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グローバル・シティ 第10章―新しい都市のレジーム―及びエピローグ

第10章新しい都市のレジーム―

グローバル経済は都市にどのような影響を及ぼすのか。


■国際的なビジネスや金融の中心になっている都市-ニューヨーク・ロンドン・東京-が,経済活動のグローバル化に応じて変わっていった過程。
⇒グローバル化の進展に伴い,経済を支配する力が特定の都市にのみ集積されたため,グローバルなネットワークを管理し,支配する基本的な役割も大都市に任せられた。

■金融と企業者サービスが異常なまでの速さで成長したことと,こうした成長が起きた場所が大都市に限られた理由?
・生産拠点が地理的に分散し海外でも生産が行われるようになると,この空間経済を管理したり規制をかけるための結節点の役割を金融・企業者サービスが担うようになり,特定の場所に集中するようになった。
・1980年以降経済的な重要性を喪失し,分散した生産拠点を一カ所で管理し,支配するために成長したのが,金融や高度専門サービスの中心地であった。
・大都市において,トップレベルでの管理,調整の役割が増加し,金融取引の拡大とかなりの額に上る海外直接投資が特定の地域に再び集積し,大都市で国際的な不動産市場が形成されたことで,高度な管理機能とサービス機能を備えた経済の中心が作られていった。

【第一部及び第二部】
1グローバルな管理・支配が実際に担っているのはどのような仕事なのか。
2大都市で生み出されている仕事は正確に言うとどのようなものであるか。
3経済がグローバル化したことで都市階層は変化したか。
⇒「生産」に着目して考察

■金融・生産者サービスの急成長,製造業の衰退
・大都市では産業複合体が形成され,それらの複合体の中でも,中心的な存在として伸びているのが,国際取引を手掛ける企業へのサービス提供に関連したセクターである。
・サービス関連セクターは1980年代以後商品セクターの様相を呈するようになり,この商品セクターに似たサービス・セクターにとって重要な市場として現れてきたのが,ニューヨーク・ロンドン・東京であった。
・三都市への生産者サービスと金融の集積が生じたが,それを単なるサービス産業の成長とみなすのではなく,経済の構造と組織のされ方が全体的に変化してきていることを理解する必要がある。
・生産者サービスに携わる企業が増加したことで,サービスの需要が高まり,サービスは社内で調達されるよりも,市場で購入されるようになるというような傾向は他の大都市でも出てきているが,地域レベルでの話にとどまっている。
・過去20年に及んだ経済再編はさまざまな点で複雑化した組織の需要に応えるサービス・セクターが増えたことと根っこのところでつながっている。こうして生産者サービスが伸びたからこそ,経済がサービス中心になった。
・以前は国民経済を牽引し,層の厚い中産階級の形成・拡大に貢献していた製造業の衰退の上に,新しい成長は成り立っていた。
・新しい成長の多くが,国民国家の弱体化のうえに成り立っている。

■三都市のトランスナショナルな関係
・グローバルな情報通信の時代にあってもなお,離れた場所に位置することが多い多様な企業・ブローカー・個人をつなぐ役割を各都市が果たしており,三都市もトランスナショナルな一つの市場として機能している。
・三都市は競争関係にあるわけではなく,資本の輸出(東京),処理(ロンドン),投下(ニューヨーク)のように,三都市が別々の役割を担うことで一つの役割を果たしている。
※日本が資本の輸出という役割を果たしていたのは昔のことであり,現在ではその役割は失われている。

■二極化
・社会構造の変化は,社会経済の二極化をもたらした。
・商品やサービスを生み出し,提供する企業においては競り落とす力で差が開いてきており,このことによって生産する側の企業にとり,グローバル・シティはますます生きにくい場所となってきている。
・生産コストを減らすための努力-下請け,低賃金・劣悪な環境での非登録移民の雇用など-が行われ,中心的なセクターで低賃金労働者が増えており,彼らにとってもグローバル・シティは住みにくい場所となっている。

■都市の空間編成の変化
・情報通信技術の発達を背景に,経済活動が空間的に分散されてきた一方で,この分散を可能にするために,中心に集められた諸機能は強化されてきた。(地理的分散/集積)
・グローバル・シティに集積したのは,分散した経済活動を管理するための諸機能だけでなく,イノベーションが生み出される場所もグローバル・シティに集まるようになった。
・情報通信技術が発達したが,未だに都市中心にある軸とのつながりは意味を有していることから,情報通信技術の影響はごくごく限られており,経済を構成しているものの多くがデジタル化されず,現在でも物理的な側面をもっている。

【第三部】
新しい産業複合体による経済活動のグローバル化が,都市の経済構造や社会構造に与える影響について。
■フォーディズム期
・フォーディズムの経済を支えていたのは主に,大量の消費者をターゲットとした住宅・道路・自動車・家具・家電の大量供給,大量販売であった。
・大量消費・大量生産に基づく製造業の発展と共に層の厚い中産階級が形成された。
・公共サービスのカバーする範囲が格段に広がった-公衆衛生システムの発展,公営住宅の建設。
・インナーシティ問題-郊外化の結果,三都市の昔ながらの中心地域に貧困層や弱者が取り残されていくようになった。
・制度的枠組みは維持され,労働組織率は上がり,労働者のエンパワーメントが進んだ。
・正規雇用で働く労働者の割合が最高水準に達し,賃金も上昇した。

■ポスト・フォーディズム期
・主導経済セクターはサービス・セクターへと移り,産業複合体において成長が起きている。
・中産階級が増えることはなく,所得格差が開き,企業の競争力や世帯の購買力でも差がついてきている。
⇒経済の二極化
・個人より,企業や政府による国際市場への輸出や中間消費といった,組織による消費のほうが重要になってきている。
⇒グローバル・マーケットが社会・経済を形成
・家族賃金が衰退し,男性がフルタイムで雇用されることが当然ではなくなった。
・パート,有期雇用市場の拡大。
・日雇い労働者やマイノリティ集団に属する労働者,移民労働者の増加。
・年功序列・終身雇用制度の崩壊。
・低賃金労働,スウェットショップ,家庭内産業労働の増加。

■新しいタイプの高所得層の出現,消費構造の変化
・ただひとつ,新しい産業複合体の恩恵を受けている階級が,新しいタイプの専門職・経営者・ブローカーであり,この数は三都市において劇的に増加した。
・彼らには消費力があるだけでなく,何を消費するのか選択肢が用意されており,高所得層向けのジェントリフィケーションとそこから生じる派手な消費が,イデオロギーとして働いている。
・投資額が低すぎず,高すぎもしない中間投資(株・美術品・骨董品・奢侈品)が恰好の投資ターゲットとなっている。→美術品市場の成長,奢侈品への消費の増加。
・十分な収入とコスモポリタン的な企業風土が合わさることで,新しいライフスタイルや新しいタイプの経済活動が営まれる魅力的な空間が出来上がった。

■ジェントリフィケーション
・日々の生活における芸術の重要性が高まってきている。(exうらぶれた倉庫を価値あるものに)

・現在の経済活動において,芸術家という職業が,不動産開発から奢侈品の消費に至るまで,潜在的なビジネスチャンスを実現し,利益を生むための装置になってきている。
・一方でニューヨークやロンドンでは,一昔前まで,入り口が固く閉じられたままの店舗や打ち捨てられたビルばかりだった場所が,今では商業地区や住宅地として栄え,コミュニティ一帯の環境が改善された。
⇒移民流のジェントリフィケーション

世界経済で指令を発する場,金融と高度な企業者サービスのイノベーションが生まれる場,そして資本にとって重要な市場というように,都市はさまざまな役割を担うようになり,その役割を果たすために,特定の諸都市が協力し合っている。そしてこうした諸都市は,金融と製造のグローバル化によって新しい形の集積が進む中で,戦略的な役割を果たしている。
また金融が牽引する経済成長から集積が起きた結果,さまざまな側面で新しい秩序が生まれてきている。大量生産が主流の時代には,公共財の供給と福祉国家が重要な意味を持ったが,新しい規範においてはその重要性は失われている。消費の規範は,直接的には金融や生産者サービス,これらが必要とする多様な産業サービスにおける労働を通じて,間接的には社会的生産の領域において,社会構造を目に見える形で変えている。

➡経済成長を決める新しい産業複合体と,産業複合体を構成し,再生産している社会政治的な形が両方そろう場が大都市であり,両方そろっているというところに,グローバル・シティの基本的な特徴がある。

―エピローグ―
■6つの論点
1グローバル・シティ論の枠組み
2金融に関する問題
3生産者サービス
4諸都市の関係
5グローバル・シティにおける不平等
6グローバル・シティでは都市空間の秩序が一新されたかどうか

Ⅰ.グローバル・シティ論
(ⅰ)グローバル化と均質化
■グローバル・シティ
・グローバル化は国家の外で生じているといった単純な現象ではなく,資本の流れを調節・管理し,そこで必要とされるサービスを提供する働き,そして多国籍企業や国際的な市場の多角的な経済活動に必要なサービスを提供する働きである。
・グローバル・シティでグローバル化を進めているのは,国の組織や国内企業などナショナルなアクターであり,グローバル・シティとはグローバル経済の鍵となるダイナミクスや条件が植えつけられたローカルな場ということになる。
・グローバル・シティは単独では存在せず,それぞれがグローバル市場やグローバル企業のうち,きまった市場・企業へのサービス提供に特化する傾向にあり,国境を越えて戦略的な場を結びつける役割を担っている。
・グローバル・シティたりえるかどうかは,国による規制緩和や公的セクターの民営化,国内企業・外資系企業と市場が都市をどのくらい経済活動の基盤にしているかで決まる。

■グローバル・シティの均質化?
・グローバル・シティの諸機能が世界中の様々な都市で発展しているということは,都市間の差がある意味なくなってきているとも言い得るが,発展中のグローバル・シティの諸機能はかなり専門的であるし,これに関わる機関も多様であり,この場合の「差の消滅」は,消費者市場やグローバル娯楽産業にみられる均質化や収斂とは大きく異なっている。
・グローバルな視座からみれば,あるシステムやダイナミズムやその具体的な形が複数の国にまたがっていることがわかり,諸都市が画一化していると捉えることにはならない。
・グローバル・シティにおける差の消滅とは,都市の均一化のことではなく,専門特化した諸機能が都市で発展したり,部分的に取り込まれるなかで,諸機能が大都市にもたらすであろう影響が似てきているということである。

(ⅱ)先行研究とグローバル・シティ論の違い
◇フリードマンとゲッツの枠組みとの違い
グローバルな支配能力の生産に着目することで,情報化経済の中にあっても,物理的な条件や生産が行われる場,そして特定の経済活動が決まった場所でしか行われないという「拘束性」が存在し,場所の必要性を明らかにした。
◇カステルとの違い
グローバル・シティをネットワークとして捉えるだけでなく,場(プレイス)としても認識し,ネットワークが特定の場に深く根付いていることを明らかにした。つまり,ネットワークやフローだけでなく,グローバル化の概念に場所性(プレイスネス)を導入することを重要視した。
◇「グローバル都市―地域(リージョン)」という概念
グローバル化を考えるうえで都市と地域を分けて考えること。
◇グローバル・シティと都市全般を概念上区別すること
グローバル・シティで生じている経済的グローバル化のダイナミクスや条件が都市内部で生じることは,都市全域で進んでいるわけではない。
◇グローバル・シティの諸機能という概念
グローバル経済の管理やグローバル経済に必要なサービスの提供という点で,専門性がかなり高い機能をもつ都市を見分けるため。
◇国際都市とグローバル・シティの区別
精緻な分析をするためにフィレンツェやヴェニスなどの国際都市とグローバル・シティを区別する。

(ⅲ)グローバル・シティとグローバル都市―地域
◇グローバル・シティ
・格差や権力といった問題を扱うことに適している。
・境界線がはっきりした入れ物としての都市ではなく,中心で起きているダイナミクスに焦点を当てることができ,そのダイナミクスが制度的・空間的にどれくらい広がり浸透しているかについても重視できる。
・競争よりも,越境的なネットワークや分業を強化するグローバル・シティの主導産業を重視。
・経済以外の領域―政治・文化・社会・犯罪など―で生じている越境的なネットワークの利用を把握できる。
◇グローバル都市―地域
・グローバル化を好意的に解釈できる。
・経済的な利益をより均等に配分するにはどうしたらいいか考えることに適している。
・広い領域を見渡すことで,都市への一極集中ではない,より分散した形での成長の可能性が見いだせる。
・競争と競争力を重視。

(ⅳ)帝国主義の中心都市とグローバル・シティ
国民国家と国家間システムによって経済が統治されるようになった歴史的段階を経て,グローバルな経済システムが作られたことを,理論的かつ実証的に明らかにする必要がある。

(ⅴ)識別と測定
グローバル・シティにしかない変数を見分け,測定する際に,従来の概念やデータ,調査技術では,閉鎖性に基づいた規模の概念が使われていたため,問題があいまいになっている。調査対象を一定の範囲内に限定すると,グローバル・シティの特徴である越境的なネットワークなど特定の場所を越えて広がるものを測定できない。

Ⅱ.金融秩序
金融市場や個々の金融機関よりも,金融センターに力点を置き,都市間の関係を競争よりむしろ分業として理解することが重要である。

(ⅰ)金融センターvs.金融機関・金融市場
・金融センターという物理的な「場」の重要性を考慮することで,多様な状況や様々な資本の投入を明らかにできる。
・金融機関や金融市場が最近のデジタル技術から得られる利益を最大化するためには,複雑な組織が重要になってくるが,経済的なつながりの規模は,非・電子空間でのほうがさらに広く,金融機関や金融業が完全にデジタル化されることはない。
・多様な金融センターがネットワーク化されることで,最大限の利益が得られるようになっている。
・ある産業が空間的に集積し,そこで大きな成長が生まれるという規模の経済が,金融センターのダイナミズムにも当てはまる。

(ⅱ)競争vs.分業
・金融センター同士の競争ではなく,金融センターによる役割分担に着目することで,新たな産業の空間構成が見えてくる。
・金融センターを結ぶ国境を越えるネットワークに着目すれば,各センター同士は互いに統合されたシステムとして働いていることが明らかになってくる。
→金融センターは複雑なネットワークにおける欠かせない場として重要な戦略的役割を負っている。

(ⅲ)グローバル企業と国家
グローバル時代の国家の役割についてはまだ満足に考察しきれていない。

(ⅳ)金融業の本質
金融業ではグローバル化によりサービス提供以外の特色が強まってきており,1980,90年代のイノベーションの導入により「実物」経済にサービスを提供する役割から切り離されていった。

Ⅲ.生産者サービス
◇生産者サービスの細分化
・生産者サービスを指標として使う場合には,それを細分化したうえで分析しなければならない。
◇生産者サービスとグローバル・シティの関係
・グローバル・シティより小さい都市で生産者サービスが成長しているからと言って,グローバル・シティがより手ごろな地域へ移っていると説明するのは短絡的であり,小都市で生産者サービスの成長率が高いのは,これに対する需要があらゆるセクターの企業で増えたからに過ぎない。
→生産者サービスのなかでも,グローバル企業やグローバル市場の需要に応えるものは非常に複雑な仕組みを持っているため,これを小都市が担うことは難しい。
・フォーディズム的/ケインズ主義的な時代に生産の場という都市の役割は失われていったが,現在サービスを生み出す経済活動が都市で活発になってきていることから,都市が今一度「生産」の場として浮上してきている。
→金融業とサービスが盛んになるにつれ都市は新しいタイプの生産の役割を担うようになった。
◇国内向けの仕事とグローバル向けの仕事を対置させているという誤解
・国際的な職業が都市にあつまっていたとしても,その都市をグローバル・シティとみなすことはできず,グローバル・シティの基準を満たすためには,グローバル企業やグローバル市場の需要に応じられる専門サービスや専門職がかたまって存在する必要がある。
→グローバル・シティ論の重要なポイント:グローバル企業やグローバル市場が調整されているのか,専門サービスが提供されているのかどうか。
・グローバル・シティの諸機能は多種多様な職業によって支えられているにもかかわらず,国内向けの職業のように,そう認識されていないものもある。
◇生産者サービスの製造業における関わり
・生産者サービスの成長に製造業は欠かせないが,生産者サービスと製造業の立地は必ずしも同じ地域である必要はない。
・生産者サービスは企業の一部であるため,製造するところをどこにするかは,さほど重要ではない。

Ⅳ.社会と空間の二極化
◇二極化≠中産階級の消失
グローバル化にはフォーディズムのように中産階級を増やす効果がなかったどころか,トップレベルの専門職の価値を高める追い風になった。
中産階級は全く消えておらず,ただ成長のダイナミクスの基本的な方向性が中産階級を増やす方向には向かっていないということ。
◇グローバル・シティにおいて貧困が生じる原因
・高給職と低賃金労働が増加している背景には,近年成長しているグローバル・シティの諸機能を担う経済セクターがある。
◇グローバル化の影響力
・様々な市場とそれが都市の社会的・空間的特徴に及ぼす影響を丁寧に検証することで,すべてではないにせよ,グローバル化の影響力を分析できる。
・都市の全体的な職業や経済セクターの構造,犯罪や退廃・貧困・社会的排除などの問題,二極化などの傾向は決してグローバル・シティの指標ではない。

【論点】
p387「ナショナルなアクターがグローバル化を引き起こすダイナミクスを,筆者は国民国家の始まりとして認識している。…グローバル・シティでグローバル化を進めているのは,国の組織や国内企業などナショナルなアクターである」
p392「グローバル化に場所性がある,つまり特定の場所に縛られているということは,国民国家や国土など「ナショナル」な構造にグローバル化が埋め込まれているということである」

と本文にあるように,グローバリゼーションと国家の関係性が指摘されているが,グローバル化によって国家の役割はどのように変化したのだろうか。また,その変化によって社会・経済的にはどのような影響があっただろうか。
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2015-08-08 16:10 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :

グローバル・シティ 第9章 経済再編―階級と空間の二極化―

第9章 経済再編―階級と空間の二極化―

【主題】
1.金融,生産者サービスの台頭やグローバル化による,様々な格差の拡大を受けて,社会形態は一新されてきたのか。
2.雇用関係はどのように変化したか。
3.三都市の経済における人種と国籍の問題。

Ⅰ.主導セクターへの全体的な影響
高度サービスが経済の中心になっている都市では,主導経済セクターとそれ以外の経済セクターは,どのような関係にあるのか。

①一般的な経済発展論
経済が発展するにつれ,市場と市場における諸関係が社会制度に影響するようになる。
・経済水準が高くなるのと平行して包括的な正規労働市場が開拓されていく。
・各種の規制が敷かれる,十分な失業手当・退職金,労働組合が機能
➡フォーディズム…労働者に気前よく給料を支払い,十分な余暇を与え,消費を促す。
②経済の基盤産業と基盤産業でないものを対置させるモデル
都市形成に携わる産業による「輸出」向けの経済活動は,基盤経済にサービスを提供する他のセクターの発展にも寄与しており,この点で輸出向けの経済活動は乗数効果を生み出す媒体でもある。
③脱工業化モデル
労働人口に占める高学歴者の割合が増え,知識産業が重要な位置を占めると,生活の質が全体的に良くなり,経済目標に限定されない社会目標へ関心が集まる。
・ダニエル・ベル「サービスの序列(ヒエラルキー)」
脱工業化社会のなかで専門職・技術職といった知識産業が急成長し,社会の中心課題が,資本や労働者の組織化から科学的知識をどうまとめていくかという関心へと移行する。これにより企業と労働の在り方はより人間的らしく,社会的なものになっていく。
➡実際に生産者サービスや金融業を知識産業とするなら,知識産業は成長したし,先進諸国で主要な経済セクターになっている。また専門職層の雇用は増加し,給与額も上がっている。

 こうしたモデルの出発点は,経済の中間セクターの順調な成長がストップした歴史的に重要な時期とどれくらい重なるのか。

■第二次世界大戦後の成長-中産階級と正規労働市場の拡大
資本の集約・標準化・郊外化(中産階級の形成)によって労働市場で正規雇用が広がった。保険・金融や製造に携わるタテ割りの大企業は,昇進・十分な雇用保障・各種福利厚生で彩られた国内労働市場をうりにしていた。

■1970,80年代以降
サービス経済への全体的な移行と製造業の衰退と新しい経済セクターの台頭。新旧セクターで労働が再編されたため,大都市では雇用がこれまでとは違う形で提供されるようになった。

Ⅱ.社会地理
都市空間と新しい主導セクターが支配する大都市の経済がどう影響しあい,空間の変化が生じたのか。

断絶-主導経済が成長し続けた結果,既存の空間編成が変わったこと,大きな衰退から新しい土地利用ないし社会空間の形態が生じたこと。
サービス産業への移行やその結果の階級構造の変容,消費とサービス提供の民営化への移行などといった変化が目に見える形で現れたもの
➡ジェントリフィケーション(富裕化)
貧困が集積し,建造物が老朽化したインナーシティにおいて,高所得者向けの住居・商業施設を目的とした再開発が行われる一方で,従来の住民が立ち退きを迫られる。

■ニューヨーク
・オフィス業務に特化したマンハッタンの役割は1950年から80年の30年間にわたり,増加の一途をたどった。1990年代に入ってもマンハッタンは地域の中心であり続け,極端な集中がやむことはなかった。マンハッタンで中心となっているビジネスは,企業者サービス,金融サービス,小売,観光業,コンサルティング,広告,コンピューターサービスで,すべて順調すぎるほど成長した。
・高度専門職でマンハッタン在住があてはまるのは,たいてい白人の若い層である。
・マンハッタンの居住者の内訳では,管理職・専門職・サービス労働者が極端に多い。なかでも急激に成長したのが専門職であり,サービス労働者の比重は過去30年間で減少してきている。
・高所得者層の収入が上昇する一方で,貧しい勤労者世帯の数が急激に増加した。
・女性が重要な要因となり,ジェントリフィケーションが進行している→貧困層の立ち退きを伴う。
・エスニシティごとのセグリゲーション(住み分け)の進行→世帯収入に応じた空間の階層化を反映。
・1980年代に低家賃住宅市場の縮小,景気低迷,低所得者世帯の収入減少が重なり,ホームレスが急増した。

■ロンドンと南東部
・ロンドン中心部は1980年代以降,オフィス業務に特化してきた場所であり,1990年代後半になると,金融・銀行・保険が極端に集中するようになった。また,高度専門職層がマンハッタンと同時期に拡大した。
・国際金融・生産者サービスの中心として成長する中で,高所得者層の賃金は上昇したが,低所得者層の賃金は上がらなかった。また,インナーロンドンに貧困層が集中するのと同時進行で,ロンドン中心部に済む高所得者層が増えた。
・規制緩和以降の学歴と能力重視の傾向により,女性にも就業機会が開かれるようになった。
・高額な消費をいとわない高収入層が生まれ,特有のライフスタイルが形作られた。
・低所得層,特にマイノリティが集住していたインナーシティを含め,高所得者層をターゲットとしたジェントリフィケーションが進行した。
・南東部には高所得世帯が多く集まり,低賃金労働が必要とされる基盤が出来上がっている。
・多くの公的サービス職業は,民営化と規制緩和によって民間セクターに移され,削減されていったことで,正規雇用市場は縮小し,臨時の不安定就業雇用が拡大した。これにより貧困の集積が進み,ホームレスも増大した。

■東京
ニューヨーク・ロンドンとの相違点
・グローバル化により1980年代は巨大な成長と資本蓄積を経験したが,90年代になるとこうした進展は見られなくなった。
・特定の種類の経済活動だけが東京に集積されてきた。
・グローバルシティとしての東京の軌跡において,政府が大きな役割を果たした。
・生活水準の向上より産業の成長を重視する資源分配により,ニューヨークやロンドンに比して格差が小さくなっている。

ニューヨーク・ロンドンとの類似点
・1980年代以降,企業者サービスと金融サービスが成長した結果,専門職の需要が増大した。
・ジェントリフィケーションの結果,瀟洒な住宅・商業地区が現れる中で貧困も悪化し,高所得者向けの住宅供給の拡大と低所得者世帯の立ち退きが生じた。

≪東京のインナーシティ≫
インナーシティとは,中心業務地区を取り囲む一帯をさし,郊外に比べ都市の中心部に位置していることから「インナーシティ」と呼ばれ,マイノリティや貧困層の集住地域が形成される。

〇地域社会の衰退
商業・住宅・古い製造業が混在する区に現れ,雇用の減少し,若年層の転出により相対的に高齢者人口が増加している。
〇地域経済の衰退
製造業が経済基盤として活況を呈していた土地において,製造業が衰退した。その一方で他地域では製造業以外の産業が影響して経済活動の水準が上がり,通勤人口も激増している。
〇住宅事情をはじめとする物理的条件の悪化
豊島区・北区-粗末な住宅と貧困層が密集している。
中央区・港区-商業中心地でありながら,粗悪な住宅や荒廃した家屋が存在する。ビジネスセンターが急速に拡大する一方で,住人は激減している。
〇社会的な不利益とマイノリティとされる住人の関係
・日本は完全な同質社会であるといわれてきたが,現在は東南アジアからの移民が増大している。
・台東区・荒川区においてエスニック・マイノリティが社会的にもっとも不利益をこうむっている。
・新宿と渋谷には大きな韓国人コミュニティがあり,外国籍のアジア系女性のほとんどは「エンターテイナー」として雇われている。

➡商業中心地区に隣接し,かつ一昔前には製造・商業の中心であった地域で,社会・経済・物理的な面での最大の衰退が生じている。

Ⅲ.消費
人々の消費の形が変化し,一通りの基本的な欲求が満たされたことで,人々は他の人々との違い=差異を追い求める時代となった。つまり,同じものを大量に生産するのではなく,必要な時に必要なだけ生産されるようになったのである。

・低賃金労働は消費(あるいは社会的再生産)の領域で生じており,ジェントリフィケーションが行えるかどうかは,膨大な数の低賃金労働者を利用できるか否かにかかっている。高所得層向けのジェントリフィケーションを受けて,大量生産・大量消費ではない類の商品やサービスへの需要が生じ,結果的に労働集約的な生産方法がとられている。そして,特注生産や限られた生産量,小さな小売店では雇用のインフォーマル化と労働の不安定化が進んでいる。
・直接的には労働の構造,間接的には成長セクターで働く人々の高収入に基づくライフスタイルの登場によって,低賃金労働が創出されている。
・戦後の代表的な成長産業であった生活必需品や耐久消費財の生産が減少したことで,製造業の価値は下がり,労働組合の衰退,労働契約上の各種保護の減少,臨時雇用や不安定雇用,または非正規雇用の増加が起こっている。

◇大都市において経済活動での労働のインフォーマル化と不安定化が広がった原因
1.大都市では所得分布の二極化が進んでいるうえに,主な成長セクターが地理的に集まっていること。
2.大都市に膨大な人口が集中したため,安くて規模の小さいサービスが急増したこと。
3.人件費やそのほかの必要性から,労働集約的な製造業のうち低賃金で規模が小さい企業は,平均サイズの都市よりもロンドン・ニューヨーク・東京に多く集まる傾向にあったこと。

Ⅳ.不安定就業労働市場とインフォーマル労働市場
ニューヨーク・ロンドン・東京において労働のインフォーマル化が続いているが,東京が他の二都市と異なる点が,東京で増えた不安定就業が「日雇い労働」やパートタイム労働であったことである。高度産業国における正社員から臨時雇用への切り替えの重要な要因として,サービス職へのシフトがあり,増えたサービス職の大半を担っているのが女性である。

◇インフォーマル経済拡大の原因
・政府の管理や規制から逃れ,人件費を削減するため。
・臨時雇用の増加,母子家庭の増加,製造業に基盤があった労働組合の衰退,そして男性労働者の大量解雇などにより,家族賃金が制度的に崩れてきているため。

■ニューヨークでのインフォーマル化
・インフォーマル労働は,移民コミュニティに集まってはいるものの,コミュニティからの需要だけでなく,より大きな経済圏で生じる需要にも応えている。
・インフォーマルな経済活動が,とくにジェントリフィケーションなど急速な社会経済的変化を遂げている地域に集中している。
・インフォーマル労働は規制や市場原理と関係ないはずだが,工業・産業サービス地域として浮上している区域に集積している。つまり,インフォーマル労働が行われる場所は移民コミュニティが多いが,より広い経済圏を相手とした商売も行っていることを示唆している。
・インフォーマル経済が行われる空間において,重要な立地条件は,移民コミュニティ・ジェントリフィケーションが行われている地域・市全体の市場をターゲットとするインフォーマルな製造業と産業サービスがある地域である。
・インフォーマル経済の労働には同じ作業の単純な繰り返しを仕事とする非熟練労働と,高い技術が求められたり,または技術の習得が必要とされる労働というふたつのタイプが存在する。

■ロンドンにおける労働の不定期化
・不安定就業の状態化は昔からある産業において習慣化しつつあるが,建設やエンジニアリングといった専門サービスや銀行業でも,時給ベースで働く労働者が増え,正社員と同じ権利をもつ非正規社員は減っている。雇用者側が規制を逃れようとするため,こうした非正規労働者は自営業として分類されており,これも高度サービス・セクターにみられる所得の二極化の原因となっている。
・アパレルにおいて人件費が最も抑えられる労働者であるエスニック・マイノリティと女性を利用するために,家庭内産業労働や低賃金労働が増加している。
・アメリカと同じくイギリスにおいてもパートタイマーの立場をさらに弱くする法律が議会を通過し,パートタイム雇用は奨励され,その利用が正当化されている。

■東京の日雇い労働者
・1980年代に日雇い労働者の数が膨れ上がった。日本には日雇い労働者の大きな職業紹介所(寄せ場)が横浜・東京・名古屋・大阪の四カ所にある。
・日本の日雇い労働者は雇用関係の不安定化でもっとも鮮烈な例であり,女性のパートタイム労働と並んで,労働人口の階層化が進んでいることを象徴している。

Ⅴ.労働市場における人種と国籍
ニューヨークやロンドンの社会的・経済的変化を考察するうえで,人種と国籍を無視することはできない。しかし東京ではやや事情が異なっており,ここ2,30年の非登録移民の流入を契機として,今後移民をどうするかという問題がようやく出てきたのが現状である。移民は大中心都市の低賃金労働や不安定就業労働市場に集まっている。

■ニューヨーク市のマイノリティと移民労働力
・1980年以降,高給職が増える一方で,黒人とヒスパニックが占める割合が全職種で高くなり,白人の占める割合が減っていった。
・黒人とヒスパニックが新たな低賃金労働に参入しているのと同時に,白人から既存の低賃金労働を奪っている。
・女性の割合がどの集団でも増えている。
・地位の高い仕事では,マイノリティの数は未だに少ない。
・「移民集約型産業」(労働者のうち少なくとも5分の1が移民)と呼ぶ集団に,アメリカ生まれのアングロサクソン系と外国生まれのヒスパニック系がやや似た形で集中していることから,低賃金労働を作り出しているのは,移民というよりは経済と言えるかもしれない。

■ロンドンの黒人とアジア系労働力
・1950年代,移民がイギリスに大量流入し,アフロ・カリブ系の移民の約半数はロンドンに定住し,残りは他の大都市に落ち着いた。2000年の時点で,エスニック・マイノリティの出自を持つ居住者は,インナーロンドンでは29%,アウターロンドンでは22%にのぼった。
・1962年までに最初の移民法となる一連の法律が施行されたことを受け,移民は制限されるようになった。さらに1979年には臨時労働許可証が廃止された。
・黒人労働者やアジア系労働者は衰退がもっとも濃い影を落とした製造業に集まっている。
・マイノリティ集団は,集団の人口比に対して失業率が高くなっているが,それが最も顕著なのが黒人労働者である。
・低賃金労働の発生率は非白人層でかなり高くなっている。

■日本への近年の非登録移民
・1950,60年代にアメリカや西欧諸国が労働力を外国人労働者に頼っていたのに対し,日本では地方から都市への出稼ぎ労働者が,外国人移民に代わる役割を果たしていた。
・1980年代にアジアから移民労働者が流入したことで,日本経済はまったく新たな局面を迎えた。都会で生まれた移民第二世代が完全に成長し,労働力となった。また,激務を伴う仕事(例えば遠洋漁業)や低賃金労働での労働力不足はますます明らかになっていった。
・国会では1990年になってようやく入管法の改正が認められ,日本が受け入れる外国人労働者の職業領域の数を28まで増やした。そのほとんどは専門職である。他方でこの改正をもって非熟練・半熟練労働者の入国が制限・管理されるようになった。
◇非登録移民が日本に移住をきめた理由
1.来日する前から,労働力移動のプロセスに何らかの形で巻き込まれていたため。
2.移民労働者の出身国における日本のプレゼンスが高まった結果,日本に関する情報が入ってくるのと相まって,連関が構築され,移住先の候補として日本が浮かぶようになったため。

→労働力の不安定化は,移民労働者にとって間口が広がるチャンスである一方,雇用者側にとっては制約が減ることであり,また,人件費削減につながる。また,製造業の衰退,サービス業の台頭によって独立した小企業が増え,こうした企業は日本企業の大多数が加入している大規模な経済団体に加入していない。これは不安定化のもう一つの形といえる。

■経済の再編成と社会的な地域構造における移民
大量の移民が衰退している後進セクターに低賃金労働を提供しているという従来の研究の見方では全面的な説明とならない。

・移民が安い労働力を提供しているとされるサービス関連職や製造関連職は,成長している高度専門サービスや,こうした分野で働く高所得層のライフスタイルから生じる需要に応じて創りだされている。移民労働者が担う衰退している経済セクターが,都市経済で最もダイナミックなセクターの需要を満たしている。
・1970年代のニューヨーク,1960年代のロンドンにおいて,移民がいなければ放置されたままであった家屋や閉店したままの店舗が連なる地域で,移民は職を見つけ働いた。移民コミュニティは都市の空間・経済セクターの再生に積極的に関わっている主体であり,コミュニティのための直接労働と,資金の個人投資を集積させることで利益を最大化する構造,あるいは媒体である。
・大量の移民は戦略的なセクターにサービスを提供する労働に組み込まれており,その組み込まれるプロセスで,グローバル・シティが重要な役割を果たしている。そして実際に組み込まれていくなかで,移民労働者は見えない存在になっていく。
・移民は移民であるがゆえにインフォーマル経済におあつらえ向きの労働力や企業家になり得るし,大都市を中心に低賃金労働者が増えたことは,移民にとってみれば,雇用機会の創出として理解できる。

Ⅵ.まとめ
1.近年のジェントリフィケーションの特徴は,その規模の大きさと新しい消費イデオロギーを生んでいることである。つまり,中産階級の消費パターン(機能性・低価格・郊外)から大都市のエリート層の消費パターン(スタイル・高価格・超都会的)へと変化が生じている。このような新しい商業文化が台頭する一方,貧困の厳しさが増している。
2.三都市において不安定就業労働市場が組織化され,こうした雇用関係がサービス・セクター中心の経済で拡大し,中心的になった。不安定のダイナミクスは都市ごとに違った様相を呈しているが,各種パート労働の増加は一般的かつ広くみられる傾向である。
■ニューヨーク
不安定就業労働市場が成長した結果,予期していなかったインフォーマル経済の登場というダイナミクスが生じた。
■ロンドン
かつて国家が提供したサービスの多くを民営化した結果,雇用の不安定化が,もっとも劇的に生じ,そのために雇用条件が制度的に悪化した。
■東京
「日雇い労働者」が急激に増加し,労働者の層も多様化している。このような中で,制度による保護や賃金水準が急激に悪化している。

3.人種・国籍によって,雇用分布・賃金分布は異なっており,ニューヨークの黒人や第三世界からの移民は極端に賃金の低い,より古いサービス職に集まっている。ロンドンでは,移民への門戸が閉ざされたにもかかわらず非登録あるいは半合法移民が流入し続け,彼らは低賃金労働に従事している。労働者と世帯の間で孤立化が進み,経済的重要性をもたない者の割合が増加している一方で,柔軟性の高い期限付きの低賃金労働力に完全に組み込まれつつある移民労働者もいる。東京への非登録移民の流入の主要な要因は,経済の急速な国際化,なかでも近年の非登録移民の主要出身国への海外直接投資・海外援助・海外移転の増加と,不安定就業労働市場の存在感の高まりである。最近の移民の多くは雇用関係の不安定化の広がりのプロセスに組み込まれている。つまり,大都市を中心に起きている経済の国際化と雇用関係の不安定化により,新たな移民が生まれ,かつ吸収されているのである。

論点
製造業の衰退と金融・生産者サービスの台頭やグローバリゼーションにより,日本でも不安定就業労働市場が拡大し,移民労働者が増加するなど雇用形態の変化が生じている。では,1960,70年代の高度経済成長期と現在では,雇用や労働の在り方は具体的にどのように変化したのだろうか。またその変化により,社会や私たちの日常生活にも何か影響があっただろうか。

<議論>
高度経済成長期と現在の雇用・労働のあり方に関する変化を捉えるため、まずそれぞれの時期における雇用・労働の特徴となる事項をリストアップした。その結果、高度経済成長期には「終身雇用・年功序列・会社からの手厚い補助」「非熟練労働」「正規雇用・集団就職・正規雇用の多さ」「労働組合の強さ」などが挙げられた。現代では「転職、リストラが一般化」「ブラック企業・ワーキングプアの登場」「専門職のニーズの高まり」「正規雇用の少なさ・過剰な就職活動」「規制緩和によるフリーター、派遣労働者の増加・労働組合の崩壊」が挙げられた。これら高度経済成長期と現代の特徴は対応しているカテゴリに分けた。(各時代の特徴は対応するカテゴリ順に紹介している)また、高度経済成長期には見られなかった新しい特徴として、「外国人労働者の増加・女性の積極的な登用・定年後も働く労働者の増加」が挙がった。
こうした特徴の変化から、いま私たちの日常生活に現われている影響として「収入の二極化・雇用のグローバル化・個人社会・資格重視・生涯勉強」が挙げられた。特にポジティブな影響として「束縛がない・選択肢の増加」が、ネガティブな影響として「一生涯競争が続く・不安の強い社会」が挙げられた。
今回の論点では、現代社会のネガティブな側面が多く論議された。たしかに社会的な格差の拡大や就職したからといって安心できることはない点など社会的な不安はますます大きくなっている。一方で、努力次第で年齢に関係なく昇進できる点や職種・働き方の選択肢が増えてきている点は、良い点だと評価できるのではないだろうか。単純に「高度経済成長期は良かった」「現代社会は悪い点ばかりだ」と評価するのではなく、現代の格差社会の下位層に対する補償が弱い点のみを問題視することが重要だと考える。
こうした問題点の原因に、日本の企業依存的な福祉制度がある。所属する企業、また就労状況により、享受できる福祉に差が生まれてしまうからだ。弱まってしまった福祉国家体制を強化することが求められると考える。
2015-08-03 13:10 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :
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