段階とした。この段階は何よりもまず自国の資本および経済力を底上げすることが重視されるという意見で一致した。そのためには製造業の発達と、製造業に関する技術的な教育や人材育成が必要であると考えた。
この第一段階を経て、安価に大量の製品を製造できるなどという点で、発展途上国の国際的な認知度が高まり、さらに先進国からの資本投下を獲得することで生産力が向上し、次の第二段階へと至るとした。
第二段階は、経済力を高めるとともに、対外直接投資を始めるにあたって具体的な取り組みが行われる段階であるとした。この第二段階にあたる意見が最も多く散見された。経済力については、GDPを高めるための具体的な政策が行われ、そのような中で経済力が引き上げられていくと共に、軍事力も拡張されることが考えられた。一方、対外直接投資を開始するために重要な点は自国の「グローバル化」であるという意見で一致した。グローバル化のためには、他文化への理解を深め、自国での意識変化を行うための教育が必要であるし、国どうしを繋ぐ役割を果たす人材養成のために、留学などの形で人材派遣が行われるとした。政治的経済的な政策としては、企業の民営化や規制緩和など新自由主義的な政策に移行していくことが考えられた。ハード面の取り組みとしては、インターネット環境の整備、モビリティ環境の充実といった意見が挙げられた。
最後に、第三段階は実際に対外直接投資が開始される段階であるとした。この段階では投資を行うことがステータスとなり、投資を行うための資本力も備わって経済的余裕が生まれると考えた。それによって、発展途上国からも多国籍企業が展開されていくことになるのではないか、という結論に至った。

【補足】
発展途上国が対外直接投資を行うための要因について考察する前に、現在発展途上国とはいったいどのような国を指すのか、どういった指標を用いて分類するのか、例えばシンガポールやタイ、韓国、中国などの国は、先進国と発展途上国のどちらに分類されるのか、といった議論を全員で考え、共有する必要があったのではないかと考える。また、今回考察した発展途上国が行う対外直接投資は、先進国が現在行っているような金融業や貿易業を主としたものと同じような内容になるのか、それとも現在発展途上国で割合の高い不動産業と化学産業への投資が加速されるのか、などといった具体的な議論にまで及ぶことができなかった。総合司会の方のコメントにあるように、発展途上国について考える場合でも、実際は先進国的な観点からの考察に終始してしまっているように思われる。今回のグループ発表で示したような図式はあまりに夢想的で楽観的に過ぎるかもしれないが、それをどうすれば実際生じている問題に引きつけていけるようになるのかを考察していくことが今後の重要な課題であると考える。

<中国出身の留学生グループ>
論点について、中国出身の留学生グループが自分の母国を発展途上国のモデルとして想定して、発展途上国が対外直接投資を伸ばすため考える要因を挙げていて、「競うこと」より「つながること」はさらに重要だと議論した。
まずはハード面の要因について、FDIを伸ばすために資本、インフラ、商品の品質の重視が必要と挙げられていた。そしてソフト面に関しては、主に技術、人材、政策、相手の国の文化の四つの方面から論議した。生産力を推進するために、技術の革新とサービス意識の向上に十分な考慮が必要である。グロバール化の背景で、さらに多様な人材が求められている。外国語の人材だけではなく、国境を越える専門技術者、法律の人材、流通の人材などは対外投資を伸ばすため無くてはならない条件である。政策面に関しては、やはり整える金融体制、政治環境が必要と思われる。相手国の文化を互いに理解することが対外投資の環境づくりには有利だと考える。それ以外に、先進国の支援も対外投資を伸ばすため考える要因の一つと挙げられ、資本面と技術面があり、ソフト面とハード面の両方も含めていると思われる。
対外直接投資を伸ばすと考える時に、「技術の革新」、「人材の育成」などは一見的に「競う」ために挙げられていたが、グロバール化の市場の中に「つながる」意味も持っていて、「競うこと」より「つながること」はさらに重要だと思われる。




≪総合司会コメント≫
今回の議論は、日本人チームと中国人チームに分けたが、この2つのチームに共通していたのは『過去5年間で名目GDPが世界5位に入っている』ことである。つまり、日本も中国も先進国に当てはまると仮定すると、今回の議論は、あくまで先進国の国民から見たものに過ぎない。中国は名目GDPで世界第2位になるまで、外国の大企業の製品に関わる工場において大量生産を行うことで国力を増強していたが、名目GDPが世界第2位になった今、技術も経済も先進国のトップに躍り出る程発達している。即ち、中国を最早発展途上国と定義するのは困難であると考える。日本人チームと中国人チームは、先進国チームと発展途上国のチームではなかったのである。よって、発展途上国が対外直接投資を伸ばすにはどのような要因が必要になるかについて議論したが、発展途上国が抱える問題や不安要素について考慮しきれていなかったと考える。両チーム共に「投資を伸ばす過程で先進国の援助も必要である」、「多方面における人材の育成が必要」と述べていたが、そもそも先進国の援助を受けたとしてもそれを活用できる土壌はあるのか、といった検討が見受けられなかったのは、発展途上国の人々の視点がなかったからの様に思えた。
2015-05-22 17:00 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第2章 分散と新しい形の集中

第2章 分散と新しい形の集中

1.グローバル化と資本の再編
グローバル化にとって重要な地域、産業、そして制度的な取り決めを明らかにし、それらが従前のものとどう異なるか考える必要がある。それには、「資本の移動」とはなにか知らねばならない。→資本移動の表れだとされている経済活動の地理的な分散だけではなく、①集中、②大量の資本の国際移動を通じて剰余価値を生み出しているものが再編されていること、③所有について分析しなければならない。
所有の多国籍化を進めているのはおもに、かつての産業の中心地からの資本流出、新興工業国への資本流出。これまでの研究では、資本の移動と「場所」の関わりは、場所を問わず移動できる資本の性質をもとに論じられることが多かった。ex.先進国から発展途上国への製造業の移転
しかし資本の移動は、移動しやすさだけではなく、技術的な条件も必要とする。→資本を移動させる技術であったり、世界中に分散した生産システムを支配し続ける力
資本の可動性が高まると、生産が行われる地域や金融市場のネットワークに変化が起こるだけでなく、経営管理や支配、生産・金融の新しい組織へのサービス提供を確かなものにしておくための生産への需要も生まれる。こうしたさまざまな生産がじっさいにどこで行われるかは、生み出すものの種類によって異なっている。⇔いずれもかなり集積する傾向にある。
資本の可動性が高まって影響を受けるのは生産だけではなく、雇用関係も再編される。→産業の空洞化の原因であり、結果でもある労働市場のダイナミクスや、輸出加工区に設けられた低賃金労働者を雇える飛び地という点から注目されてきたが、資本の可動性という視点で雇用関係を分析したものはない。

2.資本の可動性と集塊(アグロメレーション)
大企業が生産をグローバルな規模で行うには、ある種の経済的な国際体制が必要である。一般に、トランスナショナルな経済活動という新しいロジックは、多国籍企業という形をとって1970年代に姿を現し始めたといわれている。1970年代以降、製造・サービス・金融で資本がどういった形で動いたのか分析すれば、世界経済の編制のされ方と、その具体的な特徴が明らかになる。
製造が行われる場が地理的に広がりはじめたことは、1980年代を際立たせる特徴の1つである。資本移動という問題が前面に出てきたのも、この時代に地理的分散が起きたからであった。この年代から、海外で生産あるいは組み立てられたパーツが、総仕上げのために再輸入されることが増えた。→生産プロセスの国際化 工場が位置する国ではなく、資本を提供する国向けの生産が目的の場合には、対外直接投資は輸出向けの生産にたいして行われることになる。これは生産のネットワークが、先進工業国の企業によってグローバルに作られていることを意味している。
製造業の地理的な分散には、技術的な要因だけではなく、社会的な背景もある。技術面だけでなく社会的にさまざまな変化がおきたことで、分散が進んだということである。低賃金労働を最大限に活用し、資本家に対する労働者の力を補強するようなメカニズムが働くのを最小限にくい止められる関係が理想的である。「分散」にはこのような意味も含まれる。
資本移動を語るうえでポイントとなるのは、対外直接投資や吸収合併、ジョイント・ベンチャーを通じて、巨大企業による所有と支配が多国籍化してきていることである。
日本の今後の展開を読むには、日本の経済構造を考慮に入れた分析が求められる。→具体的には、日本で経済再編が進むなかで、①さまざまな製品の生産拠点は海外へ移り(衣料品や自動車部品など)、②重化学工業からハイテク・知識集約型産業への転換が起き、そして③日系の海外金融機関が設立されてきた。海外の日系メーカーで働く従業員が急増したことは、それだけ日本企業の国際化が進み、海外生産も増えたことを意味している。
企業の展開をコントロールしている組織の形はいくつかあるが、そのうちの1つは、世界中に散らばる海外関連企業のグローバルなネットワークである。
経済活動の地理的な分散は、生産だけではなくオフィス業務の組織編制にもみられる。オフィス業務の分散傾向がもっとも著しいのはアメリカで、イギリスでもだんだん表面化しつつある。ex.海外オフィスへの日常業務の移転
経済活動の分散が進んでいるもう1つの分野はサービスであり、専門的な起業者サービスが国境を越えて提供されるうえでは、多国籍企業が重要な役割を担っている。→多国籍企業は企業者サービスを供給する側と必要とする側のあいだに立ち、両者を満足させることができるから
経済活動の地理的分散が進んでいる3つめの分野は、小売業である。→具体的には、経済活動の集積が進むなか、大企業が消費者サービスの販売に乗り出したことで、分散が促されている。大企業が入ってくるということは、消費者サービスの供給に規模の経済が発生し、その分野の市場が広がるかも知れない
経済活動の地理的な分散は、「成長の極」である成長拠点が置かれる場が変わったことを意味している。→成長する場が散らばってきている。⇔経済大国では、資本の余剰が生じるのは、所有や支配の多くを1カ所に集積させている経済セクターである。
大企業は規模の大きさを活かし、取引や流通にかかるコストを内部化できたので、資本の流通を邪魔するものは減り、利潤率を均等化することができる資本の能力は高まった。
分散した経済活動を支配するためには、計画立案やトップレベルでの経営管理、専門特化した企業者サービスなどを投入するシステムがなくてはならない。
1970年代には、世界中で新しい地域市場が開拓されたり、母国での規制を逃れて海外で金融取引が行われるなど、金融業で分散の傾向が現れた。製造やサービスとおなじく、金融業でも経済活動の範囲が飛躍的に広がり、第三世界も巻き込まれた。
1980年代に、債務問題が登場して、おもな金融センターへの志向性や集積がふたたびみられるようになった。→現在重要なのは、金融商品の売買を繰り返すことで、金融資本の流通を最大化すること

3.資本の移動と労働市場の形成
資本の可動性が高まると、労働市場の形成やグローバルな労働力の規制ははっきりと影響される。
経済活動の地理的な分散が進むなかで、生産が空間的・社会的にどう編制されているかも変わってきた。→「周辺」の労働市場が利用可能に
「周辺」では、労働が生産の段階に応じてこまかく差異化されたままである。→供給される労働力が今後も構造的に差異化されつづけていく
分散とは結びつかないのは、その地点で完結するサービス職
移民労働者の雇用は資本の可動性の替わりとして機能しているのではなく、むしろ資本の移動に伴って生じたもの→資本が国境を越えて移動することで労働市場は国際化するから←技術さえあれば誰でも採用される、労働者の移動にも影響
資本の移動から生じる労働者の移動には、非熟練労働者と専門職労働者の場合を別パターンで表している。

まとめ
資本移動とは、たんに場所を選ばず移動できること「資本の移動=地理的な移動」だけではない
①資本の可動性が高くなると、経済活動が地理的に分散するだけでなく、集積が新しい形で起こる。
②資本の移動は経済活動の地理的な分散をもたらすだけでなく、地域を形づくっているさまざまな関係をも変える。
今日の大都市の成長を理解するうえで、経済活動の地理的な分散と集積が同時に起きていることは、見逃してはならない。
こうした状況で分散が進んでいくなかで、「センター」が管理や支配を引きつづき行うには、新しい条件が必要とされる→実証研究

<論点>
論点①言葉さえ通じればどの国でも働けるグローバル化した市場において、専門職労働者と非熟練労働者の移動方法はパターンが異なると書いてあったが、彼らをそれぞれ移動させる動機は何か。Ex.待遇の良さ、充実した雇用
論点②経済活動の地理的な分散と集積の因果関係は、人々の日常生活にどのような影響を与えるのか。

<第1班>
論点①については、専門職労働者と非熟練労働者の2つのグループに分け、移動の動機の違いについて、社会的要因と個人的要因に分けて議論した。専門職労働者の移動の動機の社会的要因には、治安・待遇の良さ・労働環境・教育環境の良さといった「都市に関する魅力」のプラス要因、会社の方針・グローバル教育による洗脳といったマイナス要因が挙げられた。個人的要因には、地位・名誉・高い目的意識・やりがい・自己実現といった前向きなものが挙げられた。一方で、非熟練労働者の移動の社会的要因には、個人的要因には同郷者の存在・自分の生活のためといった後ろ向きなものが挙げられた。尚、非熟練労働者の移動の要因として、高賃金・作業の効率の良さが挙げられたが、これは生活に追われていると想定される非熟練労働者の最低限の要求とみなし、社会的要因にも個人的要因にも属さない要因とした。専門職労働者と非熟練労働者の移動の要因の最大の違いは、「最低限の生活が保障されており、高次元の自己欲求を満たしたい」か「生活に追われており、自己実現などを考える余裕もないかどうか」であると結論付けた。

 論点②においては、移動に伴う変化として、慣れるものと慣れないものに分けた。(仮に時間がかかろうと)慣れるものとして、慣習・言語・マナーをはじめとする文化の違いを挙げ、慣れないものとしては物価・選挙権がないこと・社会保障の薄さといった社会的権利を挙げた。慣れるかどうか個人差によるもの(考え方・人間関係・ストレス)はどちらにも属さないものとした。そして、それらの変化に対する反応として、専門職労働者は「慣れたらよい」あるいは「必ず帰れるのだから耐える」という肯定的な反応を示す一方で、非熟練労働者は「慣れるしかない」という消極的な反応を示すと報告した。この反応の違いの背景には、移動した経緯が生活に追われているかどうかによって異なる、故郷との距離感が存在すると結論付けた。

<第2班>
【論点1】
経営コンサルタントに代表される専門職労働者と、接客業などに従事する非熟練労働者における市場のグローバルな移動の要因として考えられるものを以下の3点を軸に分類した。①専門職労働者特有の要因、②非熟練労働者特有の要因、③両者に共通してみられる要因、である。労働者の移動を促す要因は、その職種を問わず共通であるものが多いと考えられ、3つ目の軸に該当するものが多かった。
また、3つの軸それぞれに見られる要因は「金銭」「職場」「社会環境」「自己実現」という4分類にグループ化できた。「社会環境」グループの要因は、両者に共通して言えることが多かった。非熟練労働者特有の要因として挙げられたものは、「職場」「社会環境」グループの中でも雇用機会に関するものが目立ったが、「自己実現」グループの要因は挙げられなかった。反対に、専門職労働者特有の要因として挙げられたものには、「自己の能力を発揮したい」「自己価値の向上」といった「自己実現」グループの要因が特徴的であった。

【論点2】
 労働者の移動に伴って日常生活で変化するものについて議論した。移動に伴い変化するものは、「今後も変化していくもの」と「今後変化しないもの」の2つに大別できた。
 「今後も変化するもの」としては、個人の能力・賃金・生活様式、家族との関係が挙げられた。唯一悪い変化だとみなされたものは、家族との関係のうち「親孝行ができない」という点であった。
 「今後変化しないもの」としては、新しい国の中での競争、他言語での生活、新規コミュニティでの生活が挙がった。これらは良い変化だと判断されたが、故郷を懐かしむ気持ちはネガティブな側面を持つとの意見も上がった。
 また、家族を除いたコミュニティの変化は、本人の努力次第で今後も変化する可能性を秘めている。これは一概に善悪の判断はできない。
 
<総合司会コメント>
今回の議論で一番難しいなと感じたのは、専門職労働者と非熟練労働者という聞きなれない言葉について、班員全員が同じイメージを共有することである。議論をするうえで、まず前提をおさえるのは当然かと思われるが、とくに非熟練労働者という言葉については、なかなかうまくいかなかったように思う。というのも、私たちが大学まで進学し、比較的専門職労働者になる可能性が高いライフ・コースを歩んでおり、本章で言われるような非熟練労働者との接触の機会をあまり持たないからではないか。それによるイメージの欠如が議論に反映されてしまったように思える。貧困やそれに関連するものごとについて議論するときにはいつも思うのだが、どうしても議論が机上の空論状態になる気がする。そしてそのたびに、自分とは違う境遇の他者についての理解がどれほど疎かになっているのかを思い知らされている。
2015-05-12 20:46 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第1章 本書について

第1章 本書について

1.本書の主題
・主題:都市と経済の関係性
「都市は経済によって形作られてきたといえる。」

・1960年代、経済活動が新しくなるとともに、特定の場所で世界経済の構造の変化。具体的には以下の3点。
①かつて有力産業の中心地だった都市の解体。
②第三世界のいくつかの国で産業化が急速に進んだ。
③金融業の急激な国際化を経て、世界中で取引できるネットワークの形成。
→都市と国際経済の関係が変化。

2.国際経済の変遷とグローバル・シティの登場
・W.W.Ⅱ以降
アメリカが牛耳る世界経済とブレトン・ウッズ体制(1944)によるグローバル貿易のルールが国際レジームを支える。
・1970年代初頭~
上記形態が崩壊、そこにアメリカの巨大な多国籍企業と多国籍銀行が参入。
→国際経済秩序の管理機能が企業の本社から流出。
・1980年代初頭~
アメリカの多国籍企業は第三世界の累積債務危機という問題にぶつかる。
アメリカ企業の対外国企業の市場占有率低下。
→グローバル経済を支える地理的条件や、グローバル経済の構成のされ方が変化する中で複雑な二重性 が生まれたが、これのおかげで国際経済は完全崩壊を免れる。
→大都市は新しい戦略的な役割を担うようになった(本書の出発点)。

・大都市は1980年代初頭まで、国際貿易・銀行業の中心であったが、この役割に加え、以下の機能も担うようになった。
①指令塔が密集する場。
②金融セクターと専門サービス・セクターにとって重要な場所。
③金融や専門サービスという主導産業における生産の場。
④③でできたものの売買の場(市場)。
→膨大な資源を支配する力が都市に集積されるなかで、金融や専門サービス・セクターは都市の社会的・経済的秩序を作りかえる。
→これが国際経済と都市の在り方に大きな影響を与えることになり、新しい都市(グローバル・シティ )が誕生。
→また、先述した都市の新たな4つの機能ができたのと同じ頃に、ニューヨーク・ロンドン・東京では、経済基盤・都市空間の構成のされ方、社会構造が大きく変化。
→歴史、文化、政治、経済すべてが異なる場所で同じ時期に同じことが起こるのは一般的にはありえない。…(1)

・グローバル・シティは、空間、都市内部のダイナミクス、社会構造というそれぞれ大きな意味をもつ要素が組み合わさって構成されている独特な場所である。

・世界経済の重要な骨組みがつくられるのは決まってグローバル・シティをはじめとする都市。
→その必然性を分析すれば、(1)が起こった背景や秩序が見えてくるのではないか?

3.本書のテーマ
・本書のテーマは以下の4つである。
①二重性
②二重性に基づく経済成長がグローバル・シティ内部の経済秩序にどう影響するか。
③経済の展開が各国の都市システムとグローバル・シティの国民国家への関わり方に同影響するか。
④新しい成長の形や条件がグローバル・シティの社会秩序に及ぼす影響。

4.本書への導入
・生産者サービスと金融の成長は、経済的な二極化の要因のひとつとなった。
→なぜこのふたつのセクターは急成長し、グローバル・シティに集積したのか?…(2)
→本書への導入として、この問いに対して説明する。

・1970年代以降、生産者サービスと金融が急速に成長、グローバル・シティに集積。
→1980年代に起きた成長は、製造業からサービス業への移行という経済の大きな流れに乗っただけであり、集積した原因は、サービス・セクターでは直接顔をあわせるコミュニケーションが必要だったから。
→しかし、これは間違ってはいないが、あたってもいない(サッセン 2008)。

・(2)を考える上で、「近代的な技術が登場しても、19世紀から行なわれていたような労働はなくなっていないこと」は踏まえておかねばならない。
→これを踏まえて考えると、(2)の背景にあるものが「グローバルな組み立てライン」だということに気付く。
→プランニング、内部管理、製品の開発・研究の重要性が増し、複雑になっている。経営陣トップに高度に専門特化したスキルが求められる。
→「生産者サービスに対する企業の依存が高まり、これがさらに、生産者サービスを売る企業間でハイレベルな専門知識を育み、発展させている」(Stanback and Novelle 1982: 15)

・高度な専門サービスへの需要が高まる背景には、経済活動の地理的分散や生産者サービスだけでなく、国際的な銀行の成長と、最近多様化してきた金融業も要因としてある。
→ここ10年で金融業が多様化・国際化した結果、グローバルに展開する金融を「管理」する機能がごく限られた大都市に集積、金融イノベーションも少数の大都市でのみ生み出されるようになった。

・グローバルなネットワークを管理し支配するためには専門サービスが必要である。
→多様な専門サービスへの需要がつくられ、高まった。

・企業を顧客とする高度専門サービス業は、生産者サービスのなかでも非常に重要な位置を占めており、この部門が伸びたことと生み出されているモノの性質を考慮すれば、管理する機能とサービス提供機能が中心に集積し、1980年代に大都市の好景気を刺激した背景が見える。
→ただし、集積した原因は、専門サービスを共に提供する企業の隣接と、そこで働く高所得層の大都市での生活への需要・要望の高まりである。
→生産者サービスと金融の成長が、もっぱらグローバル・シティのみで起きている背景。

5.本書の仮説
・今日の経済成長に大きく貢献している産業・地域・職種は、W.W.Ⅱ直後には中心的なものではなかった。
→衰退という深層構造の変化なくして、新しい成長はありえなかった(サッセン 2008)。
→1980、1990年代の経済の「高空飛行」を支えたものは、昔ながらの製造業を衰えさせたダイナミクスである。
→衰退と成長を引き起こしたシステムの連続性を本書で論じたい。

①製造業が地理的分散したために(これが古い産業の中心を衰退させた)経営とプランニング、これらが必要とする専門サービス(グローバル・シティの成長の重要な源)を管理する機能が中心に集積することになった。
②金融業でもとくに中心的なセクターは、他の産業(なかでも製造業)に悪影響を及ぼす政策・状況からたびたび恩恵を被っていたため、全体的に見ると、大都市では専門サービスが成長したが、それ以外の地域では経済基盤はゆらいだ
③①②を手がかりとすると、グローバル・シティとグローバル・シティがある国民国家、世界経済の関係が変わってきているといえる。
④成長が生まれる条件がこれまでと違う新しいものになった結果、グローバル・シティで階層が再編され、二極化が進んでいる。

6.論点
論点① 
サッセンは本書においてグローバル・シティのひとつとしての東京を論じようとしているが、東京について私たちはどのようなイメージを持っているか。
論点②グローバル・シティは確かに世界を統治する巨大都市であるが、周辺の都市とどのような関係性にあり、どのような関係性を持つことが理想か。

<第1班まとめ>
論点①
「こういう人がいそう」「こういう土地のイメージ」「経済的にはこんな感じ」というような「東京」のイメージは、メディアによって私たちに浸透しているように思える。ただし、それは、「東京」自体がそのイメージの発信を要求し、メディアがその役割を担い、私たちが受容することによって認識されるものではないか。そして、「東京」のイメージを持った私たちに、更なる「東京」のイメージを与えるべく、「東京」次のイメージ生産をし、メディアがその発信をするというスパイラルへと続いていくと考えた。
論点②
大阪を周辺都市として議論した。現在、東京は日本における政治・経済の中心であることに間違いはなく、大阪は圧倒的とは言わないまでも、都市としては東京に劣っている。つまり、東京ありきで存在しているようなものである。しかし、東京への対抗心ゆえ、大阪が都市として成長していることもまた事実であるから、東京は大阪から学ぶこともある。したがって、東京と大阪の役割をはっきりとさせることで同じ時間で得られることも2倍になるのではないかと考えた。具体的内容に関しては、時間の関係で議論できなかったが、東京が驕るのではなく、うまく住み分けをすることによって、日本全体がよくなるのではないかというひとつの提案である。
2015-05-10 18:44 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

2015年度前期大学院ゼミのテキスト決定

2015年度前期大学院ゼミのテキストが決まりました。
サッセン『グローバル・シティ』筑摩書房

このブログで、章ごとに内容紹介と論点(2つ)、その議論の内容を紹介します。
2015-05-01 21:14 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :
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