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『空間の政治地理』第9章 レジュメ

第9章「空間、領域、建造環境」

9.1地理学の一般理論-不均質な空間編成の生産

 地理学は、均質な空間(space)を出発点として、これを政治・経済・社会が取り込んだとき、そこにどのように空間的な不均質性が生まれ出てくるか説明することを課題としている。
 これまで本書では、主に政治空間を扱ってきた。だがこれを、「空間と社会」という大きな枠組みで捉え直せば、政治空間は、広く経済空間・社会空間などを含む、経済・社会が生産した空間編成のありさまの一つに過ぎない。本章では、狭義の政治地理学にこだわらず、経済地理学および社会地理学が対象とする空間をも含みこんだまとめとして、空間編成に関わる一般理論を体系的に提示することとしよう。
 この空間の生産は、経済・社会のシステムの外にある客観的実在としての空間を経済・社会が自らの中に取り込む(包摂する)過程であり、同時に、この包摂の過程が経済、社会の中にもたらした矛盾を、新たな空間編成を生産することで経済、社会が乗り越えて、経済・社会本来のありさまを取り戻す過程である。これらの空間的社会過程が全体として、不均質な空間を編成してゆく。
 空間のふさわしい一般理論を構築して社会科学の中で分業の一翼を担うという地理学の課題は、計量革命に始まり、ハーヴェイらによって批判的な経済・社会理論へと拡張されて、世界の地理学が目指す共通の目標となった。

9.2原初的空間
 地理学を他の諸科学から区別するもの‐空間→空間とはどのようなものか、明らかにしておく必要がある。
 空間とはまず、私たちが意識するかどうかに関わりなく、宇宙にあまねく存在する客観的な実在である。このような存在論(ontology)上の特性を持つ素材的空間を、原初的空間(pristine space)と呼ぶ。
 原初的空間には、絶対空間(absolute space)と相対空間(relative space)という、二つの属性がある。
 絶対空間は、ニュートンが空間の本質とした属性であり、座標平面の広がりと同じように、連続的で均質かつ無限で等方的(isotropic)な広がりを持つ。絶対空間は、フランス革命のように普遍的な「自由・平等・友愛」が支配する世界である。
 相対空間は、ニュートンを神学的と批判したライプニッツが唱えた属性であり、諸物の相対的な位置関係の整合性として認識された空間である。絶対空間と対照的に、相対空間は「個別化・隔離・差別」が支配している。

9.3経済・社会に空間を包摂する
 このような二つの属性を持つ原初的空間を、経済・社会は自らの中に取り込む。これが、「空間の社会への包摂」と呼ばれる過程である。
 包摂(subsumption)とは、経済・社会にとって外生的なものが持つ性質の一切を、経済・社会がその中に否応なしに取り込むことをいう。
 否応なし‐経済・社会の側に、空間のどの性質を包摂しどれを包摂しないかについて、選択の自由がない。
 包摂‐形式的包摂(formal subsumption)、実質的包摂(real subsumption)。「包摂」はもともと資本主義の生成期に、労働過程が資本主義経済に取り込まれる過程を扱う概念であった。労働過程の実質的包摂は、一回限りの過程ではない。ある実質的包摂が新しい形式的包摂を生み出し、それがさらに実質的に包摂されるというように、螺旋状に何度も繰り返される。
 原初的空間についても、経済・社会への形式的包摂、ならびに実質的包摂の過程を考えることができる。空間の実質的包摂の過程は労働過程と同様、一回限りで終わるものではなく、螺旋状の過程をもって何度も繰り返される。

9.4絶対空間と、その形式的・実質的包摂
 絶対空間には、等方性があるから、絶対空間の中に置かれた主体が移動する方向も無差別である。だが、物体や主体がいったん作業空間として一定の面積を占めてしまえば、他の主体はもはやそこを占めることができない。
 経済・社会を構成する一つの主体や集団は常に自己の独立性と特質を維持しようとする。それが他の主体や集団から干渉されれば、その主体ないし集団の特質が変わってしまうので、主体や集団は、絶対集団の均質化をもたらす性向を阻止しなくてはならない。
 絶対空間の連続を否定するには、絶対空間に人為的に仕切りを設ければよい-空間の有界化(bounding)
 有界化は、絶対空間の無限の広がりから有限の区画を切り取ってできた排他的容器の中で、市場主体ないし社会集団の独立性を保障する。こうしてできた空間の容器は、それが占有する主体・集団のありさまによって固有の社会・経済的内実を与えられ、他の領域と比較して独自の経済的・社会的な意味を帯びるようになる。このようにして成立した空間の区画が、領域(territory)である。
 いったん領域が生産されれば、普遍的な均質化の成功など原初的な絶対空間の性質は、仕切られた領域の範囲内においてのみ作用するようになる。領域の内部は、その領域を支配する主体が帯びる特質によって同質化される。
 有界化されてできた領域を仕切るため、互いに接する二つの領域を支配する主体それぞれが合意した位置に、境界(boundary)が設けられる。
 境界の物理的な堅固さは、境界を挟んで接する双方の領域を支配する主体が互いに持つ経済的・社会的な関係性(contextuality)の表明であり、また、その境界が存在する地点が持つ自然地理的条件の反映である。
 ある領域を容器とする市場主体や社会集団は、他社と相互行為を行うため、自らの領域を取り巻く境界に何らかの透過性を与えておかなくてはならない‐境界の透過性(porosity of boundaries)
 空間的回避(spatial fix)-絶対空間に設けられた有界性を自己利益のために乗り越え、以前の領域内で生じていた矛盾を先送りに回避しようとする行為
 空間的回避の問題を解決するには、空間スケールの重層的な体系が持つ無政府性を、何とか調整しなくてはならない。
このような境界の透過性を、その領域を支配する主体が、ある意図を持って操作することができる。操作された領域性と、境界を透過する経済・社会の要素がもたらす連続性が合わさって、高次から低次へと複数のスケールにまたがる集合的絶対空間の層が折り重なる、重層的な空間編成に帰結する。

9・5相対空間と、その形式的・実質的包摂
 相対空間が持つ位置の特定という性質は、経済・社会主体の相互行為がなされる場所を実際に確定するために欠かせない。相対空間はまず、この個体化(individuation)という肯定的機能を、経済・社会に提供する。
 相対空間の位置には、自然的・物理的要素と、社会的要素の二つが絡み合っている。
 相対空間が持っている、隔離と区別・差別、分断の性質は、そのまま相対空間の否定的機能となり、経済地理学でいうリンケージ費用を規定する。
 距離減衰効果→産業の空間集積による経済効果
 集積が常に可能とは限らない→平面に広がる多数の主体・集団・供給拠点は、こうして交通・通信手段によって取りまとめられ、集積しなくとも社会組織や経済組織が実態としてまとまる‐空間統合(spatial integration)
 空間統合の程度は、一次元の線上の移動時間が少なく高速になるほど、また一次元の線の集合からなるネットワークが密かになるほど、高くなる。だが、完璧な空間統合は不可能である。ネットワークが密かになりすぎると、個々の路線には冗長性が増やす‐空間統合には限界がある

9.6相関空間とその包摂‐領域統合と土地利用調整
 絶対空間と相対空間は、もともと一つの原初的空間の属性である。また、その実質的包摂により生産された空間は、原初的空間と密接に絡み合っている。これらが総体として、経済・社会を支える空間を編成している。
 絶対空間と相対空間の属性が分かちがたく相関し、かつ、原初的空間と生産された空間が密接に相関した空間編成‐相関空間(relational space)
 原初的空間の「絶対空間」と「相対空間」という二元的属性は、相関空間において、「連続」と「分断」という別の二元的属性に転化するのである。
 相関空間が、支配的な経済・社会組織によって包摂されつくすには、形式的に包摂された相関空間が経済・社会と矛盾をきたしている状況を否定しなくてはならない→
相関空間の経済・社会への実質的包摂が必要とされる
 相関空間の実質的包摂の形態‐領域統合、土地利用調整
 領域統合‐ある一つの空間スケールにおける有界化によって実質的に包摂しきれていない連続性を、他の空間スケールとの関連をつけつつコントロールして、垂直的に重なる複数のスケールの集合的絶対空間の階層的な秩序を全体として編成する過程である。
 土地利用調整‐空間統合によって包摂しきれない結節点ないし交通路からの距離による分断の要素をコントロールし、集合的絶対空間のある一つの層の編成が、これを支配する経済・社会組織の立場から整合性をもつようにする過程である。

9.7建造環境‐土地に刻まれた相関空間の編成
 建造環境‐相関空間の連続と分断を、空間を支配する権力の意図通りに組み合わせて生産された空間が、原初的空間に刻み付けられて出来上がった人工的な素材空間
 建造環境は、特定の位置に固着化され、経済・社会を支えるのに不可欠な舞台装置を提供する。
 建造環境の物的なシステムの総体ないしその個々の要素は、特定の時点における経済的・社会的な関係性を表象した素材の塊である。
 建造環境は経済・社会組織の反映である一方、経済・社会に多様な反作用を及ぼす。→社会‐空間弁証法
 建造環境は、恐慌の回避と社会統合という二重の機能において、資本主義社会の安定に寄与する。
 建造環境は、地表に空間編成を刻みつけているだけではなく、人の心の中にも刻まれ、固着化される。
 建造環境の実質的包摂‐困難な課題として経済・社会の権力につきつけられたままとなる

9.8空間編成と社会運動、批判地理学
 相関空間の実質的包摂によって、今日のグローバルな空間は著しく階層化が進み、それぞれの領域はますます明確にコントロールされるようになった。
 より高次の領域を支配する権力による低次領域への封じ込めが、ある経済・社会構造のもとで支配の手段である限り、その空間編成が作り出す束縛を乗り越えることが、まず解放の手段となる。この点において、「自由・平等・友愛」という普遍性を持つ原初的な絶対空間の性質が自己を解放し実現する場の担保として重要である。→
空間的連続は解放と自己実現の基盤である。

 分断から解放されるための戦略:
 ①高次の空間スケールを支配する主体がまだ実質的に包摂しつくしていない相関空間や、過去の歴史的時代に生産された建造環境・空間編成に残され、支配権力が放置した連続性を巧みに活用するところから得られる。
  例:「非合法」外国人労働者の空間的移動
 ②草の根の側から既存の空間を領域に有界化している制度を相対化し、領域への封じ込めを当然と考えさせる日常意識と、それを生んだ制度を超克する社会運動を展開することである。
 ③Think and act globally, and think and act locally

2007-01-09 17:55 : 『空間の政治地理』(06後期・院ゼミ) : コメント : 0 :
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