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『都市空間の地理学』第8章

第8章 ジェームス・ダンカンとナンシー・ダンカン
―テクストとしての都市空間―

1. 景観をテクストとして読むとは
「景観をテクストとして読む」とは、
目に見える景観から、その背景にある目に見えないまとまりやパターン、作者の意図やメッセージを読みとろうとすること。(例:「この街はもともと誰がどういう目的で作ったのだろう」)

「テクスト」とは、
・ 誰かが何らかの意味を込め、他の人々がその意味をその人なりに読み取る、この記号体系。
・ 文化事象に適応されると、文章や言葉のような性質を持つと見なされ、(時には隠された)メッセージを語る。
・ 地理学では、都市景観に比喩的に使われている。
・ 由来:フランス人のロラン・バルト(記号学者、文芸批評家)が初めてテクスト概念を用いて文化事象を分析しようとした。

↓ロラン・バルトに影響され
ジェームス・ダンカンとナンシー・ダンカンは初めて本気で都市景観をテクストとして読むことを考えた。
↓しかし
「見えている景観から、目に見えない何らかのパターンを読み取ろうとする考え方」は地理学では伝統的


2. なぜ,わざわざ「テクスト」なのか
◇ 地理学の伝統的な景観論
主に農村地域・先住民の居住地域を対象(例:ラントシャフト論、カール・サウアーらの文化地理学)

◇ ダンカンらの景観論
【特徴1】
対象は都市。都市景観に隠されたイデオロギー(思想や価値観)を見出そうとする。
⇒つまり、どのような景観も誰かが何かの意図を持って作り上げたものであり、景観を政治的な産物だと読み取る。
⇒このような意図をもった景観はレトリックを含む。(レトリックとは良く見せるためのテクニックであり、都市景観の場合は権威ある建築デザイン、由緒ある場所、人目を引く色での飾りつけなど。)

【特徴2】
景観が発信するメッセージを誰もが同じように解釈しているわけではない、と考える。
⇒メッセージは社会的な立場によって、読み手は異なる受け入れ方をする(例:国を治める国王、政権奪取を伺う貴族、支配を受ける農民)
⇒テクストとしての都市景観は流動的である。

【特徴3】
都市景観は他のテクストとも深く繋がっている、という考え方。
⇒都市景観とは、景観以外のテクスト(文章・教典・絵画・儀礼など)に込められたメッセージが建造物という生活環境へと変換されたもの。
⇒景観の意味を読むには、景観以外のテクストも読み込み理解が必要。
テクストにあえて書かれていないことを明らかにすることが景観の作り手の意図をより理解することになる。「行間まで深く読まなければならない」(p125)


3. 景観に込められたメッセージ

【事例1】―中世スリランカのキャンディ王国の首都プラン
⇒景観の解釈が政治的な動きに繋がった例
(首都プランは、ヒンズー教や仏教の宇宙観を表現した景観により、国家支配の権威や正当性を主張。さらに反乱貴族は、国王が首都プランを改築した際、伝統的な様式から逸脱したとして王政を打倒した。)

【事例2】―近現代カナダ・バンクーバー市の住宅街
⇒景観をめぐる政治的な闘いの例
(世界恐慌・第2次世界大戦により、元々英国風の高級住宅街であった住宅街に低所得者用の集合住宅が増加。これに反発した地主達が高級住宅街としての質と景観を取り戻すために市の開発政策に働きかけた。)


【事例3】―アボリジニの村落空間
⇒2通りの景観解釈(自然環境としての景観、神話的な存在としての景観)
⇒誰も競争しないテクストの読み方(理由:景観の作者と読者が住民自身だから)

【事例4】―西洋人による東洋の景観の描かれ方
⇒政治的な読み方
(西洋人は東洋を、彼らのイメージで語り、探索されるべき未踏の地と美化し、後進地域であると貶め、自らの植民地支配を正当化した。*参照:エドワード・サイード『オリエンタリズム』)


4. なまの景観と描かれた景観

<景観の語義>
① なまの景観 
② 描かれた景観=景観表象(景観について描かれたもの。例:写真、絵画、記事)

ダンカンらは①②のどちらを分析するにせよ、景観に込められた要素、作者のイデオロギーを読み取ることを重視した。

<景観・景観表象に込められたイデオロギー(ものの見方や考え方)>
① なまの景観:作者の意図や価値観が込められている
② 景観表象:2重の価値観が込められている(景観の作者+その景観の描き手)
*この点において、なまの景観と景観表象を同列に論じることはできない

ダンカンらやバルトのテクスト論とは、
一見暴力的でない都市建築やそれを表現した図像は、上品に見える武器であり、
人の価値観の覇権をめぐる争いや闘いを問題にしている。


5. まなの景観の分析の難しさ

◇ バルト
・ ダンカンらはバルトを3点において積極的に評価(①ガイドブックの記述内容、②エッフェル塔の持つ意味、③東京の都市空間についての分析)。
・ 都市景観のテクスト論(記号論)に可能性を見通したが実際は、景観表象、都市景観の特定の場所のみを分析=都市空間全体は扱わなかった。(これは日本の都市論(東京論)も同様)

◇ 日本における都市のテクスト論
* 4つのアプローチ(p131)からも分かるように景観表象が重視。
* ダンカンらも、なまの景観から景観表象へと関心を移行していくようになる。

実際の景観全体を文章のように解釈することは困難だから

◇ 景観をテクストとして読むために
・ 都市景観を文章や言葉と比較し、記号体系としてどこが類似・相違しているのか明確にする必要がある。
・ しかし、理論的な考察は1980年代に進められたが、未だ課題として残っている。

◇ 現在の地理学の理論的な流行
筆者は「テクスト論から身体論や記憶論へと移った観がある」(p132)。


論点・疑問点
・ ジェームス・ダンカンとナンシーの位置付け。戦後の研究対象を都市へと移行を先導し、テクスト論を都市景観の解釈学に適用してきた先駆者として捉えればよいのか?
・ 景観をめぐる政治的な闘いの例で、身近なものにはどんなものがあるだろうか?


2007-11-30 18:28 : 『都市空間の地理学』(07後期・院ゼミ) : コメント : 0 :
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