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『社会を越える社会学』第6章後半

第6章 居住(後半) pp.250-281



3.ブント

ブント(Bund)
   市民社会のネットワークの、国境を越えた水平的な拡がりを前提としたコミュニティの形態。シュマーレンバッハによると、ゲマインシャフトでもゲゼルシャフトでもない、第三の可動的なソシエーションであるという。

)ブントの特徴
・共感と情感を基礎として、加入、退出は自由に選択される
・ゲマインシャフトのように永続的・安定的でない
・政治的・社会的にではなく、文化的に規定されている 
・ネットワークを通した、外部から不可解な知識と技能の修得
・生産物、労働形式の商品化に対する抵抗意識→成員自身による生産と消費

)ブントの例
   食品、ジェンダー、動物、菜食主義、日曜大工、ペット、代替医療、郷土など

)マッケイによるブントの特徴
  ①「自分たち自身の区域、自分たち自身の空間」を構成
  ②非永続的な居住
  ③視覚だけではなく、音など他の感覚によっても規定された居住空間
  ④独立した集合体とコミュニティからなるネットワーク(「侵入者」としての側面も)
 
トランスナショナルなネットワークの増大
   社会の高度な個人化、市場化したことの意図せざる結果として、互酬的な関係(贈答、ボランタリーな仕事、自助ネットワーク等)に基づいたネットワーク化された営為が増加。そこでは、市場関係をはじめとして構造化され規整されていると考えられる世界への抵抗の場として象徴的な価値が必要とされる。

 )トランスナショナルなネットワークの成長の要因
  ・安価な航空旅行の可能
  ・ネットワークの成員間をつなぐ新たな通信テクノロジー
  ・1960年代の遺産としてのグローバルな公衆の増加

  ⇒国や企業の情報独占を阻止し、また自らによって情報の発信も可能に

4.文化遺産、国民、ディアスポラ

国民の歴史(ナショナル・ヒストリー)
   国民の歴史は、民族の来歴として氷河の時間にのせられた独特のストーリーとなって伝えられるが、実際にはそこで伝えられる伝統や歴史の大部分は19世紀末のヨーロッパで発明されたものである。この発明によって、特定の時間と場所が国家によって神聖化される。
   
 国民意識(ナショナル・アイデンティティ)の誘発
   神聖化された特定の時間と場所は、とりわけ交通、マスメディア、通信手段を介した身体と想像の移動によって多くの国民に共有されるようになる。英国で最初に開かれた万国博覧会、アメリカ・オーストラリアでの建国を記念した博覧会などは、大量輸送とツーリズムが基礎になっているとともに、ナショナル・アイデンティティを表現する方法として利用された。

  ⇒身体の移動性は、自分たちの社会が領有・要求する特定の領土と結びついた共通のアイデンティティの共有に重要な役割を果たす

 )ナショナル・アイデンティティ形成の装置
  ・国民文化
    →国立博物館の設立、芸術家や学者の輩出、国民の偉業の位置づけ
  ・身体的旅行
    →イングランドにおける名所旧跡の観光地化
・自民族的表現
→偉業の記念碑があふれたイングランドの田園と、追悼碑が多いアイルランドやスコットランドの田園
  ・特徴的景観
    →イングランドの田園主義イデオロギー、スイスのアルプスの高空など

国民的遺産の変容
  前述した「国民的遺産」として理解されてきたものは、一定であり、国民的エリートの利益を代表し、適合していることを前提としてきた。しかし、この単一的・排外的な国民的遺産には、相互に結びついた3つの重要な変容の趨勢がみられる。

)様々なグローバルな「舞台」の出現による国家とアイデンティティのスペクタクル化
   オリンピック、万博などのメディアを通したグローバルな「舞台」での国家のパフォーマンスは、国民を一体化させる装置であり、国民文化の想像に物語可能性を提供。
一方でこうしたイベントでは、消費者の欲望、個人の選択、コスモポリタニズム、市場の自由などが強調される。グローバルな移動が必然となった現在の世界においては、従来のように領域が国民の自己規定の中心にはなりえず、マスメディアや大規模イベントで流通する特定の場所・景観が国民の自己規定の中心となっている。

)国民的エリートではなく「小集団」による新たな記憶や遺産の形成
   オーストラリアのアボリジニ、英国における産業遺産等の保護論者、スコットランドのゲール文化の「伝承者」など、ローカルな特色を持ったソシエーションは、「自分たちの歴史」を守るために、国民的エリートに対して異議申し立てを行なっている。特に、スコットランドのように豊かさから生まれた市民的なナショナリズム(「ネオ・ナショナリズム」)は、複合的なアイデンティティを特徴としている。

)ディアスポラやトランスナショナルなアイデンティティ
   ディアスポラ文学による単一的な国民的遺産の危機、ポストコロニアル論者による文化の「異種混淆性」の主張。いかなる「国民」も様々な転地、あいまいな位置づけを経験しているのだから、大部分の社会は国民(ネーション)でも、国民国家でもない。
  
  ①ディアスポラの形態(コーエンによる)
   ・被害者ディアスポラ:アフリカ人やユダヤ人
・労働ディアスポラ:米国のイタリア人
・交易ディアスポラ:レバノン人や中国人
・帝国ディアスポラ:英国人やシーク教徒
・文化ディアスポラ:「ブラック・アトランティック」と呼ばれるカリブ人

  ②ディアスポラ社会の特徴
   ・社会維持の条件としての身体的旅行、想像上の旅行、バーチャルな旅行
・同じエスニック・グループ成員との連帯による国境を越えた交易の組織化
   ・受け入れた多元主義的社会への、創造的な寄与

   一方で、ヨーロッパでは「ヨーロッパ人」というトランスナショナルなアイデンティティも出現している。ただし、これにははっきりとした階級文化がみられ、最もグローバル=最もヨーロッパ的なのは資本家、専門家である。

  ⇒複雑な移動によって生じたディアスポラやトランスナショナルなアイデンティティは、同時に複雑な移動を生み出す力になる
5.結び

居住の形式と「氷河の時間」
  氷河の時間は国民国家のクロック・タイム、身体的旅行、バーチャルな旅行のもつ瞬間的な時間とは異なり、時間を「自然の速さ」まで落とそうとする。変化は何世代にもまたがり、その変化は氷河の文脈と環境に依存している。物理世界の「タイムスケイプ」にも類似していることから、一部では人間の生活は物理世界=自然の時間を貫く氷河の時間と歩調を合わせるべきだという意見もある。

)氷河の時間をめぐる議論
・人間自身の内省による未来への意識と、同時に高まる過去への関心
・瞬間的な時間のもつ「没場所性」に対する抵抗
   →場所の速さを落とし、場所を「コミュニティ」によって把握
・身体的に関係のある場所や、そう「なるかもしれない」場所との関係の中で発達
   but 複数の氷河の時間の間に軋轢を生じさせる要因
・女性のほうが氷河の時間を拓く力をもっているという主張

次章に向けて
  国境を横断するスケイプやフローによる居住の形式の変容によって、シチズンシップの権利と義務がいかにして再構築されつつあるかを論じる。


<論点>

・ アーリによればおそらく日本の「国民的遺産」も変容しているのだろうが、三番目に挙げた趨勢、ディアスポラやトランスナショナルなアイデンティティの存在は日本の「国民的遺産」の変容においてどのような役割を果たしているのか。というよりも、そもそもその趨勢は日本に存在するのかどうか。

・ 「女性のほうが多くの場合氷河の時間を拓く力を持っているとも主張されている」(p280)とある。その根拠として女性の出産、育児といった活動が挙げられているが、特に先進国では出産しない女性も多かったり、一方では専業「主夫」も北欧を中心にちらほら見かけるようである。社会的な男女の分業ならまだしも、こうした生物的な男女の差異が「氷河の時間」という概念を理解するのに役立つのかどうか。


2007-07-19 16:32 : 『社会を越える社会学』(07前期・院ゼミ) : コメント : 0 :
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