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『空間の政治地理』第5章 レジュメ

『空間の政治地理』レジュメ

第5章 「自然」の地理学(中島弘二)



社会的に構築された概念としての「自然」→「原生自然wilderness」のフィクション性
(wilderness;キリストが霊に引き回され40日間悪魔の誘惑を受けた荒野)

●自然の生産production of natureをめぐる研究成果の検討を通じて、現代における「自然」の地理学の可能性を模索したい。

5.1 地理学における「自然」
「自然」が後退し、「空間」「環境」が全面に打ち出されるようになってきた最近の地理学。
ex.『人間,空間,環境―現代人文地理学の諸概念―』(1972年のテキスト)
→内容に「自然」を見出すことはできず、代わって「環境」概念が研究対象としても理論的枠組みとしても重視される。

1970年代以降の「人間―自然関係」「人間―環境関係」研究の展開を整理してみると・・・
①文化生態学的アプローチに基づいた生業活動研究(開発や災害に関するポリティカル・エコロジー研究も)
②行動論的アプローチに基づいた環境認知研究(メンタルマップ研究から厳密な認知地図研究へと展開)
③マルクス主義的アプローチに基づいた「自然の生産」論(「自然と社会」の弁証法的関係の解明からメディア研究、ポストコロニアリズム批判、環境正義研究、「社会的自然social nature」の議論)
→今や「自然」を主題に掲げるのは③の「自然の生産」論のみ

5.2 マルクス主義における「自然」と「人間」
5.2.1 「第一の自然」と「第二の自然」
・「自然」の意味は、常に社会的文脈の中で決定されている。
・シュミットSchmidt『マルクスの自然概念』→「第一の自然」と「第二の自然」の区別
→物質世界としての「第一の自然」と、国家や制度や社会経済等の人間世界としての「第二の自然」を区別するヘーゲルを批判し、「常に人間労働によって媒介されながら同時に人間自身がその一部を構成するような弁証法的全体性としての「自然」」を措定。

スミス『不均等発展―自然,資本,空間の生産―』におけるシュミット批判
→労働対象としての「外的自然」と、自然と社会の統一体としての「普遍的自然」という統合し得ない二元論に陥っている。(ユートピア的歴史主義?)
→「近代資本主義によって人間による自然の支配に基づくブルジョワ的な人間―自然関係の台頭」という考え方は、自然の物神的を進めたという点でブルジョワ的である。
→スミスによる「自然の生産」論の展開

5.2.2 「自然の生産」論
スミス:「生の」自然(第一の自然)も、人間によって生産されたものである。
ex.ヨセミテ、イエローストーン国立公園における価値の創造
→使用価値に基づく具体的物質的な自然と交換価値に基づく抽象的な自然の区別が重要。

「自然の生産」論へのカストリーの評価
①マルサス主義的な環境論に対する批判の発展につながったこと
②自然が資本蓄積の道具に作り変えられたことを明らかにしたこと
③自然の生産の開放的な可能性と政治学を切り開いたこと

「自然の生産」論へのレッドクリフトRedcliftの批判
自然が社会的労働の形態を通じてしかあらわれず、生産活動に直結しない「環境意識」の作用、レジャーなどの自然の消費活動、およびそれらを通じた社会的再生産の問題を適切に取り扱うことができない。また西部開拓をルーツとするアメリカン・ナショナリズムが正当化される、など。

カストリーは、自然の物質性materialityを見落としてしまう危険性や、「自然の生産」論は労働過程中心の一元論に陥り、生み出された自然環境自体の役割や重要性を正しく理論化してこなかったと指摘。
→天然資源の収奪を止めれば自然と社会の相克を克服し得るわけではない。

環境史家クロノンCronon『自然のメトロポリス―シカゴと大いなる西部―』
シカゴと後背地のアメリカ西部の生態的・経済的な相互作用の変化に焦点を当てる。

5.3 環境史研究の展開
5.3.1 環境史研究における「環境主義的パラダイム」
自然の自律的・能動的性格が強調されることが多い環境史研究の分野
ex.グレートプレーンズのカタストロフと農業/土砂嵐は人間が原因

自然破壊を批判する均衡概念に基づく生態学的全体への批判
デメリットDemeritt:先住民を「高貴な野蛮人」と見なすオリエンタリズムの資本主義批判と紙一重
クロスビーCrosby:旧世界から新世界へ移入された生物学的諸要素による生態的な環境支配
ex.ニュージーランドに持ち込まれた「外来種」が先住民マオリの衰退を招いた。「生態学的帝国主義」

アーノルドArnold:クロスビーは生物学を重視しすぎ、人間の作用を軽視。人間の計画的な意図の結果であったはずと批判。
「環境主義的パラダイム」環境が人類の歴史を形成し、文化的、物質的生活の特質を決定する際における強力な力であり続けてきたという考え方。
ex.マオリの衰退を、恐竜のように歴史から消えていったノスタルジックな他者として構成する。

ブルジョワ・イデオロギーに基づく「環境主義的パラダイム」のまなざしは、自然と調和した「高貴な野蛮人」という他者性の構築を通じて、結局のところ西欧へと回帰する。
5.3.2 クロノンの層序学的アプローチ
クロノン『自然のメトロポリス』:シカゴの環境史を理解するために、農村部とのつながりを重視。都市の市場とそこに資源を供給する自然のシステムの間のつながりを、流通や商業、商品と資本のフロー、そして都市と農村の相互の文化的意味づけなどを描き出す。
・都市からの離脱や農村からの離脱において「自然」「非自然」が生み出される。
ex.ミシガン湖の厳しい自然条件を乗り越えるためミシシッピ川への運河開削。「第二の自然」が「第一の自然」の景観の上に出現した。
→深層と表層という層序学に置き換えることで、両者の統合的な把握を試みる。
・シカゴに莫大な資本蓄積をもたらした価値の源泉は「第一の自然」にある。
→「自然」の存在論的な位置づけと歴史におけるその作用から目をそらさない。

but,クロノンは「自然の源泉は太陽エネルギーであり人間はそれを生み出すことはできない」と主張。
→デメリットは生態学的本質主義に陥っていると批判。
→「他者性」の構築にも寄与してしまう。
ex.「インディアン」の自然と調和した労働は「第一の自然」の側であり、西欧にとっての他者。

5.4 「社会的自然」の可能性―「自然の生産」から「自然の社会的構成」へ
クロノン『脱-共有知―自然の再創造のために』
ex.熱帯雨林、剥製、バイオテクノロジー、ポスターの写真、ヴァーチャルな自然
→「社会的自然」:自然は文化的な図像(イコン)として経験されるもの

カストリー&ブラウン
①自然は物質的かつ意味論的につくられるものであり、この構築過程以前にはいかなる自然も存在しない。(超-構築主義の危険;自然は「白紙」ではない)
②自然の構築過程が有する政治的性格。ex.アボリジニをめぐる「原生自然」概念と鉱山開発の問題。

5.5 おわりに
スミス『現実の再創造―千年紀の自然―』
現代の「自然」をめぐる状況への危惧;技術的方法>社会的諸関係や社会的再編
「環境管理environmental management」が、構築された自然概念をめぐる官僚的で新自由主義的な解釈のひとつに過ぎないものとなってしまった。
→かつて異議申し立てを行ったラディカルな運動が、今や「体制派の環境主義establishment environmentalism」となってしまった。また社会構築主義は、「自然」をめぐる果てしない言語ゲームに陥る。

スミスは「自然の生産」論の再評価と「自然の再魔術化re-enchantment of nature」を模索。
but,感情と結びついた「自然の生産」論や再魔術化の主張は、ガイア論やエコロジカル・フェミニズム、自然崇拝やゲニウス・ロキに基づく場の理論などの本質主義的・超越論的な自然認識を再導入してしまう危険を孕む。
●「自然の生産」と「自然の再魔術化」を同時に進めることが「社会的自然」研究に求められる。


■論点

・ユネスコによる「全人類にとっての貴重な遺産を保全する世界遺産プロジェクト」を通じて、「全人類」という主体の構築が画策されている。これは、地球規模の自然破壊に対するグローバルな取り組みを喚起するための戦略のひとつである一方で、「先進国的自然観」「西欧的価値観」の押しつけ的性格を含むものでもある。たとえば世界遺産として認定された知床半島では、自然の営みの一部である鮭の遡上を促すために砂防ダムの撤廃が勧告されているが、鮭を狙う熊の出没や土石流への恐怖感から、砂防ダムの撤去に反対している地元住民も少なくないという。「人と自然の共生」ではなく、「人間不在の自然」が確保されることが優先されている。富士山の世界遺産化においても同様の問題が生じている(「アボリジニー」の事例と似た構図?)。一方で鞆の浦では、世界(文化)遺産という「価値付け」を戦略的に導入することで、開発の問題と対峙している。いずれにせよ、ローカルスケールの問題に「世界遺産」というグローバルスケールの規準が強く影響ことは、今後の「社会的自然」を考える上でどのような意味を持っているのだろうか。

・結論部の「社会的正義と環境的正義に基礎を置く、人々と他の有機体のための未来を構築するより大きなプロジェクトに寄与する」ために行う「自然の生産」と「自然の再魔術化」を同時に進めていくための「社会的自然」研究とは、具体的には上述の疑問点で挙げたようなケースを扱う研究などをイメージすればよいのだろうか。

■ 資料①「世界遺産とは」―――
社団法人日本ユネスコ協会連盟 - 世界遺産活動

世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から引き継がれた貴重なたからものです。世界遺産にはさまざまな国や地域に住む人びとが誇る文化財や自然環境などがあります。
なかには人類の残酷な歴史を刻むもの、また戦争や自然災害、環境汚染などにより危機にさらされているものも含まれています。それらは国際協力を通じた保護のもと、国境を越え今日に生きる世界のすべての人びとが共有し、次の世代に受け継いでいくべきものです。

UNESCO(国際連合教育科学文化機関:本部はフランスのパリ)は国際連合の専門機関です。日本国としてのUNESCOの窓口は、日本ユネスコ国内委員会(文部科学省内)です。
UNESCO内にあるUNESCO世界遺産センターは、世界遺産条約に基づき、顕著で普遍的な価値のある文化遺産や自然遺産を未来に守り伝えていくための国際協力の枠組みをつくり、世界各国に世界遺産条約への締結や世界遺産の保護を呼びかけています。
また、条約締約国に対し、世界遺産リストに登録すべき物件を推薦するよう働きかけ、世界遺産登録地の保存管理状況を報告するシステムを構築しています。その他、技術協力や専門的な研修の実施を支援することで、締約国が世界遺産の保護・保存・整備などを円滑に行えるように支援しています。特に「危機にさらされている世界遺産」に対しては、緊急援助を行うための調整を行っています。

正式には「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(Convention Concerning the Protection of the World Cultural and Natural Heritage)といいます。世界中の顕著で普遍的な価値のある文化遺産・自然遺産を人類共通のたからものとして守り、次世代に伝えていくことの大切さを唱えている国際条約です。1972年のUNESCO総会で採択され、2006年1月現在、世界遺産条約の締約国数は182ヵ国にのぼります。日本は1992年に125番目の締約国として世界の仲間入りを果たしました。この世界遺産条約により、世界遺産リストの作成や登録された遺産保護支援を行う世界遺産委員会の設置が定められています。

世界遺産委員会(World Heritage Committee)は世界遺産条約に基づいて組織されており、締約国の中から異なる地域および文化を偏りなく代表するよう選ばれた21ヵ国によって構成されます。委員会の任期は原則6年間で、2年に一度開かれる世界遺産条約締約国総会で改選されます。日本も2003年より委員会に名前を連ねています。ただし、最近は多くの国が委員に立候補するため、任期を自発的に短縮する国もあり、日本の任期も4年間、2007年までとなっています。
世界遺産委員会は原則毎年1回開催され、新規に世界遺産に登録される物件や拡大案件、「危機にさらされている世界遺産」などの登録および削除、また、登録された遺産のモニタリングや技術支援、ワールド・ヘリテジ・ファンド(世界遺産基金)の用途などを審議、決定しています。

世界遺産には次の3種類があり、有形の不動産が対象となっています。
・顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など
・顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、景観、絶滅のおそれのある・動植物の生息・生息地などを含む地域
・文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている遺産

種類別世界遺産リスト登録件数は2006年7月現在、文化遺産644、自然遺産162、複合遺産24(合計830)。

世界遺産リストへの登録は、物件を保有しようとする国が、まず世界遺産条約の締約国になることが必要です。世界遺産リスト登録までの流れは次のようになります。

1.世界遺産条約を締結する。
2.国内の暫定リストを作成し、UNESCO世界遺産センターに提出する。
3.暫定リストに記載された物件の中から条件が整ったものを、原則として1年につき各国1物件(世界遺産を一つも持たない国を除く)をUNESCO世界遺産センターに推薦する。

1.各国政府からの推薦書を受理する。
2.推薦された物件に関して、文化遺産についてICOMOS(国際記念物遺跡会議)、自然遺産についてはIUCN(国際自然保護連合)の専門機関に、現地調査の実施を依頼する。

1.ICOMOSとIUCNの専門家が現地調査を実施し、当該地の価値や保護・保存状態、今後の保存・保存管理計画などについて評価報告書を作成する。
UNESCO世界遺産センターに報告書を提出。

1.ICOMOS、IUCNの報告に基づき、世界遺産リストへの登録の可否を決定する

世界遺産委員会が条約を円滑に運用するために定めた「世界遺産条約を履行するための作業指針」の中に示されている登録基準のいずれか一つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たすことが必要です。 これまでは文化遺産および自然遺産それぞれに登録基準が決められていましたが、「世界遺産条約履行のための作業指針」が2005年2月2日から改定されたことにともない、新登録基準は文化遺産と自然遺産が統合されたものに変更されました。ただし、すでに登録済みの物件の登録基準、および2006年世界遺産委員会で審議される物件の登録基準は、2005年2月2日以前に旧登録基準で推薦がなされているため、旧登録基準となります。新登録基準は、2007年世界遺産委員会で審議される物件から適用されます。
登録物件の適用となっている旧登録基準は次のとおりです。

●文化遺産
(i)人間の創造的才能を表す傑作である。
(ii)ある期間、あるいは世界のある文化圏において、建築物、技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展において人類の価値の重要な交流を示していること。
(iii)現存する、あるいはすでに消滅してしまった文化的伝統や文明に関する独特な、あるいは稀な証拠を示していること。
(iv)人類の歴史の重要な段階を物語る建築様式、あるいは建築的または技術的な集合体、あるいは景観に関する優れた見本であること。
(v)ある文化(または複数の文化)を特徴づけるような人類の伝統的集落や土地利用の優れた例であること。特に抗しきれない歴史の流れによって存続が危うくなっている場合。
(vi)顕著で普遍的な価値をもつ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または明白な関連があること(ただし、きわめて例外的な場合で、かつ他の基準と関連している場合のみ適応)。
自然遺産
(i)生命進化の記録、地形形成において進行しつつある重要な地質学的過程、あるいは重要な地学的、自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を代表とする顕著な例であること。
(ii) 陸上、淡水域、沿岸および海洋の生態系、動植物群集の進化や発展において、進行しつつある重要な生態学的・生物学的過程を代表する顕著な例であること。
(iii)類例を見ない自然美および美歴要素をもった優れた自然現象、あるいは地域を含むこと。
(iv)学術上、あるいは保全上の観点から見て、顕著で普遍的な価値をもつ、絶滅のおそれがある種を含む、生物の多様性の野生状態における保全にとって、もっとも重要な自然の生息・生育地を含むこと。




■議論

この章で議論された自然観というのは「欧米的自然観」であって、「西欧ではない地域の自然観はどうやって捉えられるのか」という話になった。

とりあえず世界遺産として認定された「自然遺産」や「文化遺産」の分布状況を確認してみたり、日本における自然観をあれこれ考えてみた。世界遺産の認定過程では「全人類にとっての貴重な価値ある遺産」という規準が設けられているものの、やはり欧米的な自然観が支配的なのではないかという話になった。

また日本における自然観はどんなものかということで、富士山をめぐる世界遺産認定を求める取り組みや、山岳信仰について考えてみたりした。

議論の中で、どうも自然観の構築性や「社会的自然」の観点を明らかにする上では地域ごとの宗教的な要素と自然観の関係に考慮せざるを得ず、その点ではガイア論はもとより今日読んだ章においても大いに不足があるのではないかという話になった。

2006-11-14 20:24 : 『空間の政治地理』(06後期・院ゼミ) : コメント : 0 :
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