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グローバル・シティ 第10章―新しい都市のレジーム―及びエピローグ

第10章新しい都市のレジーム―

グローバル経済は都市にどのような影響を及ぼすのか。


■国際的なビジネスや金融の中心になっている都市-ニューヨーク・ロンドン・東京-が,経済活動のグローバル化に応じて変わっていった過程。
⇒グローバル化の進展に伴い,経済を支配する力が特定の都市にのみ集積されたため,グローバルなネットワークを管理し,支配する基本的な役割も大都市に任せられた。

■金融と企業者サービスが異常なまでの速さで成長したことと,こうした成長が起きた場所が大都市に限られた理由?
・生産拠点が地理的に分散し海外でも生産が行われるようになると,この空間経済を管理したり規制をかけるための結節点の役割を金融・企業者サービスが担うようになり,特定の場所に集中するようになった。
・1980年以降経済的な重要性を喪失し,分散した生産拠点を一カ所で管理し,支配するために成長したのが,金融や高度専門サービスの中心地であった。
・大都市において,トップレベルでの管理,調整の役割が増加し,金融取引の拡大とかなりの額に上る海外直接投資が特定の地域に再び集積し,大都市で国際的な不動産市場が形成されたことで,高度な管理機能とサービス機能を備えた経済の中心が作られていった。

【第一部及び第二部】
1グローバルな管理・支配が実際に担っているのはどのような仕事なのか。
2大都市で生み出されている仕事は正確に言うとどのようなものであるか。
3経済がグローバル化したことで都市階層は変化したか。
⇒「生産」に着目して考察

■金融・生産者サービスの急成長,製造業の衰退
・大都市では産業複合体が形成され,それらの複合体の中でも,中心的な存在として伸びているのが,国際取引を手掛ける企業へのサービス提供に関連したセクターである。
・サービス関連セクターは1980年代以後商品セクターの様相を呈するようになり,この商品セクターに似たサービス・セクターにとって重要な市場として現れてきたのが,ニューヨーク・ロンドン・東京であった。
・三都市への生産者サービスと金融の集積が生じたが,それを単なるサービス産業の成長とみなすのではなく,経済の構造と組織のされ方が全体的に変化してきていることを理解する必要がある。
・生産者サービスに携わる企業が増加したことで,サービスの需要が高まり,サービスは社内で調達されるよりも,市場で購入されるようになるというような傾向は他の大都市でも出てきているが,地域レベルでの話にとどまっている。
・過去20年に及んだ経済再編はさまざまな点で複雑化した組織の需要に応えるサービス・セクターが増えたことと根っこのところでつながっている。こうして生産者サービスが伸びたからこそ,経済がサービス中心になった。
・以前は国民経済を牽引し,層の厚い中産階級の形成・拡大に貢献していた製造業の衰退の上に,新しい成長は成り立っていた。
・新しい成長の多くが,国民国家の弱体化のうえに成り立っている。

■三都市のトランスナショナルな関係
・グローバルな情報通信の時代にあってもなお,離れた場所に位置することが多い多様な企業・ブローカー・個人をつなぐ役割を各都市が果たしており,三都市もトランスナショナルな一つの市場として機能している。
・三都市は競争関係にあるわけではなく,資本の輸出(東京),処理(ロンドン),投下(ニューヨーク)のように,三都市が別々の役割を担うことで一つの役割を果たしている。
※日本が資本の輸出という役割を果たしていたのは昔のことであり,現在ではその役割は失われている。

■二極化
・社会構造の変化は,社会経済の二極化をもたらした。
・商品やサービスを生み出し,提供する企業においては競り落とす力で差が開いてきており,このことによって生産する側の企業にとり,グローバル・シティはますます生きにくい場所となってきている。
・生産コストを減らすための努力-下請け,低賃金・劣悪な環境での非登録移民の雇用など-が行われ,中心的なセクターで低賃金労働者が増えており,彼らにとってもグローバル・シティは住みにくい場所となっている。

■都市の空間編成の変化
・情報通信技術の発達を背景に,経済活動が空間的に分散されてきた一方で,この分散を可能にするために,中心に集められた諸機能は強化されてきた。(地理的分散/集積)
・グローバル・シティに集積したのは,分散した経済活動を管理するための諸機能だけでなく,イノベーションが生み出される場所もグローバル・シティに集まるようになった。
・情報通信技術が発達したが,未だに都市中心にある軸とのつながりは意味を有していることから,情報通信技術の影響はごくごく限られており,経済を構成しているものの多くがデジタル化されず,現在でも物理的な側面をもっている。

【第三部】
新しい産業複合体による経済活動のグローバル化が,都市の経済構造や社会構造に与える影響について。
■フォーディズム期
・フォーディズムの経済を支えていたのは主に,大量の消費者をターゲットとした住宅・道路・自動車・家具・家電の大量供給,大量販売であった。
・大量消費・大量生産に基づく製造業の発展と共に層の厚い中産階級が形成された。
・公共サービスのカバーする範囲が格段に広がった-公衆衛生システムの発展,公営住宅の建設。
・インナーシティ問題-郊外化の結果,三都市の昔ながらの中心地域に貧困層や弱者が取り残されていくようになった。
・制度的枠組みは維持され,労働組織率は上がり,労働者のエンパワーメントが進んだ。
・正規雇用で働く労働者の割合が最高水準に達し,賃金も上昇した。

■ポスト・フォーディズム期
・主導経済セクターはサービス・セクターへと移り,産業複合体において成長が起きている。
・中産階級が増えることはなく,所得格差が開き,企業の競争力や世帯の購買力でも差がついてきている。
⇒経済の二極化
・個人より,企業や政府による国際市場への輸出や中間消費といった,組織による消費のほうが重要になってきている。
⇒グローバル・マーケットが社会・経済を形成
・家族賃金が衰退し,男性がフルタイムで雇用されることが当然ではなくなった。
・パート,有期雇用市場の拡大。
・日雇い労働者やマイノリティ集団に属する労働者,移民労働者の増加。
・年功序列・終身雇用制度の崩壊。
・低賃金労働,スウェットショップ,家庭内産業労働の増加。

■新しいタイプの高所得層の出現,消費構造の変化
・ただひとつ,新しい産業複合体の恩恵を受けている階級が,新しいタイプの専門職・経営者・ブローカーであり,この数は三都市において劇的に増加した。
・彼らには消費力があるだけでなく,何を消費するのか選択肢が用意されており,高所得層向けのジェントリフィケーションとそこから生じる派手な消費が,イデオロギーとして働いている。
・投資額が低すぎず,高すぎもしない中間投資(株・美術品・骨董品・奢侈品)が恰好の投資ターゲットとなっている。→美術品市場の成長,奢侈品への消費の増加。
・十分な収入とコスモポリタン的な企業風土が合わさることで,新しいライフスタイルや新しいタイプの経済活動が営まれる魅力的な空間が出来上がった。

■ジェントリフィケーション
・日々の生活における芸術の重要性が高まってきている。(exうらぶれた倉庫を価値あるものに)

・現在の経済活動において,芸術家という職業が,不動産開発から奢侈品の消費に至るまで,潜在的なビジネスチャンスを実現し,利益を生むための装置になってきている。
・一方でニューヨークやロンドンでは,一昔前まで,入り口が固く閉じられたままの店舗や打ち捨てられたビルばかりだった場所が,今では商業地区や住宅地として栄え,コミュニティ一帯の環境が改善された。
⇒移民流のジェントリフィケーション

世界経済で指令を発する場,金融と高度な企業者サービスのイノベーションが生まれる場,そして資本にとって重要な市場というように,都市はさまざまな役割を担うようになり,その役割を果たすために,特定の諸都市が協力し合っている。そしてこうした諸都市は,金融と製造のグローバル化によって新しい形の集積が進む中で,戦略的な役割を果たしている。
また金融が牽引する経済成長から集積が起きた結果,さまざまな側面で新しい秩序が生まれてきている。大量生産が主流の時代には,公共財の供給と福祉国家が重要な意味を持ったが,新しい規範においてはその重要性は失われている。消費の規範は,直接的には金融や生産者サービス,これらが必要とする多様な産業サービスにおける労働を通じて,間接的には社会的生産の領域において,社会構造を目に見える形で変えている。

➡経済成長を決める新しい産業複合体と,産業複合体を構成し,再生産している社会政治的な形が両方そろう場が大都市であり,両方そろっているというところに,グローバル・シティの基本的な特徴がある。

―エピローグ―
■6つの論点
1グローバル・シティ論の枠組み
2金融に関する問題
3生産者サービス
4諸都市の関係
5グローバル・シティにおける不平等
6グローバル・シティでは都市空間の秩序が一新されたかどうか

Ⅰ.グローバル・シティ論
(ⅰ)グローバル化と均質化
■グローバル・シティ
・グローバル化は国家の外で生じているといった単純な現象ではなく,資本の流れを調節・管理し,そこで必要とされるサービスを提供する働き,そして多国籍企業や国際的な市場の多角的な経済活動に必要なサービスを提供する働きである。
・グローバル・シティでグローバル化を進めているのは,国の組織や国内企業などナショナルなアクターであり,グローバル・シティとはグローバル経済の鍵となるダイナミクスや条件が植えつけられたローカルな場ということになる。
・グローバル・シティは単独では存在せず,それぞれがグローバル市場やグローバル企業のうち,きまった市場・企業へのサービス提供に特化する傾向にあり,国境を越えて戦略的な場を結びつける役割を担っている。
・グローバル・シティたりえるかどうかは,国による規制緩和や公的セクターの民営化,国内企業・外資系企業と市場が都市をどのくらい経済活動の基盤にしているかで決まる。

■グローバル・シティの均質化?
・グローバル・シティの諸機能が世界中の様々な都市で発展しているということは,都市間の差がある意味なくなってきているとも言い得るが,発展中のグローバル・シティの諸機能はかなり専門的であるし,これに関わる機関も多様であり,この場合の「差の消滅」は,消費者市場やグローバル娯楽産業にみられる均質化や収斂とは大きく異なっている。
・グローバルな視座からみれば,あるシステムやダイナミズムやその具体的な形が複数の国にまたがっていることがわかり,諸都市が画一化していると捉えることにはならない。
・グローバル・シティにおける差の消滅とは,都市の均一化のことではなく,専門特化した諸機能が都市で発展したり,部分的に取り込まれるなかで,諸機能が大都市にもたらすであろう影響が似てきているということである。

(ⅱ)先行研究とグローバル・シティ論の違い
◇フリードマンとゲッツの枠組みとの違い
グローバルな支配能力の生産に着目することで,情報化経済の中にあっても,物理的な条件や生産が行われる場,そして特定の経済活動が決まった場所でしか行われないという「拘束性」が存在し,場所の必要性を明らかにした。
◇カステルとの違い
グローバル・シティをネットワークとして捉えるだけでなく,場(プレイス)としても認識し,ネットワークが特定の場に深く根付いていることを明らかにした。つまり,ネットワークやフローだけでなく,グローバル化の概念に場所性(プレイスネス)を導入することを重要視した。
◇「グローバル都市―地域(リージョン)」という概念
グローバル化を考えるうえで都市と地域を分けて考えること。
◇グローバル・シティと都市全般を概念上区別すること
グローバル・シティで生じている経済的グローバル化のダイナミクスや条件が都市内部で生じることは,都市全域で進んでいるわけではない。
◇グローバル・シティの諸機能という概念
グローバル経済の管理やグローバル経済に必要なサービスの提供という点で,専門性がかなり高い機能をもつ都市を見分けるため。
◇国際都市とグローバル・シティの区別
精緻な分析をするためにフィレンツェやヴェニスなどの国際都市とグローバル・シティを区別する。

(ⅲ)グローバル・シティとグローバル都市―地域
◇グローバル・シティ
・格差や権力といった問題を扱うことに適している。
・境界線がはっきりした入れ物としての都市ではなく,中心で起きているダイナミクスに焦点を当てることができ,そのダイナミクスが制度的・空間的にどれくらい広がり浸透しているかについても重視できる。
・競争よりも,越境的なネットワークや分業を強化するグローバル・シティの主導産業を重視。
・経済以外の領域―政治・文化・社会・犯罪など―で生じている越境的なネットワークの利用を把握できる。
◇グローバル都市―地域
・グローバル化を好意的に解釈できる。
・経済的な利益をより均等に配分するにはどうしたらいいか考えることに適している。
・広い領域を見渡すことで,都市への一極集中ではない,より分散した形での成長の可能性が見いだせる。
・競争と競争力を重視。

(ⅳ)帝国主義の中心都市とグローバル・シティ
国民国家と国家間システムによって経済が統治されるようになった歴史的段階を経て,グローバルな経済システムが作られたことを,理論的かつ実証的に明らかにする必要がある。

(ⅴ)識別と測定
グローバル・シティにしかない変数を見分け,測定する際に,従来の概念やデータ,調査技術では,閉鎖性に基づいた規模の概念が使われていたため,問題があいまいになっている。調査対象を一定の範囲内に限定すると,グローバル・シティの特徴である越境的なネットワークなど特定の場所を越えて広がるものを測定できない。

Ⅱ.金融秩序
金融市場や個々の金融機関よりも,金融センターに力点を置き,都市間の関係を競争よりむしろ分業として理解することが重要である。

(ⅰ)金融センターvs.金融機関・金融市場
・金融センターという物理的な「場」の重要性を考慮することで,多様な状況や様々な資本の投入を明らかにできる。
・金融機関や金融市場が最近のデジタル技術から得られる利益を最大化するためには,複雑な組織が重要になってくるが,経済的なつながりの規模は,非・電子空間でのほうがさらに広く,金融機関や金融業が完全にデジタル化されることはない。
・多様な金融センターがネットワーク化されることで,最大限の利益が得られるようになっている。
・ある産業が空間的に集積し,そこで大きな成長が生まれるという規模の経済が,金融センターのダイナミズムにも当てはまる。

(ⅱ)競争vs.分業
・金融センター同士の競争ではなく,金融センターによる役割分担に着目することで,新たな産業の空間構成が見えてくる。
・金融センターを結ぶ国境を越えるネットワークに着目すれば,各センター同士は互いに統合されたシステムとして働いていることが明らかになってくる。
→金融センターは複雑なネットワークにおける欠かせない場として重要な戦略的役割を負っている。

(ⅲ)グローバル企業と国家
グローバル時代の国家の役割についてはまだ満足に考察しきれていない。

(ⅳ)金融業の本質
金融業ではグローバル化によりサービス提供以外の特色が強まってきており,1980,90年代のイノベーションの導入により「実物」経済にサービスを提供する役割から切り離されていった。

Ⅲ.生産者サービス
◇生産者サービスの細分化
・生産者サービスを指標として使う場合には,それを細分化したうえで分析しなければならない。
◇生産者サービスとグローバル・シティの関係
・グローバル・シティより小さい都市で生産者サービスが成長しているからと言って,グローバル・シティがより手ごろな地域へ移っていると説明するのは短絡的であり,小都市で生産者サービスの成長率が高いのは,これに対する需要があらゆるセクターの企業で増えたからに過ぎない。
→生産者サービスのなかでも,グローバル企業やグローバル市場の需要に応えるものは非常に複雑な仕組みを持っているため,これを小都市が担うことは難しい。
・フォーディズム的/ケインズ主義的な時代に生産の場という都市の役割は失われていったが,現在サービスを生み出す経済活動が都市で活発になってきていることから,都市が今一度「生産」の場として浮上してきている。
→金融業とサービスが盛んになるにつれ都市は新しいタイプの生産の役割を担うようになった。
◇国内向けの仕事とグローバル向けの仕事を対置させているという誤解
・国際的な職業が都市にあつまっていたとしても,その都市をグローバル・シティとみなすことはできず,グローバル・シティの基準を満たすためには,グローバル企業やグローバル市場の需要に応じられる専門サービスや専門職がかたまって存在する必要がある。
→グローバル・シティ論の重要なポイント:グローバル企業やグローバル市場が調整されているのか,専門サービスが提供されているのかどうか。
・グローバル・シティの諸機能は多種多様な職業によって支えられているにもかかわらず,国内向けの職業のように,そう認識されていないものもある。
◇生産者サービスの製造業における関わり
・生産者サービスの成長に製造業は欠かせないが,生産者サービスと製造業の立地は必ずしも同じ地域である必要はない。
・生産者サービスは企業の一部であるため,製造するところをどこにするかは,さほど重要ではない。

Ⅳ.社会と空間の二極化
◇二極化≠中産階級の消失
グローバル化にはフォーディズムのように中産階級を増やす効果がなかったどころか,トップレベルの専門職の価値を高める追い風になった。
中産階級は全く消えておらず,ただ成長のダイナミクスの基本的な方向性が中産階級を増やす方向には向かっていないということ。
◇グローバル・シティにおいて貧困が生じる原因
・高給職と低賃金労働が増加している背景には,近年成長しているグローバル・シティの諸機能を担う経済セクターがある。
◇グローバル化の影響力
・様々な市場とそれが都市の社会的・空間的特徴に及ぼす影響を丁寧に検証することで,すべてではないにせよ,グローバル化の影響力を分析できる。
・都市の全体的な職業や経済セクターの構造,犯罪や退廃・貧困・社会的排除などの問題,二極化などの傾向は決してグローバル・シティの指標ではない。

【論点】
p387「ナショナルなアクターがグローバル化を引き起こすダイナミクスを,筆者は国民国家の始まりとして認識している。…グローバル・シティでグローバル化を進めているのは,国の組織や国内企業などナショナルなアクターである」
p392「グローバル化に場所性がある,つまり特定の場所に縛られているということは,国民国家や国土など「ナショナル」な構造にグローバル化が埋め込まれているということである」

と本文にあるように,グローバリゼーションと国家の関係性が指摘されているが,グローバル化によって国家の役割はどのように変化したのだろうか。また,その変化によって社会・経済的にはどのような影響があっただろうか。
2015-08-08 16:10 : 『グローバル・シティ(サッセン)』(15年度前期大学院ゼミ) : コメント : 0 :
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