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『空間の政治地理』第1章 レジュメ

水内俊雄編『空間の政治地理』レジュメ

第1章 「地政学と言説」

はしがき(水内俊雄)
 戦前の地政学を唱導/戦後の政治への臆病な姿勢→政治が脱色された領域
→本書では「政治地理学から空間の政治(学)、空間の思想(史)、空間の政治経済的アプローチといった領域をカバー

目次
第1章 地政学と言説(高木彰彦)
第2章 グローバルあるいはローカルなスケールと政治(山崎孝史)
第3章 国土空間の生産と日本型政治システム(筒井一伸)
第4章 社会運動論と政治地理学(香川雄一)
第5章 「自然」の地理学(中島弘二)
第6章 ポストコロニアルな状況と地理学(大城直樹)
第7章 思想としての地図―あるいは、「知の地政学」へ―(若林幹夫)
第8章 地理学における空間の思想史(野澤秀樹)
第9章 空間、領域、建造環境(水岡不二雄)

第1章 地政学と言説(高木彰彦)

1.1 外交政策と地理的イメージ
例:ゼミ報告とクラブの試合が重なった場合:関係各所との折衝調整(=外交政策)
世界各国へのイメージの確かさ/不確かさ
→地理的イメージは、私たち自身の文化的社会的歴史的背景によって形成される。
ex.日本のイルカ漁、富士山、満開の桜;地理的イメージが政治を左右

地政学geopolitics;地理学において国際政治や外国政策を扱う分野
(ドイツ語のゲオポリティクgeopolitikに「地政学」という訳語をあてたのが起源)
→戦前の地政学を指す時は「ゲオポリティク」、今日の地政学を述べる時は「地政学」
※近年では「批判地政学」のアプローチ;メディアの役割と地理的知識の国民的偏りへの注目

1.2 地政学とは何か

ゲオポリティク;チェレーン『生活形態としての国家』→国家学において国家と領土に関する分野をゲオポリティクと設定。「地理的有機体ないし空間における現象としての国家を考察する学問」
→政治・軍事上の重要性
・チェレーンはラッツェル『政治地理学』を頻繁に引用
その後のゲオポリティク;ベルサイユ体制下で領土的不満を抱えたワイマール期のドイツで興隆し、後にナチス政策と結び着き、ドイツ敗戦とともに消滅。
→敗戦後の日本でも、政治地理学は地理学においてタブー視されてきた。
(ゲオポリティク運動の中心人物ハウスホーファーが日本に滞在していたことなど)

1980s~タイラー「地政学の復活」の背景
①キッシンジャー外交に伴って地政学という語が流行②ゲオポリティクに対する批判的歴史編纂的研究が進む③アフガン侵攻等の国際的緊張の高まり

地政学の展開におけるオロッコリンO'Loughlinの時期区分
①1879-1920の古典地政学の時期②1922-1945のファシスト/反ファシストの対抗の時期③第二次大戦後の米国支配の時期④1980以降の批判地政学が登場した時期
①~③の時期は、国際政治をランドパワーvs.シーパワーといった対立図式で描く
④の時期は、伝統的な地政学観を批判し換骨奪胎しようとする時期

1.3 地政学の復活と批判地政学

1.3.1 地政学概念の拡大

地政学の入門書:①ドッズ『変化する世界の地政学』②ブレイドン&シェリー『魅力ある地政学』(表1.1参照)
→どちらも似通った構成;「国際問題を扱う地理学の分野」としての地政学への転換
ただし①の文献には大衆文化作品を扱う「大衆地政学」の項目
→映画・テレビ・大衆雑誌・漫画・音楽;『ライフ』『リーダーズ・ダイジェスト』『破滅への計画』
ex.「常夏の楽園」としてのハワイのイメージ形成(日本でも)→地理的想像力と国際政治

1.3.2 批判地政学の興隆

アグニュー&オトゥホール「地政学と言説」:「国政に携わる識者が国際政治を「空間化」するような言説的実践」→地政学研究とは「中核諸国や覇権的諸国による国際政治の空間化の研究」であり「極めてイデオロギー的で深く政治化された分析形式」である。
→「特定のタイプの場所や人々の劇的な事件によって特徴づけられる「世界」として表象するようなやり方で、国政に携わる識者が国際政治を「空間化」するような言説的実践」として地政学を再概念化しようとする。
→4つの命題:①包括的な国家研究②形式的ではなく実践的な地政的説明③地政的説明の研究は国内や近代世界システム内の地理的知の生産に関わるもの
ex.米国:①アメリカという場所の神話②自由主義の普遍化が国家の使命③自己と他者の強力な区別

米国外交官ケナンの「長電報」「ミスターX論文」から読み解く言説分析
①ソ連を「他者」として表象②ヨーロッパを襲う強姦者としてソ連を表象③ソ連の脅威は「赤い洪水」というイメージ→トルーマンや米国民の共感→「封じ込めcontainment」へ

1.3.3 米国大統領の演説を読み解く

「テロとの戦い」「悪の枢軸と国民の抑圧」「十字軍としての米国」
→ネオコン、単独行動主義、善悪二元論、るつぼからサラダボウルへの転換
国という単位は特定の価値観が支配的。デモクラシーの帝国としての米国

1.4 欧米中心主義的な地政的想像

アグニューはヨーロッパ人の地政的想像力には①グローバル空間の視覚化②先進性と後進性③領域国家の世界④首位性の追求4つがあると述べる。
①グローバル空間を理解する能力(知の体系化)の一方で、サイードが指摘したオリエンタリズムのような、二元論的な地理的思考。
②地理的二元論を時間軸上に置き換えた理解
③ウェストファリア体制以後、境界画定された領土を持つ国家を中心とする思考
④国家間競争と階層性の発達
※ヨーロッパ内では互いに主権を有する平等な国際体系が維持される一方で、ヨーロッパ外にはそうしたルールは適用されなかった。

1.5 他者の表象とメディアの影響

表1.2 朝日新聞の国際面に掲載された記事の国別・地域別割合
・世界情勢に合わせて、記事量が変化
・隣接地域への日常的な関心
・貿易額は必ずしも記事量とは比例しない
・デスクの判断によって、記事の種類や分量が決まる→地理的想像力が影響

1.6 地政学概念の脱構築

・日本の地政学が活性化しないということそのものが、日本の地政学の現状を示している
・日本での地政学研究は、総力戦体制期の地政学的運動を指す言説という一般的理解
ex.)邪馬台国論争と近代国家主義との結びつき。but,ドイツのゲオポリティクに関する視点の欠如
・冷戦後のヨーロッパの状況は、第一次大戦後のゲオポリティク誕生期を再現している(?)
→地政学的研究を行う意義は大きい。




論点

① 現代世界を扱う魅力ある地政学的研究のテーマとして、どんな題材が考えられるか?
→ex.北朝鮮をめぐる状況の地政学的分析と今後の展望

② 本章末尾で「冷戦崩壊後のヨーロッパは第二次大戦というよりむしろ、第一次大戦後の状況と類似している→地政学再考の意義がある」と述べられているが、どのような点が類似し、どのような意義があるのだろうか。(具体的にイメージできなかったので)

③ ②と関連する論点だが、状況が類似していても、核問題や情報・移動技術などの点は、当時と現在では状況は大きくかけ離れている。現代世界の地政学を扱う上で、筆者が再評価するゲオポリティクの可能性と限界は、どのあたりにあるのだろうか。

④ 「地理学的想像力」が外交や地域政治に与える影響は、国家間の問題だけではなく、ローカルな地域や民族、宗教などの分野でも発生する。またそのような分野の出来事が、まさに国家間の地政学的関係を左右する。だが、地政学においては国の枠組みだけを切り取るような「対象化」が続けられているようにも思える(例えば新聞記事面積の比較という妥当性への疑問。国際問題を新聞の国際面だけで扱う限界?)。




議論のまとめ

・「戦前の地政学の状況がよく分からない」という問いに対して、先生から簡単な説明をいただいた。しかし、たとえば大東亜共栄圏の言説が構築される上で地政学や当時の地理学者が具体的にどのような「貢献」をしたのかについては明らかになっていない。

・本章のタイトルにもなっている「言説」をめぐって、国家のイメージがメディアを通じてどのようにやりとりされているのかについて関心が集まった。特に、日本との貿易額が大きいブラジルやオーストラリアについて、あまり新聞記事として扱われないことが取り上げられた。その国のイメージに合う出来事のみが取り上げられて記事化される過程があり、たとえばブラジルならばサッカーやサンバ関連のニュースだけが日本国内に紹介され続けている。そのように、既成のイメージに合うようなニュースだけが取捨選択され国家の言説はニュースを通じて再生産される状況がある。日本のイメージや言説も同様に海外で再生産されていると考えられる。

・ただし、そのようなイメージの再生産は不均等かつアンバランスに展開している。例えば特派員の有無や共同通信を通じた記事の配信などが「地理学的想像力」を大きく左右していることが指摘された。

2006-10-17 20:11 : 『空間の政治地理』(06後期・院ゼミ) : コメント : 5 :
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非公開コメント

スポンサーの問題は大きいみたいですね。雑誌の場合は特にそういう傾向が強そうです。
スポンサーなしのNHKとか、どうなんでしょう??やはり純粋な「地理的想像力」に従ってニュースが編集されてるってことなんでしょうか。
2006-10-18 17:01 : あいざわ URL : 編集
デスクの力以外にも、やはりスポンサーなどの影響力もあるのでしょうか…?アメリカからの輸入商品がスポンサーの番組では、あまりアメリカを叩かない、等。
2006-10-18 16:14 : yoshy URL : 編集
ありがとうございます。
どこをいじったらいいか、全然分からなくてですね。。

「余談」の部分、少し修正しておきます。
2006-10-18 11:55 : あいざわ URL : 編集
「続きを読む」に変更しました。
2006-10-17 21:31 : sawa URL : 編集
「余談」って・・・
「余談ですが・・・」って何とかならないですかねぇ。トップページに全部表示させるのは鬱陶しいような長さですので。。
2006-10-17 20:24 : あいざわ URL : 編集
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