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『人文地理学』第1章

第1章「自然・環境・人間」



1 「自然と人類の関係」と地理学

1.近代地理学の成立と自然環境
ストラボンやエラトステネス:自然環境の違いは、人間社会のあり方にも大きな影響を及ぼす
モンテスキュー:自然などの地理的環境が、人間社会の発展を規定する
フンボルトとリッター地理的所見の体系化の試み→「近代地理学の祖」
フンボルト『コスモス』:植物生態、熱帯気候、火山地形、旅行家としての経験
リッター『地理学』:自然環境と人間についての言説を比較検討し、体系化。
↑※ペシェルの地形学研究やリヒトホーフェンの地誌学の基礎に。
●個別の体系科学としての発展?地理学の統一性の喪失?
●その後に登場するダーウィン『種の起源』(進化論)の急速な普及と影響があった。

2.「進化論」と地理学
ダーウィン:社会変動の進化を生物の起源と発展のプロセスに応用。
●「自然淘汰」を考えを受けて、自然環境そのものの中に、人間社会のあり方を決定づける要因があるのではないか?と考えたフリードリッヒ・ラッツェル。

3.ラッツエルと環境論による地理学の統一
『人類地理学』:進化論の枠組みを用いて人類社会を考察
『政治地理学』:国家、人種、民族、生存を中心的に議論
『生存空間:一つの生物地理的研究』:「生活体」としての国家や、「生存空間」について展開
→ラッツェルは環境決定論者?(本人は認めてないが・・・・)
●「進化論」に内在する強力な「メタファー」性が、後の政治的プロパガンダに利用されたと理解すべき?

4.「環境決定文明論」の影響
センプル:『地理的環境の影響』『アメリカ史とその地理的条件』
ハンティントン:『文明と気候』(環境条件への対応→「挑戦と応答」)
●地理学の普及と通俗化に寄与/一方、アメリカの一部では進化論の教育が禁止

5.環境決定論と環境可能論
・ラッツエルによって、地理学は自然と人間との関係をめぐる研究を取り戻した。
リシュアン・フェーブル:『大地と人類の進化』
→可能論(ラブラーシュ)/決定論(ラッツエェル)という区分
→安易な一般化や必然性の原理を用いて説明することの危険性
●「生活様式」と「慣性」によって、人びとは自然環境から提供された可能性を採用する


2 客体としての環境・人間にとっての環境

1.有機体の環境近くと人工物の環境
19世紀後半の新カント派哲学の影響による、自然科学/精神(文化)科学の峻別
→地理学は、どちらか?
→いずれにせよ「客体としての自然」という前提を受け入れていたが、心理学や動物行動学の発展によって、次第に「環境=自然」という図式が崩壊していく。
●環境の新たな定義が必要!:人工物の存在、都市生活者の増大etc.

2.環境の概念図式化
ジョセフ・ソネンフェルトの図式(p.40図1-2参照)
1)地理的環境 2)利用可能な環境 3)知覚される環境 4)行動環境
→様々なレベル(スケール?)と、それぞれに対応する意味。

3.環境概念と環境問題
・利用可能な環境の拡大→自然環境破壊
・一方で、知覚された環境という考え方も登場する。
イアン・バートン&ロバート・ケイツ:『資源管理における自然災害の知覚』
→過去の災害についての経験や体系的知識の有無によって、人びとの知覚は異なり、知覚の違いが環境の相違を生み、自然災害に対する事前事後の行動にも差異が生まれる。

4.「知覚された環境」の構造(p.46図1-3,図1-4)
ケヴィン・リンチ『都市のイメージ』:都市の「イメージのしやすさ」「分かりやすさ」
グールド:「住んでみたい地域」の順位から、地域イメージや偏見を明らかに。
→人口移動の背景。
●行動地理学や都市計画分野など、イメージと行動の結びつきに関する研究が展開。

3 「人間・環境系」の揺らぎ

1.『沈黙の春』と『成長の限界』
レイチェル・カーソン『沈黙の春』:経済の仕組みの問題が局所に顕在化したものが公害であるという認識。
メドウズ教授ほか『成長の限界』:資源の消耗や汚染の増大によって100年以内に人口と生産の両面が破局すると予告。

2.持続可能な開発と循環型社会の構築
1972年、第1回「国連人間環境会議」 1992年、「持続可能な開発」
ノルウェーのブルントラント首相ら:『われわれの共通の未来』(1987)
●循環型経済開発、環境負荷をかけない経済活動を目指し、貧困の撲滅、社会資本充実への取り組みが大事であるとの訴え。

3.人文地理学にとっての古くて新しい問題:「環境」
・人間の活動が自然を攪乱し、回復不可能なダメージを与えかねない状況が生まれた。
・地球科学全般が急速に発展し、人文地理学が想定していた自然像が大きく変化し、人文地理学の成果は「陳腐化」した。
・技術の進歩と経済の拡大によって「利用可能な環境」が「地理的環境」(p.40のソネンフェルトの図式を参照)そのものに取って代わろうとしている。
・地理学の得意分野として、地理的情報の体系的な収集と解析による貢献→地理情報システム(GIS)




■コメント■

●「環境」とは何かという疑問に対して、我々が所属する社会環境論では、「環境外在論」に対して「主体―環境系論」を唱道している。環境決定論も環境可能論も、人間が働きかける対象としての環境が想定されているが、「主体―環境系論」においては、端的に言えば人間とても「環境」の一部であるという考え方が示されている。

●本章では、人間の外部にある存在としての環境に対して、どのように働きかければ不可逆的な環境問題の深刻化を防げるのかという認識の枠組みが示されており、その点では環境/主体という二元論を保持している言える。

●環境問題は、「私とは別の、誰かの問題」としてやりすごせない点が重要である。環境ホルモンや重金属が身体に蓄積される問題も、オゾンホールや温暖化の問題も、全てが「私の問題」として身に降りかかってくるが、私だけでは何ともすることができない。環境問題に対する個人的な対症療法の多くは商品化され、「環境問題が大きくなるほどGDPが増大する」というパラドクスを抱えている。

●環境問題とは、私を含む「環」や「系」の範囲が地球全体を覆い尽くしていることから生じる問題でもある。私は地球上の広範囲の影響を受け、同時に私の活動が広範囲に影響を与えることになる。それは、たとえ無自覚であったとしても、政治、経済、自然等の巨大な仕組みや体系に組み込まれるような形で私が存在しているからである。私のアイデンティティとも無関係なのである。この「環」や「系」は、グローバル化が進むほど結びつきを強め、変化の速度も度合いも年々大きくなっているように感じられる。

●たとえば最近、原油価格高騰やCO2排出量削減の取り決めを受けて、化石燃料からエタノール等の生物由来燃料への急激なシフトが起こり、それに伴いエタノールの原料となるトウモロコシの高騰が報道されている。トウモロコシの値上がりを受けて、オレンジや大豆の作付け地が原料用トウモロコシの生産に取って代わり、例えば油や豆腐、トウモロコシ飼料を使う食肉等も急激に値上がりしている。こうした動きは、消費者であり有権者でありCO2排出者である私を含む自然環境―生産―燃料―食料―政治が一体となった「環」や「系」として理解する必要がある。

●このような現代の環境問題の構図を前にすれば、p.40で示された「人間にとっての環境」の図式は、モザイク状に錯乱し混沌とした状況となるであろうし、こうした環境問題を認識することができるような「知覚された環境」を提供することは、国民国家を形成するための「知覚された環境」を提供する社会科教育と対立することがあるかもしれない。つまり、「国益の確保」と「環境問題の解決」が対立する局面においては、「主体―環境系」のスケールをめぐる争いが生じる可能性がある。

●またダーウィンの進化論における自然淘汰のメタファ(比喩・暗喩)は、たとえば「環境問題を乗り越えられない途上国は苦しんでも仕方ない(環境適応能力がないから仕方ない)」「社会(環境)変化に耐えられず自助努力できない地方自治体(たとえば夕張市)は潰れても仕方ない」という言説を再生産する可能性がある。

●つまり、自然環境問題だけでなく、社会的な環境も「外在的な環境」として位置づけられることで、自然淘汰や自助努力のメタファーを用いて説明されてしまう可能性がある。その点では「環境問題」をめぐる言説(捉え方、考え方、言い方)は、自然環境や地球全体の環境だけでなく、都市環境や地域環境として置き換えながら改めて考える必要があるということなのかもしれない。

■ゼミでの議論■
環境問題という、参加者の関心を持ちやすいテーマを中心に議論が進んだ。専門家が管理したり、細分化されたりするサブシステムと他のシステムとの間では、対話が成立しにくく、価値観や評価を共有できない。判断が共有されず、議論の分かれている生命倫理の問題や、水道水に含まれる発ガン性物質への対処など、「一つの答えが出されていない問題」も数多い。二元論を乗り越えるにしても、どのように乗り越えるのかが大事であるという点を考える必要があるという意見は尤もであったものの、現況を見る限りなかなか困難な課題であるということも容易に想像できた。

2007-05-24 19:56 : 『人文地理学』(07学部ゼミ) : コメント : 0 :
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