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グローバル・シティ 第3章 対外直接投資の新しいパターン

第3章 対外直接投資の新しいパターン

資本の再配置を示す指標のひとつ:「対外直接投資指標(FDI)」

○本章の目的
対外直接投資はどのようなパターンで、どのくらいの規模で行われているのか?どういった国が関わっているのか?を明らかにする

対外直接投資のおもなパターン
対外直接投資の基本的なパターンは変化している
<パターン1>
1960s,そして特に1970s
先進国による対外直接投資が飛躍的に増える
1980s, 1990s
これを上回る規模で国際的な金融への投資が行われるようになる
<パターン2>
一握りの国が投資の多くを独占する傾向が強まってきている
<パターン3>
1980年代にはサービスへの対外直接投資が、製造業や資源抽出産業への対外直接投資を上回る勢いで伸びた

対外直接投資の内訳の変化
1950s(対外直接投資が、資本がどこにありどこに流れていくのかという点で評価されていた時期)
大部分は原料などの一次産品や資源をもとにした製造業に集中
1980s
技術集約的な製造業やサービス産業がターゲット
1990s
サービス産業が全体の半分を占める。
そのうち3分の2が金融と貿易活動の経済活動に注がれていた
1999 4兆1000億ドルにもなる対外直接投資ストックの60%をサービス産業が占める

対外直接投資の定義
「企業の経営管理における発言権の獲得を目的として、投資家が自国以外の国で事業を展開している企業にたいし、永続的な権益を得るために行う投資」
―『国際収支マニュアル』(IMF 1977)より
→「外国人の所有」とする外国人・外国企業による出資金の基準がない
OECDによる指標を用いると、各国のデータが比較できる。
単一の投資家による出資率が10%以下であっても、その投資家が事業にたいして一定の発言力をもっている海外関連企業や、政策決定への参加、経営者の交換など、さまざまな指標を対外直接投資に入れるよう推奨
→対外直接投資であるのか判断しにくい事例でも、どういった場合が「外国人ないし外国企業による所有」なのか明確になる。

議決権をもてるほど株式を所有しなくとも、対外直接投資は成立しうる。
大企業:株式をたくさん保有する必要は必ずしもない。
→株と無関係な契約上の取り決めを通す
株式保有と結びつかない形での支配は、サービス産業にとって海外投資とはなにか理解する上でとくに重要になる。
(海外へのサービス提供は株式保有という形をとらない場合が多い)

株式保有がゼロの場合も対外直接投資としてみなすと、分類上の問題が生じる。
対外直接投資ストック:株式と負債を計る指標
対外直接投資から生じた収益は、株式投資や債権投資の利益として定義
→株式保有がゼロの非金融無形資産から得られる収益とは区別

世界の対外直接投資ストック:年々額は上がってきている
対外直接投資のここ20年間の動きから見えるパターン
1.先進国が発展途上国へ投資する
1970s   対外直接投資は軒並み増加(特に輸出用生産への投資)
それ以降  投資の増加率は減少
1990s以降 先進国への対外直接投資の増加
2.アメリカの地位が急転
~1979 対外直接投資を積極的に行う主要国
1981  対外直接投資を受け取る代表的な国に
(1984,1986 世界中の対外直接投資のうち50%がアメリカに流れる)
3.日本が世界の対外直接投資で果たす役割が増した。
1985には対外直接投資を行う代表的な国に成長していた
資本の輸出国として旧西独、蘭、仏といった欧州資本輸出国を圧倒
1990sはバブル崩壊により大きく落ち込む
⇔1980s,1990sを通して対外直接投資の主要受入国になることはなかった
4.対外直接投資の対象が変わった
1988~1997 第一次産業への投資は半減
サービス産業への投資は先進国・発展途上国ともに増加
製造業への投資に大きな変動はなし
対外直接投資の割合が高いものは金融業、つぎに貿易業
先進国:対外直接投資を最も多く受け入れる経済セクターが金融業と貿易
発展途上国:不動産業と化学産業へ投資される額が最多
5.世界的に見て対外直接投資がかなり集積する傾向にある
1984 全世界の対外直接投資ストック合計の65%が米英日で占められる
1997 発展途上国への対外直接投資は-4%
   先進国   +68%
先進国への投資のほとんどは先進国が行っている。
6.対外直接投資の大半を握っているのが先進国の多国籍企業
1980s初頭 対外直接投資の97%は多国籍企業によるもの
自社の海外関連企業に投資する多国籍企業の数は6万社にまで膨らんでいる。
こうした企業の多くは中小企業
7.国境を越えた企業の吸収合併(M&A)が増えた
現在の対外直接投資のほとんどはM&Aから生じている
大抵の場合は先進国間で行われている
近年、発展途上国でも民営化や規制緩和が進んでいるためアジア・ラテンアメリカの特定の国には対外直接投資が新たに始まっている。

国際的なサービス取引
国際化の進み具合は、企業の売上総額に占める海外売上高を一つの指標として考えられる。
例:米国でのサービス産業は急成長し、国内経済におけるシェアも増加
  しかし、国際的なサービス取引の割合は低い
輸出入ができないサービス(non-tradable)は、生産された場所で販売されなければならないものであることが多い
→国境を越えたサービス提供が対外直接投資という形をとる

サービスの国際取引の計測方法問題
サービスの国際取引と投資額はじっさいよりも少なく算出されている
→投資額の場合、対外直接投資額を出すときに、株式が関係しない取引は計算されない
「国連多国籍企業センター」(現在は廃止):的確なデータ収集
→関連企業の販売と付加価値を計算することと、対外直接投資の算出が一致していることが明らかになった

「関税と貿易に関する一般協定(GATT)のサービスに関する交渉グループ(Group of Negotiations on Services)」
:サービス貿易における原則やルールの基本となる定義上・統計上の問題を重視
「サービス貿易に関する一般協定(GATS)」(1994)
:サービス貿易を4つに分類・定義
1.越境取引(ある加盟国から他の加盟国の需要者へ提供されるサービス)
2.国外での消費(ある加盟国の領土内において、他の加盟国の需要者へ提供されるサービス)
3.商業拠点(ある加盟国のサービス企業によって、他の加盟国にあるビジネス拠点を通して提供されるサービス)
4.人の移動(ある加盟国の個人が他の加盟国へ移動して提供されるサービス)

サービスの国際取引も実際には様々な形がある。
→対外直接投資と越境取引がおもな形
越境取引:唯一「商品貿易」という形をとる取引
サービスの売る側・買う側どちらにしても、人の移動がサービスの国際取引に不可欠であることが多い。
例:旅行
海外の関連企業を介して提供されるのが一般的なものもある
例:ホテル、個人向け銀行サービス、レンタカーなど
ライセンス提供やフランチャイズ契約などの株取引でない形をとるものもある
例:法律や会計などの専門サービスのやり取り
製造業や第一次産業に分類される多国籍企業でも、関連会社がサービス関係というパターンは多い

「海外へ提供されているサービス」の判断基準
1.サービスを提供する外国に生産者側が滞在する場合でも、一定の期間内であるか
2.多国籍企業が海外支社をつくる時、支社に必要な「資源」を送るが、そのなかに管理者や従業員の派遣が含まれていないかどうか
3.提供されるサービスの性質がどうなっているか
4.ルートがどうなっているのか

まとめ
国際的な取引に関わる地域の地理学と取引の内容は根本的に変化している。
米国が対外直接投資の主要受入国になった
日本は対外直接投資の純輸出国として台頭してきた
対外直接投資の内訳における変化
サービス・セクターへの投資が急激に重要性を帯びてきた。
サービスをめぐる国際的な経済活動のうち、70%もの活動がほんの一握りの国によって行われていた。
とくに、日本・アメリカ・イギリスへの集積が目立つ

本書の問題関心において興味深い点
1.サービスの国際化の中心にいるのは多国籍企業
2.専門職サービスを提供するおもな企業では、海外売上による収益が総収益の相当な部分を占める

こうした対外直接投資のパターンを通して、国際投資の再編が見えてくる。
1970s さまざまな地域への対外直接投資増加は、生産の国際化にとって重要
1980s,1990s 金融のフローが一気に増加
集積の度合いも1970sを上回る
→「集積構造」の再編も読み取れる。(次章)

【論点】
近年では、発展途上国への対外直接投資も伸びてきている。
発展途上国の中でも、対外直接投資の伸びている国/まだ伸びていない国があると考えられる。
今後発展途上国が対外直接投資を伸ばすためには、どういった要因の関わりあいが必要だと考えられるだろうか。


〈日本人グループ〉
発展途上国が対外直接投資(FDI)を伸ばすための要因について考察するために日本人グループでは、発展途上国が先進国からの援助などを契機として自国の経済力を底上げし、それによって対外直接投資を実際に行えるようになる、という時間軸を想定しそれに沿って議論を行った。
まず、第一段階の前提となる部分で、先進国から援助を受け、資本投下を引き出すための準備段階では、発展途上国がなぜ対外直接投資を志向するようになるかについて議論した。そこでは、やはり発展途上国には先進国に対する憧憬が存在し、先進国を追いかけて最終的には対外直接投資を他国から受け取り、かつ他国に対し行うというような、対等な関係になりたいという思いがあるのではないかという意見でまとまった。
次に、第一段階は発展途上国が対外直接投資を行えるようになるまで、先進国からの援助に牽引される段階とした。この段階は何よりもまず自国の資本および経済力を底上げすることが重視されるという意見で一致した。そのためには製造業の発達と、製造業に関する技術的な教育や人材育成が必要であると考えた。
この第一段階を経て、安価に大量の製品を製造できるなどという点で、発展途上国の国際的な認知度が高まり、さらに先進国からの資本投下を獲得することで生産力が向上し、次の第二段階へと至るとした。
第二段階は、経済力を高めるとともに、対外直接投資を始めるにあたって具体的な取り組みが行われる段階であるとした。この第二段階にあたる意見が最も多く散見された。経済力については、GDPを高めるための具体的な政策が行われ、そのような中で経済力が引き上げられていくと共に、軍事力も拡張されることが考えられた。一方、対外直接投資を開始するために重要な点は自国の「グローバル化」であるという意見で一致した。グローバル化のためには、他文化への理解を深め、自国での意識変化を行うための教育が必要であるし、国どうしを繋ぐ役割を果たす人材養成のために、留学などの形で人材派遣が行われるとした。政治的経済的な政策としては、企業の民営化や規制緩和など新自由主義的な政策に移行していくことが考えられた。ハード面の取り組みとしては、インターネット環境の整備、モビリティ環境の充実といった意見が挙げられた。
最後に、第三段階は実際に対外直接投資が開始される段階であるとした。この段階では投資を行うことがステータスとなり、投資を行うための資本力も備わって経済的余裕が生まれると考えた。それによって、発展途上国からも多国籍企業が展開されていくことになるのではないか、という結論に至った。

【補足】
発展途上国が対外直接投資を行うための要因について考察する前に、現在発展途上国とはいったいどのような国を指すのか、どういった指標を用いて分類するのか、例えばシンガポールやタイ、韓国、中国などの国は、先進国と発展途上国のどちらに分類されるのか、といった議論を全員で考え、共有する必要があったのではないかと考える。また、今回考察した発展途上国が行う対外直接投資は、先進国が現在行っているような金融業や貿易業を主としたものと同じような内容になるのか、それとも現在発展途上国で割合の高い不動産業と化学産業への投資が加速されるのか、などといった具体的な議論にまで及ぶことができなかった。総合司会の方のコメントにあるように、発展途上国について考える場合でも、実際は先進国的な観点からの考察に終始してしまっているように思われる。今回のグループ発表で示したような図式はあまりに夢想的で楽観的に過ぎるかもしれないが、それをどうすれば実際生じている問題に引きつけていけるようになるのかを考察していくことが今後の重要な課題であると考える。

<中国出身の留学生グループ>
論点について、中国出身の留学生グループが自分の母国を発展途上国のモデルとして想定して、発展途上国が対外直接投資を伸ばすため考える要因を挙げていて、「競うこと」より「つながること」はさらに重要だと議論した。
まずはハード面の要因について、FDIを伸ばすために資本、インフラ、商品の品質の重視が必要と挙げられていた。そしてソフト面に関しては、主に技術、人材、政策、相手の国の文化の四つの方面から論議した。生産力を推進するために、技術の革新とサービス意識の向上に十分な考慮が必要である。グロバール化の背景で、さらに多様な人材が求められている。外国語の人材だけではなく、国境を越える専門技術者、法律の人材、流通の人材などは対外投資を伸ばすため無くてはならない条件である。政策面に関しては、やはり整える金融体制、政治環境が必要と思われる。相手国の文化を互いに理解することが対外投資の環境づくりには有利だと考える。それ以外に、先進国の支援も対外投資を伸ばすため考える要因の一つと挙げられ、資本面と技術面があり、ソフト面とハード面の両方も含めていると思われる。
対外直接投資を伸ばすと考える時に、「技術の革新」、「人材の育成」などは一見的に「競う」ために挙げられていたが、グロバール化の市場の中に「つながる」意味も持っていて、「競うこと」より「つながること」はさらに重要だと思われる。




≪総合司会コメント≫
今回の議論は、日本人チームと中国人チームに分けたが、この2つのチームに共通していたのは『過去5年間で名目GDPが世界5位に入っている』ことである。つまり、日本も中国も先進国に当てはまると仮定すると、今回の議論は、あくまで先進国の国民から見たものに過ぎない。中国は名目GDPで世界第2位になるまで、外国の大企業の製品に関わる工場において大量生産を行うことで国力を増強していたが、名目GDPが世界第2位になった今、技術も経済も先進国のトップに躍り出る程発達している。即ち、中国を最早発展途上国と定義するのは困難であると考える。日本人チームと中国人チームは、先進国チームと発展途上国のチームではなかったのである。よって、発展途上国が対外直接投資を伸ばすにはどのような要因が必要になるかについて議論したが、発展途上国が抱える問題や不安要素について考慮しきれていなかったと考える。両チーム共に「投資を伸ばす過程で先進国の援助も必要である」、「多方面における人材の育成が必要」と述べていたが、そもそも先進国の援助を受けたとしてもそれを活用できる土壌はあるのか、といった検討が見受けられなかったのは、発展途上国の人々の視点がなかったからの様に思えた。
2015-05-22 17:00 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :
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