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第6章 あるけど、ないコミュニティ 町内会のゆくえ

第6章 あるけど、ないコミュニティ 町内会のゆくえ
 
keyword:地域コミュニティ、町内会、ガバナンス、NPO、社会関係資本


はじめに―ある地域リーダーの想いから(後述)

1.日本における地域コミュニティの歴史
《現状》
定義として
地域コミュニティ:一定の地理的範囲を基盤とし、その地域に関わる様々な活動を自主的・主体的に展開している社会集団の総体

既存のコミュニティの限界・衰退から、「新たなコミュニティの在り方」をめぐる議論の活性化

1968年以降段階的に町内会・自治会への参加率が減少

《町内会の源流》
地域コミュニティの変遷
明治期:限定的な自治・公共的課題においての中央に対する従属
    →最終的には地方行政組織の業務まで補完
戦時期:「総力戦」の下で行政機関と直結・配給や資源回収、庶務・事務まで

《町内会の廃止・再生》
戦後GHQの指示により解体

名称を借り、形態変化によって存続 ⇒存続の基盤は流動的

戦後高度成長における「生活様式」の私事化
⇒人同士のつながり(社会関係資本)が薄れる=基底的コミュニティの衰退
⇔住民運動・市民運動の増加
⇔既成の地域住民組織の衰退 

2.コミュニティ政策の展開
町内会組織:行政機能の補完、公共サービス的側面を持つようになる

コミュニティ政策:「対話と付き合いの場」の構築に傾倒していく


《伝統的秩序》
中央―地方の権力構造からみた町内会
⇒委託・委任先としての行政末端
⇔補助金、情報を見返りとしたロビイング機能が期待される

⇒地域住民が「独自に活動するゆとり」がある場合、行政との関係は連帯方式となる。

《都市化・個人化》
・「コミュニティ」
→「伝統的住民層」から「市民型住民層」への転換を想定していた
  ⇔
  町内会を排除しようとする一方で、基幹的組織として町内会が必要であった

高度成長での都市化・個人化
⇒町内会との距離、時には嫌悪感
 ⇒半強制加入として高い組織率を維持(=非自発的参加)
   ⇔
  「加入すれど参加せず」=『あるけど、ないコミュニティ』の形成

《地域自治区の形成》
・モデル・コミュニティ地区認定(71~73)
・コミュニティ推進地区認定(83~85)
・コミュニティ活動活性化地区設定(90~92) ⇒これらにおいても町内会は中核的な組織として位置づけ

21世紀以降の地方分権の動き
「コミュニティ」政策が、施設整備から転換
・「地域自治区」の創設、「地域評議会」の設定 → 行政、評議会、自治体の三層構造が成立

《行政の効率化と住民自治活動の背反》
地域自治区:合併以前の市町村を地理的範囲⇔協議会:小学校区を範囲
☆行政区域と生活空間は必ずしも一致しない。
 ⇒各機関の領域が曖昧であることは参加、意志決定にたいして足を引っ張ることにならないか?

これらは公共性を論じるうえでの基底の担い手として重要な要素である

3.町内会の存在価値
《町内会の基盤》
町内会:高い組織率を誇るも半強制的な参加によってであり、「個人の自発的な参加を基礎とする組織」とはいいがたい。
→この状態で表面的に活発な町内会の成功事例の模倣は、失敗例の踏襲につながる

地域再生:「小さなニーズにこたえながら地道な努力のを重ねて活性化」し、「心をとらえたソフト事業が導いた活性化は持続可能性が高い」との指摘

《サバイバルの岐路》
・山積した業務と町内会のキャパシティの限界
 ―業務:行政情報の連絡、回覧、広報配布、清掃、美化、防犯、防災、以下多数
 ―役職:時間にゆとりある退職世代が兼任、一手に担う傾向
 
☆継続可能性(=固定化)という点での限界・危機・弱体化

町内会→オープンな参加による住民自治を通じての地域活性化が不可欠(筆者結論)

4.「あたらしい公共」
ガバナンス:公共性の規定、秩序化の過程を中心とする
→ローカルガバナンス:「新しい」「公共性」-地域社会の自発的な動員、資源配分の変革が求められる。
 ⇒過去の日本的「公共」 名目:社会秩序維持、不特定多数の利益維持、安定、増大
             実質:争点の選択、決定といった社会的メカニズムの「官」による独占
 地方分権の流れとして地域への権限移譲(故に、ローカルガバナンスの重要性が上昇)

《「公」の再編成》
地方分権化:資源投入の前提として、住民参加・協議・協働・情報公開 (理想?)
 ⇒住民と行政の連帯がこれまで以上に求められる
  ex)阪神震災時の住民連帯を平時においても発揮するようなもの

《町内会の自己変革》
・町内会に求められるもの
 →広域的な共同・連帯、影響力の強化 ⇔閉鎖的な地域内社会関係に留まる=先細り
・流動的な対応、多様性の創出、新しい公共への行動主体としてのNPOへの期待

・社会関係資本
→ブリッジング:結びつけ、関係性を持たせる機能。橋渡し
→バインディング:結びつきの強化、結束。

「自由で個性豊かな社会」
→捜索する問題に対して、多層的、公範囲なネットワークの創出と、問題に対する個別的な対応
 ⇒その中での町内会の立ち位置

《結び》
「あるけど、ないコミュニティ」の改革
「もめて徹底的に話し合った方がよりよいものが生まれた」
コミュニティの住民の自律性が根本的には必要であり、その確立には「公共心の覚醒」が必要
 ←コミュニティの文脈の発掘もそれを呼び覚ます重要な要因の一つ(⇒10章)

5.はじめに――ある地域リーダーの想いから
Aさん
・行政と住民の希望のミスマッチ
・伝統的規範の威圧感
・地域のつながりの強さと行政の政策の受け入れの相関
⇒マンション住民の連帯、自治会、NPOの創設を、ホワイトカラー層9割のモダンな高層集合住宅にて再現しようという努力
⇔行政企画のイベントへの町内会有志によるパレードにはAさんは参加しなかった

論点
1: 自分の知っている・体験したことのある・自分の地域で見聞きしている町内会活動、地域コミュニティを挙げてみる。
2: 先にあげた活動、コミュニティは活発か、それを踏まえて住民参加への動機づけには何が必要か、何が阻害要因となっているか。


<第1班>
論点1「自身の出身地における地域活動」

P1030307.jpg


・目的
まず自身のバックグラウンドについて話し合い、相手の価値観への理解や地域活動の構造についての見解を深める。

・出身地について
HD・・・昭和に開発された町出身(神奈川)
KS・・・ニュータウン出身(神戸)
OG・・・ニュータウン出身(滋賀)
KN・・・電車がない農業中心の町(山梨)

・地域活動について
HD・・・防犯パトロール、芋煮会など
KS・・・自治会が解散した
OG・・・最近になって認められた自治会
     力が入っている地域の運動会
     地蔵盆(地蔵自体はない)
KN・・・出し物(全体運動)
     農業器具の持ち合い
     ゴルフ大会(青年部や壮年部などに分かれて)
     子育ての相互扶助組織

論点2:「地域活動を阻害する要因とその構造について」
P1030310.jpg

・目的
上で話し合った事を基に、地域活動を阻害/促進させる要素について話し合う

・内容
まず、「地域活動の意義とは?」という話で、セーフティネット形成に役立つという点で合意が成立。
同時に人間関係を形成する必要ができるために、色々と面倒事もできるという面についても指摘があった。
なぜならば、地縁を形成する際「イエ」という枠組みの存在が鍵となるために、
その「イエ」-「地域」力学に従う必要がしばしばあるためである。

次に、実際に地域活動がどのように受け入れらているかという点に着目。
子ども―青年―親―祖父母という「世代」で受け入れ方が決まるのではという点を指摘した。
世代で受け入れ方が決まる理由の中でも一番重要なものとして、「地域における役割」があるという話をした。
このことから、労働に対する関わり方(あるいは、どのように関わっていると見なされているか)が個人の社会的評価の契機になるとも考える事が出来る。
例えば、「OL=結婚相手を探しに来ている」というロジックのように、労働態度と個人評価(社会階層評価)のつながりが密接であると考えることができる。

そして、「受け入れる顕在的動機」にも注目。
「楽しいから」「しかたがないから」「伝統だから」といった、「何を動機を表現する言葉として用いているか」という点は重要。
確かに、「つきあいだから」かつ「楽しいから」そして・・・といったように、動機は幾重にも重なっていることが当たり前ではあるが、同時に「動機語として何が用いられているか」という点に着目する事は、表面(建前)の機能理解につながる。
それは、社会学的問題の理解及び社会問題の理解という二重の意味で重要である。
つまり、「表面上このような言葉を用いることは、人間のいかなる性質をあらわしているか」という点と、
「建前上このように言われている事がどのような問題を助長するか」という2点である。

・総括
結果的に、農業主体の町出身であるKNさんの町が一番地域活動が盛んだった。
これが必然だとするならば、テンニースがいう所の「ゲゼルシャフト/ゲマインシャフト」の議論と重なり、理解しやすい。
地域・自治体活動が盛んであるメカニズムとして、「その地域における定住者の割合」や「地域の人たちが一緒になって解決しなければいけない問題」の存在があるように思われた。
去年の卒論のテーマと重なる点でもある。

・反省点
地域活動を引き起こす力学について言及することはできたが、「なにがきっかけとなりうるか?」/「いかに働きかけ、よい地域活動を作るか?」という点(最初の点)や、「どのような地域活動は維持するか?」という点(継続する点)についての議論が足りなかった。
かつ、マクロ視点も同時に足りていなかった。産業構造や土木・建築技術の進展、などの「どのような時代に生きているのか」という視点が足りていなかった。
ただ同時に、時代論をする場合には「直線的時代観」か「円環的時代観」なのかという、歴史観/時代観についての議論で時間を幾分かとる必要はあると考える。
それと、「デザインの問題」とされる点についても言及できればなおよかった。
「イギリスにおける電力問題の解決の為に、電機ケトルの容量を減らす」という話もあるように、「問題解決のカギは思考に直接影響を与えるのではなく、思考/欲望に関わる道具に対して解決策を講じる」という見方もある。
この見方ができると非常に強い。(http://digitalcast.jp/v/19634/ より)

<第2班>
論点1
P1030308.jpg
<議論の目的と手順>

メンバーが知っているor身近にある地域コミュニティを列挙し、特徴ごとに分類する。地域コミュニティ内あるいは他コミュニティ間にある社会関係資本を見出す。

<各々のコミュニティとその特徴>

①包括的コミュニティ…商工会、観光協会、青年会議所
特徴→地域企業や商店の活性化を促進することで、伝統的地域コミュニティを持続させる特徴を持つ。一方で外部の社会にも働きかける。

②伝統的コミュニティ…町内会、青年団、農会、PTAなど
特徴→地域の構成員のつながりを持続させることに重きを置くコミュニティ。しかし元々必要にかられて半強制的に参加するコミュニティであるため、個人化が進むと淘汰されやすい。ムラ社会的側面が強い。

③新しいコミュニティ…地域NPO、市民団体、ライオンズクラブ
特徴→特定の目的(社会奉仕、地域活性化、問題啓発など…)を持つコミュニティ。既存のコミュニティで解決できない部分を補う。内外にかかわらず多様な構成員によって組織されるが、持続性に課題。

<社会関係資本>
かつては②の内部に強固に存在したが、近年の個人化や地域の過疎によって資本蓄積量は減っている。②を包括し外部発信性を持つ①についても構成員が②の人間 である場合が多く、同様のことが言える。③の役割は②や①の内部の資本蓄積量を時代に合わせて再び増加させることにあるが、その前提としてまず③自身が既 存のコミュニティとの社会関係を築く必要がある。

論点2
P1030311.jpg

<議論の目的と手順>
上で話し合った内容をもとに、社会関係資本を充実させるコミュニティのあり方を時代の流れに合わせて考察する。そのために①~③のコミュニティが持つ限界性を明らかにし、それらの弱点を補うものとして新しいコミュニティを位置づける。

<現代地域コミュニティの限界>
か つては②の伝統的コミュニティが地域の結束を高め、①がその経済的サポートをする存在として機能していた。しかし農村→都市への人口移動、核家族化の進行 によって、既存のコミュニティの構成員の減少、またその閉鎖的性質ゆえに新しい住民が構成員に成り得ない状況が生まれている。世代や居住年数によるコミュ ニティの分断が存在する。地方では過疎化と高齢化が進み、若者がコミュニティの担い手になれない。都会では個人化が進んでおり、そもそも居住地域にコミュ ニティを作る必要性を感じていない人が多い。

こうした既存のコミュニ ティの弱体化によって社会関係資本が軟弱なものとなった現在、個別対応の形で存在するのが③である。成功例として地域社会のコミュニティビジネス、災害被 災地の復興支援、環境・景観保全活動、地域学童教育などがある。しかしこれらはすべて既存のコミュニティでは対応できなくなったものを部分的に補う側面が 強く、同じ地域内にも恩恵を受ける人とそうでない人を生み出す。また担い手が外部の人間や既存のコミュニティの比較的高齢な人間であることが多く、ひとた び表面的に問題が解決した形になると、コミュニティ自体が持続しないという面もある。結局のところ、さらなる個人化を促進させる結果にもつながる。

<将来の展望と限界>
こ のように既存のコミュニティとそれを補完する部分的コミュニティは、それぞれ限界性を持っている。両者を包括するものとして、行政などがそれぞれのコミュ ニティの構成員を繋ぎ、新たなコミュニティを創りだす場を提供していくことが求められる。いわゆる“ブリッジとしてのガバナンス"であり、そのガバナンス の主体はあくまで構成員であって行政ではない。しかし、こうした新たなコミュニティが個人化が進む現代社会において果たして実現可能かどうかについて、有 効な回答を出すことができない。参加のインセンティブを生み出すことは容易ではなく、持続性にも問題がある。限界性を克服するための新しいコミュニティそ のものが、プランニングの段階で既に限界性を持つという袋小路に陥っているのである。

<第3班>

P1030305.jpg

P1030309.jpg


地域コミュニティには、子供会、婦人会などある程度強制力を持ったものから、住民同士の交流を図る運動会やボーリング大会、住民主体で行われる子育てサークルなど様々なものがある。
地域コミュニティの中には形骸化、マンネリ化したものもあり、そのような地域コミュニティでは主体的な活動が行われにくくなってしまっている。
社会関係資本としての人とのつながりを求める人が地域コミュニティに参加していくことで、主体的な活動が促されていく。

<総合司会コメント>
個人の経験から具体例を出すとき、それは当然、個人の住む地域の特徴を大きく反映したものとなる。そしてまた、必要とされるコミュニティの種類も場所によって変わってくるだろうと思う。今回の議論参加者の出身は様々で、とても興味深かった。そして、今後のコミュニティの充実のための議論も三者三様であった。

東日本大震災以降、「絆」という言葉がいたるところで使われ、コミュニティの重要性が語られている。もちろん、コミュニティは大切である。しかし、今回の議論で様々なコミュニティの性格が、断片的ではあるが、分かった気がする。土地ごとにコミュニティは様々である。したがって、今後、新たなコミュニティ作り、コミュニティとコミュニティをつなぐ工夫、コミュニティへの参加を促す動機づけ等、コミュニティについての議論をする際、ひとつの理想的なプランではなく、場所に応じて変えられる柔軟な解決策を考えていかねばならないのではないか。



2014-05-31 23:47 : 『都市のリアル』(14年度学部ゼミ) : コメント : 0 :
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