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終章Ⅰ 上からと下から ―都市を見る漱石の目、鷗外の目―

終章Ⅰ 上からと下から ―都市を見る漱石の目、鷗外の目―

キーワード
夏目漱石のロンドン 森鷗外のベルリン 上からの視点 下からの視点
遠近法空間と生きられた空間


【モダンの空間】
1970年代 空間論的転回が社会学に波及し、新都市社会学という大きな流れへ
→都市をモダンの現象として捉え、モダンの空間のありようと関連・再考する動き

ポストモダン論議の深まり
モダンの空間の認識≠「生きられた空間」から「遠近法空間」への発展主義的な二項対立図式
=「生きられた空間」と「遠近法空間」が併存しせめぎ合う両義的な地平
※グローバル化の深化に伴って浮上したグローカル化の位置づけと密接な関係

【「遠近法空間」と「生きられた空間」】
「遠近法空間」…空間の画一化・均質化
空間の「絶対性」を前提、「幾何学の連続的空間」として敷衍
→認識主体の視覚を至上とする遠近法主義と「全体化」の論理が支配
「単線的で同質的で連続的な空間」であるクロック・タイムと啓蒙の認識を構成
→国民国家の形成に貢献(国土空間の創出・人々の規律化)

「生きられた空間」…空間の内的差異・分節化
感覚的・質的に生きることで、様々な社会でたどられた経路・パターンを共有することで得られる「動き、近接性、特異性、知覚、象徴性、意味とともにある空間」
→非連続的で非同型的
範型は意味を運ぶものとして捉え、ルフェーヴルの空間認識で見出される

※「生きられた空間」論調の背景
グローバル化が進みヒトやイメージの移動と電子的メディアが決定的になるなか、人々が自分たち自身の社会のリズムや歴史以外に多くの空間があるという認識が背景に
→「遠近法空間」が社会の後景となり、「生きられた空間」社会の前景へ

モダンな空間→「遠近法空間」として捉え、「生きられた空間」を反措定として位置付ける論調×
両者がダイナミックにからみ合う地平で捉える論調が強調

※都市へのまなざし
「遠近法空間」として見据える立場=「上からの視点」→森鷗外『舞姫』
「生きられた空間」として見据える立場=「下からの視点」→夏目漱石『倫敦塔』

【上からの視点――鴎外の都市へのまなざし】
鷗外『舞姫』=「上からの視点」→都市を視覚的・静止的に捉える「鳥の目」に基づく
上から「他者」として客観的に凝視するまなざし
主客二分法に立脚した認識論優位の立場

【下からの視点――漱石の都市へのまなざし】
漱石『倫敦塔』→「下からの視点」→都市を聴覚的・触覚的に捉える「虫の耳、皮膚」に基づく
※都市の基調をなす動きや音に対する内的恐怖
都市を内側から描写する「都市住民」としてのまなざし
主客二分法を超えたところでの存在論的立場

【モダンの空間の両義性】
「上からの視点(認識論的立場)」と「下からの視点(存在論的立場)」のせめぎ合い
  →時代状況や知の動向によって強くもなり、弱くもなる
両者のどちらかが優位であるというような二項対立図式に委ねてしまことはできない

コミュニタリアニズムの議論→「生きられた空間」に焦点
新自由主義に基づく議論→資本のグローバルな展開とともに均一・均質な「幾何学的空間」が肯定され、「遠近法空間」に焦点
 →そうした線形図式に陥る危険性から脱却し、モダンの空間の両義性認識の中核をなす「上からの視点」と「下からの視点」の対抗的相補性の議論へ

【いま再び漱石の「下からの視点」を問う】
「上からの視点」が浮き彫りにした「外部空間」としての迷路的空間
  →「上からの視点」では「遠近法空間」の周縁としか捉えられない
  →「下からの視点」では「生きられた空間」として捉え、「遠近法空間」との繋がりを見出す
   内在的な関わりによって都市に対する総体的な認識が切り開かれる
    
 鷗外の「上からの視点」→「遠近法空間」は視覚的・静止的描写に依拠したため、都市の構造から乖離、一方向的に均一・均質に展びていく幾何学的平面に還元
 漱石の「下からの視点」→内面的恐怖とともに、「遠近法空間」で切り離された都市の構造が持つダイナミクス/躍動する生の豊かさを捉え、「遠近法空間」と「生きられた空間」の間にある相互に包み込み、包み込まれる関係を構築

【論点】
<論点1>
・普段、私たちは自分たちが住む都市の様々な空間をどのように捉えているのか。その捉え方が「上からの視点(遠近法空間)」か「下からの視点(生きられた空間)」かどうか分類してみる。
<論点2>
・本章では「遠近法空間」と「生きられた空間」を二項対立図式ではなく、対抗的相補性として両者を捉えようとする議論を深め、モダンの空間の両義性の認識を探ろうとしていた。そこで1つ目の論点で得た分類を活用し、現代の都市において「遠近法空間」と「生きられた空間」同士がどのような繋がりを見せているのか考えてみよう。

第1班
<論点1>
CIMG2836.jpg

このグループでは、自分たちの都市空間のとらえ方を具体的に出してみることにした。
まず「上からの視点」で出てきたのは、住宅街、商業地域、農業地域という土地の使われ方によるとらえ方、住宅地図、地図、衛星写真、山の頂上やビルという鳥瞰的なとらえ方が多く出てきた。そのほかには、行った事のない土地をネットのマップで調べる、人口統計で町の特徴をとらえる等の視点が出てきた。
これらは、都市を外から見る把握方法であり、まさに視覚優位の、静止的な都市のとらえ方であると言える。これらに共通しているのは、私たちの「上からの視点」であり、ランドマークとなる建物・目印、道路のつながり、土地の使われ方を、どの土地であっても同じ目線で、「何の違和感も抱かずに入り込み、しかも徹頭徹尾『上から』『外から』他者として見下ろすという態度」(テキストP215)で見ている点である。このような私たち自身の態度については、話し合いの中で確認できた。
 しかし、私たちの経験する「上からの視点」の中に、鴎外と同じような「上昇志向」を経験したかどうかを話し合う時間がなかった。神戸大学に進学して、キャンパスから神戸の街を見下ろしたときや、神戸大学の学生になって誇らしい気持ちで通学路を歩いたときのことを出し合ってもよかったと思う。
そうすれば、鴎外が感じた都市に対する「自負心」や「他者として利用する」気持ちなどが理解できたかもしれない。
 次に「下からの視点」では、経験に基づいて多くのとらえ方が出てきた。それらの点をさらに共通する観点で分類してみると、「人」と「環境」とに分けられると考えた。
 「人」では、都市に暮らす人(若者、高齢者の割合)、観光客の多さ、人の多さ、人の交流、着ているもの、幼少時代の経験などをあげた。視覚・触覚などの感覚で都市をとらえるという視点は難しいと感じた。「環境」では、町の臭い、町の雰囲気、動物・植物の存在、街の照明(明るさ)、商店の種類、人の話し声、神聖な場所の存在、鉄道・道路などの生活空間などをあげた。漱石が感じた「街が発する激しい動きや音に対する内面的恐怖」を感じる場合を検討すると、「環境」については、「快/不快」で考えてみる視点があるという意見が出た。そして、不快と感じる環境の中で、内面的恐怖を感じる人がいるのではないかと考えた。例えば、街の照明(明るさ)、町の臭い、鉄道・道路などの生活空間などである。これらはまた、人によって感じ方が異なる感覚である。しかし、あくまで「都市に住まう者」が感じる視点であることに違いないものをあげられたと思う。

<論点2>
CIMG2838.jpg

 現代の都市における「上からの視点」と「下からの視点」の繋がりを具体的な問題で考えてみようとした。ただし繋がり方には大きく二通りあると考えた。一つは、「上からの視点」と「下からの視点」がぶつかり合っている例であり、もう一つは、問題の解決へのつながりを見つけようとする例である。
 まず、ぶつかり合っている例としては、「総合病院の建設が患者・医師・地域のつながりの希薄化をもたらしている」場合があること、「高層マンションの建設が人口の密集を生み出したが、住民同士のつながりが弱まった」場合が多いこと、「市町村合併が古い地名を無くし、サービスの低下により生活の豊かさがなくなった」例があること、「地方都市に大学を誘致したが、若者のマナーの悪さが住環境の悪化をもたらしている」例があることなどをあげた。これらの例をグループで検討するなかで、それぞれの例の中に、「上からの視点」と「下からの視点」を見ることができるが、どちらかの視点がより大事にされなければならないというものではなく、実際には両方の視点がともに大事にされなくてはならないと考えた。現実の中では、「上からの視点」には都市の内部に生きる人びとの「研ぎ澄まされた日常感覚」が欠如しているといえる。
 さらに、問題の解決へのつながりを見つけようとする例では、「ホタルが住める川の環境を守ろうとする住民の取り組みを、環境保全の施政をアピールしたい行政が後押しする」例があること、「街灯のない道路を怖いと感じる住民の要望に、住みよい街づくり・防犯のまちをアピールしたい行政が応えた」例があること、「小学校の通学区域の再編で、面積や人口を基準に区域割りしようとする行政に対して、住民側から子どもの通学時間による疲労度や、昔からの地域や親や子どものつながりによる見直しを求めた結果、改善が実現した」例があることなどである。これらの例にみられるのは、「都市の内部に暮らす人びとの生活者の日常感覚」が生かされていることである。

第2班
<論点1>
CIMG2837.jpg

<論点2>
CIMG2839.jpg
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2014-12-31 16:39 : 『都市のリアル』(14年度学部ゼミ) : コメント : 0 :
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